植物文様の創作

「美術様式論」読書会:「リーグル美術様式論―装飾史の基本問題」 Stilfragen, Wien 1893 (長広敏雄訳 岩崎美術社、1970)

古代オリエント様式

エジプト様式-植物文様の創作

me古代オリエント様式として、まず、ここでエジプト様式を見ようとしている。 メソポタミア様式、フェニキア様式、ペルシア様式と続くのだが、古代エジプト人こそが、植物文様の創作者・・・・・

ロータスとパピルスの文化的意味

二つの植物が、全てのエジプト文化と不離なるものとして考えられる
ロータス(蓮)とパピルス(紙草)である

リーグル「美術様式論」のp75から79ページを読む・・抜き書きノート・


パピルス@この花咲くや館


二つの様式化した花形

美術的遺物では、最古のものと考えられる二つの様式化した花形
側面形のロータス花(第8図は「いわゆるパルメット」)
この両植物の文化的意義はヘロドトスの記述が貴重な根拠になっている


第7図 側面形のロータス花
第7図
側面形のロータス花
(推定ロータス)
はっきりと三角形の花弁を持った図様
第8図 側面形のロータス花
第8図
側面形のロータス花(いわゆるパルメット)
(いわゆるパピルス)
(推定パピルス)
釣り鐘型をあらわし花弁がない

P.76 ロータスおよびパピルスの側面形をこのように決めた のには、象徴観念が大切な役割を果たしていた。
・沼沢と蘆の多い三角州・・パピルスの象徴
・乾燥せる上部エジプト・・ロータスの象徴

パピルスのページ


古王国美術では、この両種の側面形がかなり厳密に区別されていた
新王国美術では、両種間の厳密な差別はもはや無かった


P.76 古代エジプト美術史家 ペロG.Perrot
釣り鐘型で三弁のロータス萼をつけたパピルス側面形を発見・・「水草」とよぶ


これについての解釈の案・・
「新王国美術では、伝承の象徴を装飾文様化しようとする傾向があり、これがロータス型とパピルス型とを混合させた
これは、新王国エジプト人の宗教観において両象徴が混合したことを前提としなければならないが、 その象徴的概念の変換についての証明は認めえない(この解釈の不満足な点)


アメリカの研究家グッドイーヤW.G.Goodyearの解決・・P.77
釣鐘型図様をパピルスとする考えが誤り
その証明・・象形文字において釣鐘型を冠付けたものを、必ずしもパピルスと解釈すべきでない
下エジプトのパピルス地方に関係を持つその冠付けは、単にパピルスにあてはまるのみでなく、 三角形花弁側面を持ついわゆるロータスにもあてはまる。
同じ花を象徴化した両種のタイプ間に存する相互関係が明らかになった


グッドイーヤW.G.Goodyearのいっそう基本的な解明・・
古エジプト美術のロータス文様原型
図柄からは決してそうは思われない一つの植物種を固持してきた
ヘロドトスの報告記事に罪がある
種子が食用となる・・ Nymphaea Nelumbo(Nelumbium speciosum)
エジプトでは発見されない
今日エジプトに栄えている聖なるロータスは
Nymphaea Lotus(白ロータス)で、青色の一変種は
Nymphaea caerulea
me何かと話題のGoogle ブックで次の文が読めました。

Art in theory, 1815-1900: an anthology of changing ideas - Google ブック Charles Harrison, Paul Wood, Jason Gaiger - 1998 - Art - 1097 ページ


WG Goodyear, in his book, The Grammar of the Lotus, was the first to argue that all antique vegetal ornament, and a good deal more, was a continuation of ancient Egyptian lotus ornament. The driving force behind the ubiquitous diffusion ...

2007年6月24日


ロータス葉

第9図 ロータス葉
第9図
ロータス葉
遺物文様にくりかえしあらわされたロータスの葉形は
Nymphaea Lotusの先の割れた葉の形に一致する
Nymphaea Nelumboの漏斗状の葉とは一致しない

エジプト・ロータス=睡蓮のページ参照
me (※ミケネ美術のキヅタの葉は、この尖ったエジプト式ロータス葉の伝承だとするグッドイーヤの説については後ほど考察、という)


ロータス蕾

第10図 ロータス蕾
第10図 ロータス蕾
エジプト美術のロータス蕾は、チピカルな水滴型
しばしば、こまごまとした分岐を捨てている
me「チピカル」というカタカナ語の意味だが・・
typical= 典型的な,代表的な・・でいいだろうか?

第11図
第11図 ロータス花と蕾との交互配列
(※この装飾法にギリシアのキマと卵形彫との起源がある。グッドイーヤが詳しく論証した)

meまとめると、ここではアメリカの研究家WG Goodyearグッドイーヤの説の中の功績をあげている。
古エジプト美術における渦文をロータス花の渦巻形萼を出発点と見る説は否定している

ロータス花(省略形)

第13図
第13図
側面形のロータス花
p.82 側面形のロータス花の型は、時代の推移とともに
二三の省略形を持ってくる
第7図 側面形のロータス花
第7図
第13図
第13図
第8図 釣鐘型
第8図  

側面形のロータス花


境をつける輪郭線がひかれるだけで、 しばしば細部が省略される
釣鐘型側面形を採用せしめるに至ったいっそう確かで外部的な根拠を探る必要がある


第14図
第14図
釣鐘型のロータス花の柱頭
第8図 釣鐘型
第8図  
第7図 側面形のロータス花
第7図

境をつける輪郭線がひかれるだけで、 しばしば細部が省略される
釣鐘型側面形を採用せしめるに至ったいっそう確かで外部的な根拠を探る必要がある

2009年7月15日
こちらは蓮です


スイレン

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