「美術様式論」読書会: 「リーグル美術様式論―装飾史の基本問題」 Stilfragen, Wien 1893 (長広敏雄訳 岩崎美術社、1970)
植物モチーフを交互に順と逆に並べる

連続波状唐草の発見

エジプト人の試み

飾縁モチーフの順逆法

22図 ロータス花と蕾とをもつ帯状フリーズ
22図 ロータス花と蕾とをもつ帯状フリーズ
23図 パルメットと側面系ロータス花との交互対置をなす内部装飾
23図 パルメットと側面系ロータス花との交互対置をなす内部装飾
エジプト人:円弧フリーズ(22図)(23図)で、飾縁デザインの順逆法を発揮

「ミケネ」美術家:連続波上唐草の発見で、円弧フリーズの「片側ならび」(22図)をやぶり、 二重の順と逆の円弧フリーズの硬さ(23図)をやぶった
モチーフは連続唐草の結合線の上下に交互に並べられた
装飾史上画期的と呼ぶべき功績

「美術様式論」P147


波状唐草文様の第2の変種

52図
第52図 ミケネ第6墳発見陶壺文様
波状唐草文様の第2の変種=S字型(間断的)波状唐草
このモチーフが採用された後期ギリシア美術および一般広大美術に採用された典型的な例は
53図
第53図 メロス陶壺の彩描の間断的唐草文様
(Conze Melische Thoungefãsse)

「美術様式論」P148


52図と53図とで唐草線のデザインの違いは
52図:唐草のS字型は山及び谷の点でモチーフに接触しない
しかし、53図と同じく波状線を基本とする
S字型カーブとカーブのつなぎ目が、波型の振幅の中間点にあることが違っている。
(53図)メロス陶器美術は、決定的なオリエントからの影響の新たな拘束下にある。 (かたくるしいオリエント形式の侵入)

「美術様式論」P148


52図
ミケネ遺品:波状唐草に見る常春藤の葉
自由な線
流暢で魅力的
このデザインがそんな古代にさかのぼるとは驚異
ミケネ美術の「常春藤の葉」はエジプト的なものを含まない処理を示している


のちのギリシア美術では、常春藤の葉は、くねった唐草と不分離の形をとる
グッドイーヤ・・「常春藤の葉」は、異国の美術品から花文様形式としてミケネ美術家が採用した

ミケネ美術において、自由に動く植物性唐草が初めて装飾目的に応用された

「美術様式論」P149


ミケネ美術は、古代美術史上オンギリシア美術に独特な、二種の植物唐草をうんだ揺籃
連続波状唐草及びS字型(間断的)唐草の揺籃
唐草がはじめ提唱されて時代および民族の果たした画期的な意義
自由に動く植物性唐草モチーフはギリシア美術精神の明瞭なあらわれ
ギリシア美術精神が古代エジプトの花モチーフを 美しく改造したように、モチーフを結合するもっとも完全な方法を創始した
ミケネ 美術は歴史時代ギリシア美術の直接的先駆者
(デビュロンやその間に介在する美術は、この発展路線を一時不明瞭化し、阻害したもの)

「美術様式論」P151


プフシュタインPuchateinがアトリード宝庫の列柱に、真のドリア列柱プロトタイプを見たとするならば、
我々はミケネ陶壺や金細工物の装飾に、真のギリシア装飾のプロトタイプを見るといってよい
グッドイーヤはミケネ美術における連続波状唐草の出現を見落とした
しかしS字型唐草は見落とさなかった
グッドイーヤの考えによれば「ミケネ人」とはカリヤ人の傭兵で、エジプトのコピーを行った
ベーラウJ.Böhlauは ミケネ美術における連続波状唐草の出現に注目した唯一の人

「美術様式論」P151


「ミケネ」人は通用の渦巻き型花文様を、コピーしたのでなく自由にうつした。
形式美(あるいは象徴的意味?)によって採取した文様を、現実に、まことの植物性質に近付けたいという写実的傾向が存在した

「美術様式論」P152


純三つ葉文様

54図
第54図 打出し黄金板(ミケネ式)
純三つ葉文様(羽毛式三葉)
三つ葉の上に一対の向き合った木棲ネコ
個々の葉には植物の中央葉脈及び即葉脈の様式化を示している
エジプトのロータス三つ葉文様とは違う

「美術様式論」P154


第55図 オルコメノス発見の彫刻装飾
Schliemann Orchomenos Taf..2
http://www.deutschestextarchiv.de/book/view/
Wikipedia:Orchomenus(ボイオティア)

第56図 エジプト式彩描装飾

Schéma d'une frise murale du palais de Tirynthe
Frise murale du palais de Tirynthe. Planche V de l'ouvrage dirigé par Heinrich Schliemann, "Tirynthe. Le palais préhistorique des rois de Tirynthe. Résultats des dernières fouilles", Paris, C. Reinwald libraire-éditeur, 1885.
第57図 チリンス発見壁面彩描装飾:羽毛式ロータス側面系葉文様
シェリーマンTiryns ティリンスはペロポネソス半島にあるミケーネ文明(紀元前17世紀後半~前12世紀ごろ)の城壁を持つ宮殿遺跡で、ミケーネとともに世界遺産。古代ギリシャの詩人ホメロスに「城壁高きティリンス」と称された。

基本計はオルコメノスと同じ
充填用ロータスを伴った渦文である。 縁にロゼット、オルコメノスと同じく、最外部には鋸歯状を持った短棒がある。
興味深いのは充填用ロータスの葉:三つの尖葉に並行斜線(葉脈);エジプトにはない写実的特徴
ただし、パルメット扇形についてはここの放射状の葉を描かず
最も内側の隅に、三葉の小萼片を加えている;エジプト様式


meこのあたり、1ミケネ様式ー唐草文様の発生ー、2 ディピュロン様式に続きます(再開都合により一部重複))

△ PageTop

『美術様式論』を読む
~以下「ギリシア美術における植物文様」へ~
目次目次読書

唐草図鑑ロゴ

アカンサス ツタ ロータス ブドウ ボタン ナツメヤシ
唐草図鑑
唐草目次
文様の根源
聖樹聖獣文様
文献
用語
MAIL
サイトマップ