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蛇に巻かれた時間の神

キュモンの『ミトラの密儀』を読む


ミトラの密儀 フランツ・ヴァレリ・マリ キュモン、Franz Valery Marie Cumont著 小川 英雄訳 平凡社(1993年)刊 Mysteries of Mithra 著者: Franz Cumont,J. Thomas McCormack

Wikipediaによれば「ミトラス教またはミスラス教(英語:Mithraism)ミトラス教の小アジア起源説を唱えたが、現在ではキュモンの学説は支持されていない。」とある。※いきなり、そういった前知識を得たうえで、読んだわけであるが、どうなのだろうか(続く)・・
この本で序文に
「イラン世界とギリシア・ローマ世界とは常に相互の融合を避け続け、世代を超えた敵対心によってばかりでなく本能的な反発によっても分離されていた」(p7)
「しかしイラン魂の最も高度な表現であるマゴス神官たちの宗教は西方の文化に対して三重の影響を及ぼした。」
第一にソロアスター教はユダヤ教の形成に対して非常にはっきりした働きかけを行った。」
「アフラマズダー(ミトラ)と三位一体神(キリスト)との間で揺れ動いた民衆の魂の知られざるドラマについては、想像してみるほかはない。」 これに続く文が見開きにある文である。
「われわれは戦いの結果しか知らない。
すなわち、ミトラ教は敗れたが、それは疑いもなく当然のことであった。
敗北はミトラの密儀の教えに対するキリスト教福音の倫理や使徒たちの教えの優越にだけ帰してよいというのではない。
敗北したのは、古色騒然とした過去の遺産の重荷に押しひしがれたからばかりでなく、ローマ人の心が嫌悪感なく受け入れるためには典礼も神学もあまりにオリエント的なままであったからである・・・」

(後ろ扉に続く)
「・・しかし、ミトラの敗北はこの神の勢力を滅し去ったのではなかった。 彼は一つの新しい信仰を人々が受け入れるように準備させた。 それはミトラと同じようにユーフラテス川の流域から来て、別種の戦術で敵対行為を再開した。
マニ教が彼(ミトラ)の後継者、継承者となったのである。

以下本文からの抜き書き
(序章) 太古から続いたマズダ―教の幹から派生した小枝であるミトラ教は、イラン諸部族の古い自然崇拝という性格を多くの面で保存していた。
ミトラ教はキリスト教会のいくつかの教義を明確化するのに、貢献した。
イラン的・セム的思想の突然の氾濫。洪水の引いた後のオリエントのうずたかい沈殿物が残された。

第1章 起源(p17)
ペルシア人の祖先たちがインド人の祖先たちとまだ一つであった遠い昔、彼らはすでにミトラを崇拝していた。ヴェーダの讃歌は、アヴェスターのそれと同じようにミトラの名を讃えている。
カッパドキアの楔形文字が明らかにしたところでは、ミタンニ人によって前13世紀ごろ崇拝されていた。
アヴェスターの中ではミトラは天の光の精霊である。
彼は成長をもたらし、豊穣をもたらし、家畜の群れをもたらし、子孫と生命とをもたらす。
ミトラは「まどろむことなくマズダー神の創造物を保護する。」
女神アナーヒターと同様、アルタクセルクセスの碑文の中で、アフラマズダーとともに祈願される。
コマゲネス王アンティオコス一世(在位前69~34)の墳墓の碑文
(タウロス山脈)ミトラと握手している。
コマゲネ王は母方でシリアのセレウコス朝、父方でヒュスタルペスの子ダレイオスから出たと自称、ペルシアとギリシアの神々や儀礼を結び付けた。彼の王朝ではアンティオコスとミトリダテスという名前が交互する。
小アジアのマゴス達の宗教は、外来征服者の宗教に吸収されることなしに、それと自らを結びつけた。同一視という古くからの方法に依存

第2章 ロ―マ帝国への伝播
「密儀(ミュステリオン)」というギリシア語・・秘教
ミトラはギリシア世界からは締め出されたままであった。
(p37) 古代インドの信仰が起源 このマズダー教の下層には古代バビロニアのセム系の教義の厚い沈殿
(p35)多くの異質の要素が一体となったこの合成宗教は、 ヘレニズム時代にアルメニア、コマゲネ、カッパドキア、ポントスで栄えた複合文明の適切な表現である。
ミトラ教の主要な布教者は軍隊

第6章 ミトラとローマ帝国の諸宗教
(p142)キリスト教とミトラ教、敵対する二つの宗団の類似点は非常に多く、古代のすべての人々の間でさえ強い印象を与えるほどであった。
二世紀以来、ギリシアの哲学者たちはペルシアの密儀トキリスト教の比較対照を行ったが、それはすべて明らかに前者にとって有利なものとなった。
(p143)借用の範囲を詳しく確認できる唯一の分野は美術である。
キリスト教徒はミトラが矢を射かけて命ある泉水を湧き出させる図像から霊感を得てモーセがホレブ山の岩を杖で打つ図像をつくりだした。
キリスト教とミトラ教は酷似しており、その主要な例は魂の浄めと至福なる復活の希望であった、根本的な違いは、ローマの古代宗教との関係
キリスト教・・ 全偶像崇拝に対する容赦ない敵対
ユリアヌス皇帝の背教・・反動

