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パルメット唐草

palmetパルメット

唐草文様の前段階?

民族・伝承

「平凡社世界大百科辞典」1988刊 ナツメヤシの項(荒又宏著)

干したナツメヤシの実は
砂漠を旅する際に欠かせぬ携行品とされ、
現在オアシスの周辺に茂るヤシの多くは
隊商が捨てた種子から生じたといわれる

したがって
アラブの世界ではナツメヤシは
生命の樹 として表現されるとともに
富の象徴となった。
古代エジプト人は
これが毎月1本ずつの葉を生やすので
「年暦の木」と呼び
常に緑の葉を絶やさないことをめでた。

ユダヤではこれを勝利の象徴とみなしたが
おそらく大きな葉を絶やさぬ活力に由来すると思われる。

この伝統はギリシアやローマに受け継がれ、
オリンピックや剣闘士の闘いにおいて
戦勝の記念にヤシの葉の輪や冠が与えられた
ローマ軍は征服地を行進するとき列の先頭に
これを掲げたという

初期のキリスト教徒も
ヤシの葉を死の克服や信仰の勝利の象徴とみて
カタコンベの浮き彫り装飾などに多用した

幼子イエスを肩に乗せて川を渡したという
聖人クリストフォルスは
ヤシのつえを頼りに流れをわたりきったとされる。

また受難を前にしたキリストが、
エルサレムに入城したとき、
民衆がヤシの葉を道に敷いて彼を迎えた故事から、
英語では復活祭直前の日曜日を
パームサンデー(Palm Sunday 枝の主日)と称し
この日はヤシの小枝(実は葉)を手に持つことになっている

中世には聖地巡礼の記念に
ヤシの葉や枝を持ち帰る風習が生じ
ここから巡礼者は
英語でpalmer
(ヤシを持つ人の意)とよばれるようになった。

なおキリスト教の伝説や行事に出てくるヤシ類を
日本では「棕櫚」と訳しているが
正しくはナツメヤシである

『岩波西洋美術用語事典』 Palemtte
「椰子」という意味のラテン語palmaに由来。
古代エジプトに端を発し、ギリシアで広く用いられた文様パターン。
椰子の葉を図案化し、下端を曲線でつないでゆく。
古代ギリシアではしばしばロータスと交互に用いられる。

棕櫚(ナツメヤシ)はまず
古代メソポタミアやエジプトで
聖樹であった



シュメールの神

「ヨーロッパの文様事典」 (視覚デザイン研究所2000年1月刊)

(1)古代メソポタミア・エジプト

常緑で生命と繁栄の象徴
「熱い地方で棕櫚の葉は日陰を作り
太陽熱から守ってくれるところから救済のシンボルでもある」
遺されている文物
前3200年ごろの
動物文パレット 裏」
(ルーブル美術館蔵)
前2480年ごろのアプシル出土
棕櫚柱頭
(カイロ ジプト考古学博物館蔵)
https://en.wikipedia.org/wiki/Egyptian_Museum
前2000年紀末
ナツメヤシの木を守る精
(メソポタミア スーサ出土 ルーブル博物館蔵)


前1320~前1085年ごろ
イリネフェルの墓の地下玄室天井画
(エジプト テーベ デル・エル・メディネ)
エジプト ルクソール 墓室の壁画egypt luxor
エジプト ルクソール 墓室の壁画

前9世紀前半
ナツメヤシの前の鷲頭の精
(ニルムード出土)
有翼鷲頭精霊
(前9世紀前半 ニムルード西北宮殿出土)
前700年
授乳する母と子レリーフ
(カラテべ宮殿址)ヒッタイトの遺跡 アナトリア アダナ
(※https://www.jiaa-kaman.org/jp/


前700年
葡萄棚の下の休息
(ニネヴェ出土 大英博物館)
前6世紀前半
ネプカトネザル2世宮殿玉座の間正面 (バビロニアの「イシュタール門」(紀元前560年頃 ベルリン ぺルガモン博物館 (Pergamonmuseum)
ヴェルディのオペラ『ナブッコ』はイタリア語でネブカドネザルの意。

(2)初期キリスト教美術


キリスト教でも聖なる樹とされ
教会あるいはキリストの象徴として
信徒をあらわす動物と共に表される

404~15
石棺レリーフ
イスタンブール ハギア・ソフィア大聖堂

4世紀
墓室の天井壁画
(北ブルガリア シリストラ)

8世紀
聖カリレフスの屍衣
(フランス サンカレ教区教会)

952年
ベアトゥス黙示録注釈書 写本
ニューヨーク ビアボント・モーガン図書館

1160~70年
聖樹と狩猟文様 モザイク壁画

(シチリアパレルモ王宮ロドリゲス2世室)

(3)19世紀イギリス

19世紀の前半に染め織り文様として
棕櫚の木が突然大流行

1815年
棕櫚と孔雀の更紗
(イギリス製)

1814頃
型染更紗
(ロンドン ヴィクトリア&アルバート美術館)

walls1.gif
photo from
https://www.tau.ac.il/lifesci/botany/judaism.htm

A relief of a date palm (Phoenix dactylifera Linnaeus), among the ornamentations on the walls of the ancient synagogue at Kfar Nahum (Capernaum), dated from the 3-5th centuries CE.


