唐草図鑑
聖樹聖獣文様

『聖なる幻獣』を読む

唐草とともにある聖獣(3)

シャルドーラ

立川武蔵(著)/大村次郷 (写真)
(集英社新書 2009/12/16刊)

「神々や仏の聖性を高める獣たち。」
目次 /序章/ 第一章 キールティムカの顔
第二章 海獣マカラ
第三章 トーラナという宇宙
第四章 蛇と龍
第五章 翼のある獣
第六章 一角獣
第七章 聖獣と神々/ あとがき/ 参考文献

目次読書


立川武蔵さんの『聖なる幻獣』を読む 第3章
目次(+抜き書き+画像検索)読書

トーラナという宇宙

切妻屋根とトーラナ

図(第三章表紙)シッダルータ太子出城の場面
ピタルコーラ遺跡 インド ※検索:旅行記事

アジャンタの第17窟 古代インドの建築の図(図1-17)
切妻屋根によって作られる三角形の頂点にキールティムカと下の二匹のマカラ
後世のネパールのトーラナ 切妻屋根が作る三角形部分にはない
(破風装飾ではない)
トーラナ=寺院本堂の正面入り口などの上部にお彼が半円形装飾
入り口上部の壁に対してわずかに斜めに取り付けられている。
本堂や仏塔から離れてあったトーラナが、半円形の門の形となって徐々に建物にちかづいていていったことの名残
サーンチー仏塔のトーラナのように、2(3)本の梁があった
(矢印→時間経過)ムクテーシュヴァル寺院のように梁が半円に
(矢印→時間経過)上部が半円となったトーラナが本堂の正面扉に近づく

図3-1 クマリ・チョーク、カトマンドゥ盆地
トーラナに現れるキールティムカとマカラ。
キールティムカは左右の手でそれぞれ蛇をつかんでおり、2匹の蛇の尾を口で噛んでいる
中央はドゥルガー女神

Wikipedia

クマリ(Kumari、Kumari Devi)はネパールに住む女神クマリの化身である。密教女神ヴァジラ・デーヴィー、ヒンドゥー教の女神ドゥルガーが宿り、ネパール王国の守護神である女神タレジュの生まれ変わりとされており、国内から選ばれた少女が初潮を迎えるまでクマリとして役割を果たす。

https://www.nepalopedia.com/

図3-2 サーンチー仏塔のトーラナ
ライオンや象などの彫像、浮き彫りはあるが、マカラやキールティムカはいない。
上部が半円形でもない。

図3-3 ムクテーシュヴァル寺院 本堂前のトーラナ 10世紀
「このトーラナは、後世のネパールの半円形トーラナへの移行過程を示している。」(p107)
ブバネーシュヴァルBhubaneswar、オリッサ州Orissa先史時代のヒンドゥー教の土地

図3-4 仏塔の前におかれたトーラナ
カトマンドゥ盆地、パタンの旧王宮近くの広場。
弧を描くトーラナの頂点にはキールティムカ。
左右には人面鳥身のキンナラ(図5-6)
切妻屋根の作る三角空間とトーラナは別のものだったのが、二つが重なったため、 ネパールでは、本堂上部にある半円形のものがトーラナと呼ばれるようになった
それは、世界あるいは宇宙をしえす キールティムカは天を、マカラは海を、中央にいる仏あるいは神は世界の住人を意味する
キールティムカが掴んでいる蛇は、世界各地で見られるウロボロスのように世界を取り囲んでいる。

キールティムカが創造する世界

図3-5 アジャンタ第1窟
キールティムカと一対のマカラが一緒になっている浮き彫り
柱の上部のキールティムカの口から出ている花綱と二匹のマカラから出ている花綱が連結している
花綱=世界を包む網
後世の密教では、キールティムカとマカラから吐き出されるものが世界であると考えた。 図1-4(同じアジャンタ第1窟)ではキールティムカが噴き出す花綱2人の飛天が左右から引き上げていた

◎非常に重要な図のようで、見開き2ページを使っている
マカラの背後の渦巻きは水を意味するという。



仏陀を守る三匹の聖獣

シャールドゥーラ(サンスクリット語で虎)・・仏像や神像の脇に対になって配される動物を指すこともある
この聖獣は、ライオン、馬、羊などの合体像とも言うべきもの
インドにおけるより早く西アジアにあったイメージ


図3-6 方杖(ほうづえ)のシャールドゥーラ カトマンドゥの旧王宮
ネパールの寺院では方杖という角材を斜めに渡して屋根を支える。
「角材には様々な尊像が彫られ、この方杖呑もう獣は10本の脚を有する」

図3-7 ダッカ国立博物館 バングラデッシュ11世紀ごろ
阿しゅく如来の右脇にいるシャールドゥーラ
マカラと同じく口から花綱を出す。そのイメージの基本はライオン

ちょっと検索
阿閦あしゅく如来 - Wikipedia
「レオグリフ」?

