植物崇拝

金枝篇 きんしへん The Golden Bough
平凡社世界大百科事典(関本 照夫) からの要約



イギリスの社会人類学者J.G.フレーザーの主著。
1890 年の初版の好評により次々と続巻が著されて拡大し,
1911 年に 11 巻本としてひとまず完成,
その後さらに 2 巻が加えられた。
22 年には著者自ら簡約 1 巻本を編み,これは邦訳されて現在も刊行されている。
フレーザーは書斎の人類学者で,西欧古典資料や当時のさまざまな民族誌記録を読破して《金枝篇》を編んだ。
その後,フィールド・ワークにもとづく人類学研究の進展により
,彼の単純な進化論的枠組と資料の扱いの恣意性は厳しい批判を受けることになる。
だが
人間の宗教的想像力が示す多様性と深部の構造的相似を,
特定の宗教や民族に限定されず,これほど広く描いた著作は,いまだほかにほとんど見いだしがたい。

未開的・古代的宗教信仰の総合・集成的研究
James George Frazer フレイザーのテーマについては
(1)呪術
(2)タブー,
(3)犠牲
(4)穀霊と植物神
(5)神聖王と王殺し
(6)スケープゴート
以上のようなことですが、
この中で、唐草図鑑のテーマとしては、植物崇拝ということでみてみたい。

DELさんに読書会記録があります。
http://homepage2.nifty.com/delphica/goldenbough/index.html

私は、白川静さんが言及しているので、ちょっと「ちくま学芸文庫 」で上巻のみよんでみた、くらいなところですが、 出てくる、例の多さに驚きました… ⇒王という漢字
『初版 金枝篇(上)』(吉川信訳、2003/01)
The Golden Bough: A Study in Comparative Religion VOL.1(1890)


WEB検索
「神話学の発達史」というサイト http://astro.ysc.go.jp/izumo/sinwa.html

フレーザー James George Frazer 1854‐1941
平凡社世界大百科事典 (関本 照夫)から紹介要約


イギリスの社会人類学者。
グラスゴーに生まれ,ケンブリッジ大学で古典学を修め,
1879 年そのフェローとなる。 1907‐08 年の 1 年間リバプール大学社会人類学教授をつとめた
イギリスの大学における社会人類学の最初の講座
終生ケンブリッジにとどまり,21 年トリニティ・カレッジ教授に就任
全世界の民族誌資料,西洋古典・民俗学資料を博捜し,
人間の宗教的思考の諸形態を集成した
《金枝篇》
全 13 巻 (1890‐1936) がその代表作である。 《サイキス・タスク》 (1909),《トーテミズムと外婚制》 (1910),
《旧約聖書における民俗学》 (1918) などの著作がある。
人類の思考様式進化の再構成を図り,呪術→宗教→科学という 3 段階の図式を提唱した。
呪術とは類感と感染の 2 原理により世界を操作しようという誤てる技術であり,
その失敗の自覚から超越的なものの前にひれ伏す宗教が生まれ,
またさらには人間の能力の限界内で論理的・実験的に世界に対処せんとする
科学
が生まれた
というのである
社会進化論にもとづく過度の一般化・単純化,個々の資料の扱いの恣意性
などのゆえに,
フレーザーの論はその後強い批判をうけることになる。
だが時代的制約による限界にさえ留意するなら,
人間が世界を把握するための思考様式
全世界規模の比較によって構造的に理解しようとしたかれの仕事から,
今日学びうるところは大きい。

「社会」+「人類学」ですね。 「社会」「進化」「論」はもはやイケテないわけですね。「人類の思考様式進化の再構成」というのは、「過度の一般化・単純化があった」とされる。しかし、人間が世界を把握するため「思考様式」を、文化の比較によって理解しようとした、と評価されている、というわけですね。

呪術 じゅじゅつ
板橋 作美(平凡社世界大百科事典より)
一般に,超自然的な方法によって意図する現象を起こそうとする行為,信仰,観念の体系の総称。

[呪術の諸類型]

J.G.フレーザー類感呪術homeopathic magic感染呪術contagious magicとに分けた。
類感呪術は模倣呪術imitative magicともいい,類似の原理に基づくもの
感染呪術は接触呪術ともいい,一度接触したものは離れた後もたがいに影響を与えつづけるという考え方に立つもの

白い呪術と黒い呪術がある。
白呪術とは社会のためになる,生産的,防御的な呪術で,黒呪術とは人々に災いをもたらす,破壊的な呪術である。
一般に黒呪術とされるものに邪術sorcery と妖術witchcraft がある。
邪術はさまざまなまじないを行って,意図的に相手に危害を加えようとする破壊的呪術であり,妖術は相手に危害を与えようという意図がなくても,嫉妬 (しつと) や憎しみを感じると,その人が生得的にもっている霊力が発動し,相手に災いをもたらすというものである。

