蛇儀礼

図像学 iconology
ヴァールブルク

Warburg著作集第7巻(著作集の最後の巻)


アビ ヴァールブルク Aby Warburg (原著),
加藤 哲弘 (翻訳)
ありな書房 (2003/03)


表紙は  クロイツリンゲンKreuzlingen(スイス)の
 ザンクト・ウルリヒ・ウント・アーフラ聖堂
(1967年再建)礼拝堂天井画 オリーブ山⇒青銅の蛇
加藤哲弘さんのホームページ著書@amazon

■Wikipedia⇒ St. Ulrich und St. Afra,
■Photo検索⇒ *Mount Calvary, St. Ulrich church, Kreuzlingen(下部のBaroque Carved Wooden Figures)


内容(「BOOK」データベースより) ヴァールブルク自らが現地で写真に収めたアメリカ先住民たちの生活と儀礼、そのなかに息づく蛇のイメージ。旅の記憶は壮大な歴史的回想へと姿を変えて、古典古代やキリスト教世界の美術に見られる蛇の図像の役割を逆照射する。ジャンルの閾を超えて、文明化による不安克服の両義性を自己省察とともに顕在化させる試み。 内容(「MARC」データベースより) アビ・ヴァールブルクの主要な論考を網羅し豊穣な思索を明らかにした著作集。第7巻にはアメリカ先住民の生活儀礼を調査し、心的宇宙に息づく蛇-表象を介して西欧美術に底流するイメージを逆照射した領域横断的論考を収載。

蛇儀礼 (岩波文庫) 三島 憲一 (翻訳) 岩波書店 (2008/11/14)刊著書@amazon


ヴァールブルクを読む
蛇儀礼 「北アメリカ、プエブロ・インディアン居住地域からのイメージ」

「古い書物を調べなくてはアテネからオライビまですべてが親族」…
この論考は
クロイツリンゲンで療養していた時の講演(1923年4月21日)草稿だそう。(Warburg57歳)
後半で、「キリスト教以前のヨーロッパの同様の現象についても簡単に考察」…と、ヨーロッパ文明の中の蛇を論じている。(此方が主題?)

古代の悲劇的ペシミズム
救済の神アスクレピオス
中世の占星術
聖書の中の偶像崇拝
初期キリスト教と蛇
中世の神学と予型論


(抜き書き引用)

北アメリカ、プエブロ・インディアン居住地域からのイメージ
蛇はキリスト教以前のあらゆる宗教習慣と同じように、最も生々しい象徴として、尊崇と礼拝の対象になっている
インディアンたちの宗教的呪術
蛇を口にくわえて 生きた蛇と踊る蛇祭り(ワルピ)
蛇は、稲妻をもたらすもの、あるいはその結果として水を生み出すもの


2000年前ギリシアにおいて その粗野さと異常さの点でインディアンたちのもとで見られるものをはるかにしのぐような祭礼の習慣が行われていた



ディオニュソスの祭儀…マイナデスは蛇を手にして踊っていた
頭にはダイアデム(髪飾り)として生きた蛇がまきついてもいる。
あるいはもう一方の手に、苦行のような生贄の踊りの中で祭神に捧げるために八つ裂きにされる動物を持つこともある
狂気の中の血なまぐさい生贄の儀式
蛇との関係は、物神崇拝から純粋な救済宗教へと変更していく信仰の純度を測る測定器になる


旧約聖書 蛇の姿を持つバビロンの原初母神テアマトがそうであるように、蛇は邪悪さと誘惑の精霊になっていた


ギリシアでも蛇は情け容赦なくすべてを呑み込む冥界の生きもの
復讐の女神エリニュスたちの髪には蛇が巻きついている
神々は罰を下すために蛇を死刑執行人として遣わすことがよくある

■マイナデス 「バッコスに仕える熱狂tきな女性信者たち。バッコス酒神による祭儀を担い、樫などの葉の冠をかぶり奔放な姿で歌いながら、乱舞の先頭に立つ」(加藤哲弘さんの訳注)
ウィキペディア(Wikipedia)

■ティアマト(Tiamat)「(加藤哲弘さんの訳注)『ウィキペディア(Wikipedia)
■エリニュス『ウィキペディア(Wikipedia)


ラオコオン
絞殺者としての蛇(冥界からの暴力)強力な悲劇的象徴
正義も救済の希望もない、古代の絶望的なペシミズム」
…ペシミズム的世界観における精霊としての蛇


救済者としてのアスクレピオス
古代の癒しの神
象徴の杖に巻きつく杖を伴っている
彼の容貌は世界の救済者に与えられる容貌となっている
この上なく崇高でで穏やかな古代の神
早い時期には蛇の形姿で崇拝されていた
彼の杖の周りに巻きついているのは、実は彼自身なのです。つまりここにいるのは今は亡き彼の魂であって、それが蛇の形姿を取って生きながらえ、再び姿を現しているのです。
不死性や病気や死の苦しみを超えた再生を表わす最も自然な象徴となっている。


中世の占星術
ローマ ヴァチカン教皇庁図書館所蔵の写本で見つけた 13世紀のスペインの暦
アスクレピオスがさそり座の月の支配者
アスクレピオスを蛇として崇拝する中で、野卑や洗練の両側面を含むしかたでその力に与ろうとする試みの表現
コス島の祭式の礼拝行為としての諸動作が象形文字風にほのめかされている

紹介されているイメージは
踊るマイナデス (新アッティカ浮彫)ルーブル美術館


■Laocoon Sculpture in the Vatican Museum, Rome.
Picture by de:Benutzer:Fb78. 『ウィキペディア(Wikipedia)
ラオコオン  (紀元1世紀)ローマ ヴァチカン美術館

Aesculapius
アスクレピオス (ローマ カピトリーノ美術館)
加藤哲弘さんの訳注は
ギリシア神話の医神 アポロンの息子 使者を蘇生させたためゼウスの怒りを招き、雷に打たれれ殺され、星(へびつかい座)になった。
ペロポネソス半島のエピダウロスには、アスクレピオス崇拝の中心となった壮大な神域があり、病人は神殿内に就寝中に神の恩寵に与って癒されたと伝えられる。聖獣は蛇で供物として雄鶏がささげられた。」

蠍座(天蠍宮)の中のアスクレピオス(ローマ ヴァチカン教皇庁図書館)
『ウィキペディア(Wikipedia)』Bibliotheca Apostolica Vaticana

星座図 蠍座の中の蛇使い(アスクレピオス) レイデン大学図書館

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鶴岡真由美「獅噛(しがみ)」鎧にあるデザイン装飾の美術文明
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Aby M. Warburg.
『アービ・M・ヴァールブルク―ある学者の肖像―』