「美術様式論」読書会:「リーグル美術様式論―装飾史の基本問題」 Stilfragen, Wien 1893 (長広敏雄訳 岩崎美術社、1970)

文様の結合法

唐草とは何であるか…
唐草とは美の線である、というのがリーグルの答えであったが、ここにきて、ロータス文様の、並列ではない、発展的結合方法を二つ明確にしてくれている。
それは、 ロータスを主役として,弧線で結ぶ方法と、
わき役として、渦文で結ぶ方法であった・・。2010-08-11


弧線で結び付ける

図22
第22図 ロータス花と蕾とをもつ帯状フリーズ
ギリシア以前の様式が創造しえた
最も美しい(花文様の)結合法
」(by Riegel)

「美術様式論」P95


図21
第21図  パルメットと側面系ロータス
花文とを交互に配置した縁飾り

第21図は 単純な、結帯のない並列 (帯状文様)
第22図の縁飾り(エジプト新王国)は
ロータス花が、ある時はロータス蕾、ある時はロータス側面形のパルメット扇の変種と結びついている。
三つの文様は、円と弧線の茎によって結ばれている
一つのもの(花)が常に反復し続けつつ、一種のリズミカルなグループを作りだす、 植物文様を持った弧状フリーズ(一方向的)
(地間充填のロゼットおよび小なる雨滴形蕾は省略されている)

ロータス文様を結合する二三の仕方について吟味
「古エジプト人は伝習的要素を用いて、多種多様にゆたかに構成することを心得ていた 」
me伝習というのは、教えられたことを学ぶことというより、「伝統や習慣」のことですね・・

24図
第24図  ロータス花と蕾とを
唐草風に結合した装飾(オーナメント)


第24図の並列的花文様の美しい結合(エジプト新王国)
円形に巻きながら、それが切線と結びつくごとき蔓草を示し、この切線の蔓草からロータス花と蕾が枝分かれしている
個々の円はロゼットで満たされている
切線による連鎖の方法という点で、初期ギリシア美術、ことにディビュロン 様式の同様な構成を思い出させる
(そちらは単に幾何学文様のみ)
曲線的な茎の線とロータス花(側面形)との合一・・
しばしば蔓絡み文様に見るが、 それは上エジプトと下エジプト領王国を象徴する、 装飾的でなく対象的なもの
(それに対して) 24図は並列的なロータス花を弧線によって結合した純装飾的創意である

「美術様式論」P97

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もう一つ別の平面装飾法がある
植物文様が従属的な、偶然的な役割をとり、連結の要素が主要な、
デザイン構成の主役となる

すなわち渦紋が基本となる平面的装飾

渦文による連絡のあるデザイン

図25
第25図 ロータス花文を地間充填した渦文装飾(by Riegel)

中心点はロゼット
(文様を施す面が小さいときは、
単なる輪=「眼」が描かれる)
渦文によって全平面が連絡ある装飾となる

「美術様式論」P98


隣り合った渦線文様間に生ずる地間を充填する

図26
第26図渦紋にロータスを地間充填した内部装飾

図27
第27図 渦紋にロータスを地間充填し、ウシ首文を加えた内部装飾

「美術様式論」P99-101


グッドイーヤは渦文を独立的な文様とせず、 ただロータスの属性と考えた。
渦巻形萼(ヴォールト)をもつロータス花の渦巻形(スピラーレ)をただちに渦文とみた。
しかし、原始美術様式での渦文要素には、純幾何学的性質が内在する。 また、地間充填の法則は極めて重要かつ標準的⇒ 渦文は、ジグザグ、同心円、碁盤縞などの文様と同じく、古くから伝習された装飾美術の幾何学的モチーフ(文様)として見るべき。 ⇒マオリの渦文

エジプト様式の結び

古代エジプト美術は、明らかな植物的要素を純装飾形式の取り入れた最初の美術であった。 永遠の価値ある装飾的類型を創造した。
縁飾り装飾((ボルドユーレ)の才能が欠けていた
古代エジプト人の美術はその本質において対象的なもの(美の純粋な喜びと直接に共通しえない諸感覚、書情緒、諸観念の表現)であった。
エジプト人こそは、 目の楽しみを目的とする装飾欲、人間の意味深い思想、感覚に造形表現を与えようとする、両極端間に身を置いた最初の民族であった。

「美術様式論」P111


なるほど・・・
以上、リーグルによる古代エジプトの魅力のまとめであった・・
エジプト人の功績とは、植物文様の創作であり、ギリシア人の功績は、リズミカルに動く植物性唐草模様・・
リーグルの真の関心は、「もっとも完全な形式美」、ギリシア装飾法なのである。・・・
(「B.ギリシア美術における植物文様」は 「A.古代オリエント様式」の2倍以上の分量である・・・)

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『美術様式論』を読む A.オリエント様式
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