青色の阿閦仏が触地印を結んだ右手に金剛杵を持ち、阿閦の乗り物とされる白と黒の象に支えられた極彩色の蓮台に結跏趺坐に座る。2人のたくましい金色の夜叉が基壇の隅を支えている。桃色の象の背に乗った青いレオグリフ(シャールドゥーラ)が台座の背の両脇を支え、金色の葉状の尾びれを持った桃色の摩竭魚が台座のいちばん上の背板を飾っている

https://abc0120.net/words03/abc2009110402.html天空の秘宝チベット密教美術展

図3-8 ヴィジャナガル(ハンピ Hampi)インド南部 カリヤナ・マンダバ、ヴィッタル寺院Mandapa, Vitthala Temple
シャールドゥーラに乗るのは、クリシュナ・デーヴァ・ラヤ王といわれる
(神谷武夫さんの写真 https://www.kamit.jp/02_unesco/10_hampi/ham_eng.htmこのあたり

図3-9 聖獣を伴うヴィシュヌ(インド東部11世紀ごろ)
頭上のキールティムカ
肩の左右のマカラ2匹
胴の左右の2匹のシャールドゥーラが
ヴィシュヌの聖性を高めている
インド国立博物館、ニューデリー

キールティムカマカラ、およびシャールドゥーラの三要素が、一つの宇宙を形作る
切ずまと柱を有する家屋の構造と相似の関係にある
シャールドーラは切妻屋根を支える柱
尊像の頭は切妻屋根を作る三角形、 肩は家の軒、 胴体と脚は家の壁と柱・・
仏の身体=家=世界(ヒンドゥー教でも同じ)
God Vishnu with Lakshmi and Saraswati
12th century stone sculpture of God Vishnu at Stanford University


上のWikiメディアの写真は本書の図3-9のものにそっくりのようですが、聖獣への言及は一つもないようだ。補足を書き入れました

東南アジアのキールティムカ


図3-10 兜率(とそつ)天(煩悩と形を有する世界)におけるブッダ アジャンタ第2窟
ブッダの座る椅子の背の両側に2匹のマカラが見られる Wikipedia

ネパールの典型的な構図はベトナム出も見られる
一つの宇宙をあらわすものとして生き続けてきた
図3-11 ボーナガルのチャイトヤ(アーモンドの身)型の装飾
 ニャチャン、ベトナム 9世紀初頭

図3-12アンコール・ワットの南東数10キロメートルのところにあるロレイン寺院入口の弓型装飾
ヤショーヴァルマン1世による9世紀末 ネパールの半円形にあたるものが、弓のような形になる
この弓は虹を意味する
虹=インドラの弓と呼ばれた。
カンボジア人にとって最も重要なものは雨

図3-13 メナムホテルの壁画バンコク
仏の足に踏まれるキールティムカ。タイにおいてはキールティムカとマカラ2匹のセットはほとんど見られない。 剣を咥えたキールティムカが護符として売られている。 キールティムカが天からが見下ろして外敵を追い払う役を受け持つというより、仏や神を下から支えるようになる
図3-14  国立ベトナム歴史博物館The National Museum of History Vietnam  ダナン、ベトナム。
フリーズの一部にみられる、キールティムカとマカラの上で踊るアブサラス(天女)
2匹のマカラがキールティムカの両耳のように描かれることもある
キールティムカの持つ意味が代わってきた
・・仏や神の台座の役をするようになった。

検索:https://sites.asiasociety.org/vietnam/
https://www.bluffton.edu/~sullivanm/vietnam/hanoi/historymuseumworks/champasc.html


図3-15 パシムパンガン・ラト・バトカル神の社 バトゥワン寺院。バリ

サエ(葉を咥えるキールティムカ)
カラン・ガジャ(象としてイメージされたマカラ)
バリ島ではキールティムカとマカラは一直線に並び、神像の下に置かれる
バリ島では、ライオンに似た顔のみの聖獣は、インド的なイメージから少し変化している。

検索
Pura Batuan944年https://bali.navi.com/miru/79/
確かに台座になってますね

Torana(A Temple Gateway)

トーナラWEB検索.
■トーラナの写真 - 旅行のとも、ZenTech
https://www2m.biglobe.ne.jp/%257eZenTech/gaiphoto/p14_india_sanchi.htm
■のぶながさんのページSanchi Great Stupa & Torana サーンチーの塔門 樹下ヤクシー像
https://www.abaxjp.com/indo209-sanchi/indo209-sanchi.html

『聖なる幻獣』を読む (以下第四章の蛇と龍に続く)

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