ヨーロッパの魔女信仰は妖術信仰の一つである。

なるほど…以上は単に、二つに分けてみてみただけ、ともいえるが、それはさておき(^_^;;

[呪術の機能とシンボリズム]についての学説まとめ

板橋 作美(平凡社世界大百科事典より)
 呪術は単に無知な人々の迷信ではなく,なんらかの役割,機能をもつ。 マリノフスキー
呪術は人々の不安や恐怖をとりのぞく機能 (心理的機能) があることを力説した。確かに他の民族でも,危険な仕事に従事する人の間ほど呪術が盛んである傾向がみられる。
ラドクリフ・ブラウン
同じく機能主義的な考え方ながら心理的機能より社会的機能を重視する
呪術や宗教,儀礼はむしろそれがあるために人々に不安や恐れを与えるという側面をもつと言い,そのような不安や恐れを人々が共有することによって,相互の結合が強められる,と呪術の社会的機能を力説した。
この 2 人の次の世代に属する社会人類学者J.ビアッティJohn Beattieは,呪術はある状況からの演出であり,象徴的な意味における願望の表現であると主張し,呪術の情意的側面を強調するとともに,呪術の象徴性を指摘した。
フレーザーは呪術を宗教に先行するものと考えた
デュルケームは宗教先行説をとり,また宗教は精神的,絶対的なものにかかわっているが,これに対して呪術は現実的,実利的であるとした。
宗教と呪術の区別とその進化論的図式化は西欧文化中心主義的な考え方の産物ともいえる。
レビ・ストロース は,宗教とは自然法則の人間化であり,呪術は人間行動の自然化,つまりある種の人間行動を自然界の因果性の一部分をなすものであるかのごとく取り扱うことであり,両者は二者択一の両項でもなければ発展段階の 2 段階でもない,と言っている。


穀霊 こくれい
穀物に宿り,これを生かしている精霊・霊魂。穀霊信仰は万物に霊的存在が宿るとするアニミズムの一種で,植物崇拝の一環を成す。穀霊観念とこれに基づく儀礼・慣行は,程度の差はあれ,未開,文明を問わず,穀物栽培を生業とする諸民族に広く分布するが,典型的なものは稲作地帯に見られる。多くはイネの精霊・霊魂 (稲霊・稲魂 (いなだま) )が,人間と同様に誕生 (発芽),成長,成熟,死 (枯死),再生の過程を繰り返すとの観念に基づいている。
佐々木 宏幹(平凡社世界大百科事典)


アニミズムも大事な術語のようだ。
アニミズム animism
平凡社世界大百科事典(佐々木 宏)から要約すると

〈気息〉や〈霊魂〉を意味するラテン語のアニマ anima に由来
〈さまざまな霊的存在 spiritual beings (霊魂,神霊,精霊,生霊,死霊,祖霊,妖精, 妖怪など) への信仰〉を意味する。

[学説]

 このように諸生物,事物,現象に認められる霊魂群を一括して霊的存在と名づけ,この存在への信仰をアニミズムと規定し,これによって宗教文化の起源と本質を論じたのがイギリスの人類学者E.B.タイラーである。
彼によれば,死,病気,恍惚,幻想とくに夢における経験を反省した未開社会の知的な人間は,身体から自由に離脱しうる非物質的で人格的な実体すなわち霊魂の存在を確信するにいたった。
人間はこの霊魂の観念を類推的に自分の周囲の動植物や自然物にも及ぼすにいたり,ここにさまざまな霊的存在の観念とそれらへの信仰が成立した。したがって神霊,精霊,死霊などは,種々の対象や存在に結びつけて認められた霊魂にほかならない。
霊魂や精霊の観念はのちに進化して多神教や一神教へと展開した。以上のようなタイラーの学説は,その巧妙な説明で 19 世紀末の学者や文化人に感銘を与えたが,そのあまりにも個人心理学に依拠した主知主義的な解釈や進化主義的な態度は各方面から厳しく批判されることとなった
マレット R.R.Marett によるアニマティズム (プレアニミズム) の主張などその例である。しかし,霊的存在への信仰 (アニミズム) をもって宗教の本質とする彼の所説は,理論的に補強されながら今日に継承されている