ミトラ教美術
牛を殺すミトラ
(p165) オリエントに原型を持つ獅子頭のクロノス
同類の存在の多くの者と似て、動物の頭部を持つこの怪人は、オリエント的想像力の産物である。その系譜は疑いもなくアッシリアの彫刻にま遡る。ただしオリエントの芸術家たちは、ギリシアの神々の体系にとっては異質な神を表現したに違いなく、またいかなる特定の流派によっても拘束されなかったので、自分対置の空想を自由に羽ばたかせた。
彼らが施した様々な改変は、一方では宗教的配慮―多くの事物を付加することによって、この神格化された抽象観念の象徴的意味をますます複雑化させる傾向によって、 そして他方では この野蛮な登場人物の怪奇さを可能なかぎり和らげ、それを少しでも人間化しようとする願望、によって動機づけられる。 結局、彼らはこの神の獅子頭をやめ、この動物を足でだけあらわしたり、胸にこのもう獣の顔面を配置することで満足する。

(p166) 永遠を表す獅子頭の神はミトラ教美術の最も独自な創造物であり、たとえ愛らしさや優雅さに全く欠けていても、その外観の奇抜さや事物の暗示に富む集積は、人々の好奇心をそそり、瞑想にいざなう。
この時間神以外で、オリエント起源を証明することが確かにできるものとしては、たとえば、杖の上にかぶさったプリギア帽とか天界を象徴するための鷲が乗った球体などいくつかのシンボルがある。

(p167) ミトラ教美術はギリシア彫刻が創造したいろいろなタイプの宝物庫から多くの借りものをしたにもかかわらず、本質的にはそれが表していたところの密儀と同じようにオリエントのものであった。
いくつかの浮彫にひしめいている登場人物や群像の寄せ集めや、
永遠を表すクロノスを覆い尽くさんばかりの持物の錯綜は、「何らかの新しい理想が新しい宗教形態とともに生まれたことを示している。
これらの醜く冷たいシンボルはミトラ教遺物によって執拗に使われたことがわかっているが、優美さとか高貴さによって人を惹きつけるものではなかった。
それらは人々の精神を未知なるものの困惑させるような見直によってひきつけ、魂の中に厳かな神秘に対する畏敬の念を起させるものだったのである。

(p168) そういうわけで、その不完全さにもかかわらず、非常に洗練されているミトラ美術は永続的な影響力を行使することになった。

ペルシアの神の信者たちがにぎにぎしく複製を作って広めた宇宙循環の図像は、ほんとうはキリスト教の精神に抵触するものであったにもかかわらず、キリスト教によってとりいれられた。 なぜならミトラ教徒にとっても自然全体は神聖であったからである。 例えば、天、地、海、太陽、月、惑星、獣帯の記号、四方位の風、四季、四大元素等がそういうものであり 、キリスト教徒の石棺、モザイク画、細密画などにも頻出する。

いきなり、キュモンの学説は葬られているだの何だのという余計な話も入ってきてしまいますが、私の関心は、蛇に巻きつかれた時間の神アイオーン像のことである。
ミトラ美術に関するまとめのように、非常に力を感じる。

Wikipedia(en.)の方の記述。
After his death, critics of his interpretation of Mithras as the descendant of the Iranian deity Mithra began to be heard, and surfaced at the First International Congress of Mithraic Studies in Manchester England, 1971. Modern interpretation of Mithras as the astronomical bull-slayer have continued to move away from Cumont's interpretations, though his documentation remains valuable.
色々あるが読む価値を残しているのである。
http://www.well.com/user/davidu/mithras.html


WEB上で英語でテキストを読め、図版も見られます。

2011年8月21日のブログ
予約していた図書の フランツ・キュモン『ミトラの密儀』小川英雄訳 平凡社(1993年)なんですが、 さっそくざっと見ました
テーマはアイオーン(時間の神)で、アイオーンは「シストラムを持つ神」であるとも・・
初版1899年・・! フランツ・キュモン(1868~1947)
検索していたら、テキストとして、
http://www.scribd.com/doc/3974851/Franz-Cumont-The-Mysteries-of-Mithra
http://www.sacred-texts.com/cla/mom/がありました。
THE MYSTERIES OF MITHRA by Franz Cumont[1903] (第2版)
上のものの本文に傍線があるのが楽しいデスよ(!?)
下のもののページの中で、 フィレンツェのミトラ教クロノス像のあたりはここ

訳書の表紙と図版12の図像はこれとちがい人頭人身です
モーデナの彫像。山羊の脚を持つミトラ教クロノス。
図像はこちらへ

表紙カバー折り込み表の図像は
 蛇に巻かれた獅子頭人身シルエット


表紙カバー折り込み裏の図像は
 蛇に巻かれた獅子頭人身 翼があり、右手を挙げている

photo by http://aldixon.yolasite.com/


  裏表紙の図像はこちらのもの

Aion_mosaic_Glyptothek_Munich
Aion ("eternity") on a mosaic from Sentinum. The hoop is decorated with the signs of the Zodiac. The woman is Fertility, together with her four children: Spring, Summer, Autumn, and winter. (Glyptothek, München)
Aionアイオーンのページに続く

図書にないフェルマースレンのも抜粋ですが、ありました
ネットはすごい
MITHRAS, THE SECRET GOD  by M.J. Vermaseren
http://www.american-buddha.com/lit.mithraismverma.htm 6の図29辺りが時間の神ですね
Mithraic Leontocephalus
http://www.ceisiwrserith.com/mith/whatismith.htmFig. 8

Some of the statues of him have holes through the back of his head to his open mouth, through which fire might presumably been blown.

口から火を吐くというのはちょっと(~_~;) ・・・?

こんなサイトもありました。
Mithraeum.eu is a place for the study of Mithras and Mithraism.
Museo de Arte Romano, Mérida, Spainのアイオーン像あり
http://www.mithraeum.eu/monumenta/aion_merida
Musée Lapidaire



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