聖獣 獅子・ライオン

動物文様

獅子 唐獅子


獅子

獅子 しし

松平 美和子(平凡社世界大百科事典)
日本ではライオンと同義に用いる。中国の《漢書》西域伝では,西域伝来の動物とし,後世の注釈者は,中国の虎豹をも食うという支麑 (さんげい) (猊) にあてている。 獅子 (ライオン) は百獣の王といわれ,その威厳ある姿は古くから動物闘争文 (アニマル・スタイル) や狩猟文などに好んで用いられた。ウル第 1 王朝期以降の遺物にみられる動物闘争文には牛にかみつく獅子文があり,その文様は後にペルシアのペルセポリスの浮彫にも用いられている。

狩猟文としてはアッシリアのニムルド王宮の壁面彫刻にすでにあらわれ,特に馬上から騎士が身を翻して獅子を射る姿をあらわした獅子狩文はアッシリアよりペルシアまで銀皿などにさかんに用いられている。 獅子狩文では獅子は必ず前足を上げて立ち上がり,尾をぴんと上げ口を開けて咆哮している。中国からその形象が伝来した日本においても,法隆寺の〈獅子狩文錦〉にはこれとほぼ同形の獅子がみえ,また正倉院の〈花樹獅子人物文白橡 (つるばみ) 綾〉の中央の花樹の左右に対置する獅子もこれと同じ姿勢をとる。

他にも正倉院の〈紫地獅子奏楽文錦〉の獅子奏楽文をはじめ, 獅子遣い文,獅子頭文,獅子丸文,獅子の丸蛮絵などがある。
松平 美和子(平凡社世界大百科事典)

唐獅子

[唐獅子]

高田 衛(平凡社世界大百科事典)
 獅子 (ライオン) を〈猪 (しし) 〉〈鹿 (しし‖かのあし) 〉などと区別して唐獅子と呼ぶこともあったが,中国伝来の幻想動物としての〈唐獅子〉は,頭側部両側や頸部,尾を火索状に渦巻く多量の毛で覆い,胴体,四肢に数個の文様を散らした特異な形状容姿で伝わっている。こうした概念や形状を最初に日本にもたらしたのは 9 世紀渡来の密教両界曼荼羅図であると考えられる。すなわち空海の帰朝 (806) や円仁の帰朝 (847) 時にもたらされた胎蔵界曼荼羅には十二天宮の一, 獅子宮に〈獅子〉図があったほか,円仁の持ち帰った曼荼羅図には大日如来の禽獣座 (乗物) として唐獅子の姿がはっきり描かれていた。このころから急速に発達した日本の密教美術は,諸如来,諸菩醍とともに,この仏法護持の神獣〈唐獅子〉を図像的に確実に定着させていった。

 平安時代,仏教が国教化し,神仏が習合される思想の中で,清涼殿の天子玉座の帳台御前の左右に〈獅子形〉 (唐獅子木像または鋳像) を配する慣例が成立した。大日如来の垂迹神,天照大神の神子たる天皇の神格を〈王法即仏法〉の考え方によって権威づける儀礼であった (《江家次第》)。この段階では,唐獅子は仏法のみならず,邪悪なものを退け,国家鎮護を祈念する形代として呪術的な機能が賦与されていたわけで,これを〈ししこまいぬ (狛犬) 〉とも呼んだ。仏寺や神社の門前の左右に狛犬を配する風習も,これにかかわりがあろう。


古い狛犬に比べて平安時代末期以降の狛犬は,極端に唐獅子の形状に近づいてゆくからである。この時期の独立した唐獅子のイメージは,伝鳥羽僧正の《鳥獣戯画》 (12 世紀末ころ) で見ることができる。

一方,平安時代中期の興福寺供養において〈獅子舞〉が行われており, 〈獅子頭 (ししがしら) 〉と呼ばれる獅子舞芸能が田楽や猿楽と並んで民間に行われるのはこのころと考えられる。グロテスクだが勇猛である唐獅子の威容をかりて,邪悪なものを除祓する呪術的な芸能であったと思われ,それは中・近世の間,断続しつつ,今日の民間芸能の〈獅子舞〉に至っている。

 中世になると,唐獅子はその勇猛な形状容姿がことのほか武人に愛され,旗印や兜の飾りになることが多かった。謡曲《石橋 (しやつきよう) 》等によって,百獣の王としての獅子が牡丹 (ぼたん)の華麗な花姿と対応され,美化されていったこととも関係があろう。

室町時代や安土桃山時代には,唐獅子の形状容姿は,城郭建築の中の朕絵や潅風絵などの画題となり,狩野永徳の《唐獅子図》 (御物) などの傑作も生まれた。


江戸時代に入っても武家の唐獅子図像の愛好は引き続いた。たとえば日光東照宮の絢爛 (けんらん) たる装飾彫刻の中で多用されたのは唐獅子と牡丹の図柄である。しかし,江戸時代後期になると,唐獅子の神威ある王者の守護獣といった性格はうすれてゆき,ひたすらに怒りたける勇壮なる野獣性の象徴に転じていった。ことに浮世絵の発達にともなう刺青の流行につれて,鳶 (とび) の者,火消,勇み肌職人,惟客らは, 《水滸伝》の豪傑らのほかに唐獅子牡丹の文様をからだに刻みこむことがあった。この風俗は近代に入って,おもに博徒や極道者に引きつがれた。

 なお,石川県の加賀武家文化の象徴としての唐獅子陶像,沖縄県の琉球文化の象徴としての唐獅子陶像は,それぞれの郷土特産品として著名である。
高田 衛(平凡社世界大百科事典)

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