アニミズムという項目は、中村雄二郎さんの「述語集U」(岩波新書1997)で「悪」に次いで、2番目にでてきました。(全40語)副題は「生命感覚、アニマティズム、粘菌」
中村雄二郎さんの「述語集U」から要約すると
(1)かってはは忘れられた思想家であった南方熊楠がユニークな「アニミズム」の思想家としてクローズアップされるようになった。
(2)アニミズムについて考える基本的視点を与えてくれるのはH・ヨーナスの 「生、死、そして身体」
天空のアーチの下に立つ古代人にとって、生命が宇宙にとって二次的な問題であるとは思い及ばなかった。=汎生命論(panvitalism)
アニミズムの概念を初めて術語としてつかったのは、E.B.タイラー「原始文化」(1871) 人類学の立場から、宗教の起源を論じ、アニミズムをもって「霊的存在への信念」とみなした。 宗教の発生をあまりに知的にとらえたということ、 未開人に関して実証的なデータを伴わない理論であるとみなされ、 R.R.マレットによって いっそう情動的で単純な観念に基づくアニマティズムがもちだされた。 だが宗教の発生を根拠付けることはできなかった。 ⇒ベルクソン「道徳と宇宙のニ源泉」(1932)

アニマティズム animatism
平凡社世界大百科事典(佐々木 宏幹 )から要約すると

アニミズムが万物に宿り,しかも宿ったものから独立して存在しうる霊魂や精霊に関する観念・信念を意味するのにたいして, アニマティズムは万物を〈生きている〉ととらえる活力・生命力についての観念・信念を指す。 プレアニミズム,マナイズム,バイタリズムとも呼ばれる アニマティズム説を唱えたのは E.B.タイラーの弟子マレットR.R.Marettである アニミズムは物に宿る存在を強調したのにたいして,アニマティズムは物のもつ力・作用を重視したと言える。


農耕儀礼 agricultural rites
平凡社世界大百科事典(伊藤 幹治 )から要約すると

農作物の主要な栽培過程に行われる一連の儀礼
農作物の生育や豊穣の祈願,収穫の感謝などを目的としたもので, 人々の希望を達成するために行われる強化儀礼であるが, いも類の儀礼は,麦作儀礼や稲作儀礼などが盛んに行われているのに対して,あまり発達していない。
農耕儀礼には,穀物の擬人化や死と再生の観念が重要なモティーフになっている。 土地にまかれた種子が芽生え,生育し,やがて多くの実を結んで死滅してゆく過程を観察することによって, 穀物にも霊魂や精霊が宿っていて,それが年ごとに死んではよみがえるという観念が導き出されたのであろうが, こうした観念は,古代オリエントに誕生し,旧大陸の文明の形成や発展に大きな役割を果たした麦栽培民の神話や儀礼のなかに顕著にみられる。

[古代オリエント]

 バビロニア神話では,植物を擬人化したタンムズ (ドゥムジ) が,豊穣と生殖の女神イシュタルの夫とされているが,彼は毎年,死んでイシュタルといっしょに冥界に降り,再び地上によみがえって再生すると考えられていた。そして,植物が枯れて死ぬ夏の盛りに,タンムズの祭りが行われ,人々は臼でひき砕かれたこの穀物の神の死を嘆くが,数日後には,タンムズの再生を祝う宴が行われた。古代エジプト神話には,穀神オシリスは弟のセトに殺されて身体を寸断されるが,妻の大地母神イシスは,彼の死体を探し求めて,よみがえらせると伝えられているように,穀神オシリスは毎年,大地にまかれ,新しい生命としてよみがえって実を結ぶ穀物のシンボルであった。

[ヨーロッパ]

 ヨーロッパ農民の間では,麦が擬人化され,麦霊の死と再生を象徴した豊穣儀礼が行われている。麦の収穫が終わると,最後に刈り取られた麦束は〈麦のおばあさん〉とか〈麦のお母さん〉などとよばれ,そのなかに麦霊とみたてられた人間を包み込み,その首を鎌ではねるような動作をして麦霊の再生を促したり,あるいは,最後の麦束で人形をつくり,これに少女の着物を着せ,〈穀物の女王〉とよんで村中をかつぎまわって川に投げ込んだりするように,最後の麦束には,豊穣をもたらす呪術的な力が込められていると信じられている。


新王国時代の王家の副葬品、オシリス [Osiris]の苗床 というものを仁田三夫さんの写真出見たことが… ( オシリス神の形をした木枠の中に泥を詰め、大麦の種をまいた物 。⇒advent/2004/041202.html)
タンムーズ Tammuz,thammuz については
先史時代以来のメソポタミアの穀物神,死と復活の神で、 バビロニアの神話に引き継がれる。
真の水の子供の意。シュメールのドゥム・ジ・アブノズ。
イシュタルの夫。

とにかく、以上で、穀物神の死と復活、植物崇拝、について、概観整理はできてきた…



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(このページは2006/05/131初UPしました)

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