唐草図鑑
唐草とともに 

ウルクの大杯(ワルカの壺)

The Uruk Vase 

以下、『古代メソポタミアの神々 世界最古の「王と神の饗宴」 』小林 登志子 , 岡田 明子 (著), 三笠宮 崇仁 (監修) 集英社 (2000/12/5)刊に、イラクの国宝の興味深い文物(ウルクの大杯The Uruk Vase(ca. 3000 BC))があったので、植物文様など少し見てみます。

p42 最古の儀礼記録「ウルクの大杯」
1933年ドイツのオリエント調査隊が発見した、雪花石膏(アラバスター)製の脚付き大容器(胴部だけで92センチ)
文献資料が皆無に近いこの時代の、宗教儀礼の実際の状況を探る貴重な手掛かり。 

麦の穂とナツメヤシ(?)

最下段には水を表す波状線、その上にメソポタミアの豊穣を示す麦の穂とナツメヤシが交互に描かれ、その上にはが行列している。


「大麦と亜麻」

※新しく、2011年12月刊の前田和也・渡辺千賀子著[メソポタミア文明](河出書房新社フクロウの本)では、「ウルクの大杯を読む」として6ページにわたる考察があり、大麦と亜麻としている。長くナツメヤシとする説が支配的であったが、間違いなく亜麻であるという。大麦も[六条大麦であることは確定している](耕地塩化に強い)とある。

シュメール語の文学作品で、人間が耕地で栽培する作物を総称する語としてしばしばて「大麦と亜麻」が現れる。大麦とナツメヤシが組み合わされることは決してない。 (p8図説 メソポタミア文明 (ふくろうの本/世界の歴史) )


p84 なつめやしの図柄 ということで、その2がウルク出土の大杯のもの

どうなのであるか・・

中段では供物を入れたかごを捧げ持つ裸身の男たちが行進している、器の種類は果物籠や浅い容器、注口付きの水差しなどである。

最上段で最も目立つのは、長い着衣の婦人で、二本の葦束の前に立って行列を出迎えている。その前に供え物を山盛りにした容器をもつ裸身の男性が描かれ、その背後の欠損部分にはおそらく房飾りのついた網目地スカート(※)を着用した人物がおり、その房飾りは後方に小さめに描かれた短腰巻(ロインクロス)姿の従者が持っている。 


※「ネットスカートの男」とも呼ばれる(前田和也 前掲書p6)
欠落部分を描いたもの

p44 この図を眺めて「お雛様の段飾りみたい」とお思いになった方もいらっしゃるであろう。
最上段には女雛男雛、酒杯、高坏(たかつき)、正式膳組、菱餅、供物膳など各一対で、他には嫁入り道具一式、牛車,駕籠などなど。
ウルクの大杯もまさにそうした婚礼儀礼を表している。

※前3000年ごろのウルクにおい描かれていることは疑うことができない。(前田和也p10)

meここで、キャンベル の『神話のイメージ』を参照したところやはり出ていました。
「ワルカ(ウルク)の壺」としてp82・83 図70~73
大修館書店1991年刊で、世界各地の神話を貫くイメージを420余点の図版を通じて、視覚的に探求する・・ということですが、「宇宙秩序の観念」という章にあります。
この図の前にはシュメール初期(紀元前3000年)の円筒印章、天と地の聖婚、アッカドの紀元前2350-2150年の聖なる飲み物の儀式の図であった。
後ろに前14世紀のジグラッド、前12世紀のバビロニアのクドゥル(境界石)の図

Joseph Campbell p82 図70展開図(マーク・ハッセルリースによる アンドレ・パロ [Sumer,The Dawan of Art] p72 pl89(1961New York Golden Press) )
新潮社/人類の美術 1965-1976年 『シュメール』 アンドレ・パロ(Andre Parrot)

シュメール (1965年) (人類の美術)

Joseph Campbell p82

アンドレ・パロの記述によると、「この儀式用壺は、今までにメソポタミアで発見された最古のものであり、製作年代は、紀元前30000年ごろと推定される。
この壺は、見る者を当時の雰囲気に誘い込み、それとともに、人間が神々の前に出る時の様子を、はじめて知らせてくれる・・・・・」。
主題は女神インニン崇拝。女神は彼女のエンブレムである2束のアシで示されている。たった今神殿から出てきた女性は女大祭司あるいは女神自身。解釈しがたいのは小さな人の姿を乗せた2頭の雄ヒツジ。
最下段には細長い肥沃な道に沿って歩み動物の列。オオムギや他の植物が繁茂しているところから見て、河畔の道。

Joseph Campbell p84

図70-72は、神殿塔に登頂する様子と、頂で行われる会合のすべてが表現されている


メソポタミアの神殿の機能

天(天空の神)と地(大地の女神)の裂け目を癒し、祭りを行い豊穣が再びもたらされることを願う


豊穣の「葦束」

神殿内部の女性像の背後の葦束は「イエンナ」の絵文字であり、男性像の持つ積み重ねたカップ状のものは、シュメル語「エン」(宗教的な統率者を意味する)の字の原型の絵文字である。

p38 シュメルの最高女神イエンナは元来ニン・アンナ「天の女主人」という意味だが、イエンナを表す絵文字は豊穣の「葦束」から発達したものである


p45 農耕牧畜と豊穣儀礼

me網目のスカート(※)がわかる
網目文について、井本英一さんが、書かれたこと が気になっていたのであるが・・(なお宿題とします)


検索

■Iraq Museum Database
http://oi.uchicago.edu/OI/IRAQ/dbfiles/objects/14.htm
※2003年 「イラク戦争のどさくさで、ウルクの大杯(The Uruk Vase)という五千年前の国宝など多数の博物学的資料が持ちさられた事件があった。」 //http://yojiseki.exblog.jp/11404257
http://www.mazzaroth.com/ChapterFour/TheWarkaVase.htm

me古代メソポタミアの神々 世界最古の「王と神の饗宴」 』の以下の図も興味深かった。
このカドゥケウスというのは、なんと紀元前2100年である・・


p63 ムシュフシュとカドゥケウス グデア(在位前2143~2124)がニンギシュジダ神に奉献した凍石製鉢に刻まれた浮彫


ニンギシュジダ神は「豊穣・復活の神」であり、「冥界の神」として竜蛇の姿をした「蛇神」の一柱で、「身を絡ませた蛇」カドゥケウスが象徴とされている。
占卜、除魔を行うものとしての地に水星と合一され、「治癒医薬の神」ともみなされた。

meカドゥケウスは.アスクレピオスであり、水星はヘルメスであったか・・


p63家族神としては父ニンアズ、母ニンギルダ、妻ニンアジムア、子ダムがおり、妻が「生成の植物の女神」、子が「植物の神」であることも、ニンギシュジダの神性の根源が植物の生成、繁茂にあることを示唆している。



p220 ムシュフシュ像の変遷
meほかにもいろいろな関わりで興味深かったのだが、⇒バビロンの蛇へ続く(聖獣蛇のページ



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