「古代オリエントは世界最古の文明発祥の地域」
・・と文様辞典にもあるのだが(視覚デザイン研究所編)
メソポタミア地方では
動物文様が多く描かれたが、
植物では、聖樹、パルメット、ロータス、
ロゼット、松かさなどを組み合わせた
つなぎ文様
が見られ
これは唐草文様の前段階だと考えられる。

パルメット文様の元になる最も初めをみてみると
文様事典には、
有翼の精霊たちが
「生命の木」に受粉する場面を描いたとする、
ルーブル他蔵の魅力的なレリーフ
「ナツメヤシの前の鷲頭の精」がある

大英博物館の説明では
Supernatural spirits and a sacred tree
超自然の精霊と聖なる樹
These figures with wings may possibly be
supernatural creatures known as apkallu.

They wear horned headdresses to show
their divinity and carry buckets and
what appear to be fir conesused to sprinkle,
presumably, water from the bucket for purification
.

The stylized tree between the spirits is usually called
a Sacred Tree or even, misleadingly, a Tree of Life.
It bears some distant relationship to the palm-tree,
having a palmette on top of the trunk and
a trellis of smaller palmettes around it.
The palmette is a distinctly Assyrian version of a symbol
which had long been known in Mesopotamia and the Levant.
Its exact meaning is not clear,
but the flowing streams and vegetation could be taken
as representing the fertility of the earth,
or more specifically, Assyria itself.
Though no two Sacred Trees were exactly alike,
the arrangement of the branches on
the two sides of each tree was always identical.
Carnelian cylinder seal of Mushezib-Ninurta

ここではfor purification水で浄化する(推測)といっていますね。
⇒ 受粉(pollination; fertilization)とはいっていません

もうひとつ別の説では
東京大学環境共生システム学専修・植物資源プロセス学専修
(二専修のHP)
https://web2.fp.a.u-tokyo.ac.jp/7rui/invitation.html


(アッシリア王アッシュールナシルバル2世の

宮殿を飾っていた鷲頭有翼の聖霊のレリーフ)

右手に松かさ,左手に手桶を持つ姿は,

聖なる樹から
人の身を守るための
樹液を集めている
様子

⇒自然の恵みを人の生活に生かす

農学の原点を表現した構図
・・として、諸説あるようです・・


岡山市立オリエント美術館
でも購入計画中 (1億2千万円)の
アッシリア・レリーフ「有翼鷲頭精霊像」
非常に魅力的です

 同像は、紀元前九~七世紀に栄えたアッシリアの主要
都市・ニムルードの遺跡(イラク北部)にあった
宮殿の壁面装飾の一部。
石灰岩製で縦百六センチ、横六十一センチ。
頭がワシ、胴体が人間の像が彫られ、背中に翼がある。

(大英博物館のAssyrian reliefs特集)

class="t_500n"> なお、大英博物館が制作した
シュメール、バビロニア、アッシリアを含む
メソポタミアに関するウェブサイト(中学生向き)には
木の説明 apkalluの説明がある

また、 メトロポリタンミュージアムのTimeline Mesopotamia,1000BC-1AD
https://www.metmuseum.org/toah/ht/04/wam/ht04wam.htmも有用な楽しめるサイト
(東地中海世界の考古学と歴史)
https://mmiyas.hp.infoseek.co.jp/En_Gev/EnGev1.html
出土のダマスカスの地層などが出ています。

WEB検索

1)https://www4.airnet.ne.jp/mipo/2000me/6_2.htm
砂漠の女王 パルミラ :有名なローマ遺跡。
名前はパルメット(なつめやし)が
語源になっているらしい。
https://www.metmuseum.org/toah/hd/palm/hd_palm.htm

2)『ヨーロッパの酒器』その源流
https://www.table-talk.net/maeda/
唐草図鑑 palmetteパルメット

『岩波西洋美術用語事典』 Palemtte
「椰子」という意味のラテン語palmaに由来。
古代エジプトに端を発し、ギリシアで広く用いられた文様パターン;。
椰子の葉を図案化し、下端を曲線でつないでゆく。古代ギリシアではしばしばロータスと交互に用いられる。
→続くpalmet2.html


オリエントの鱗文(スケール)と日本の青海波→uroko.html

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