ボッティチェッリの晩年の絵画
The Mystical Nativity
フィレンツェが災厄から脱却することを祈念
画面上部の横長の区画にギリシア語で銘文が記される。
これはボッティチェッリが自らの作品に記した唯一の署名。
「私サンドロは、1500年の末に、イタリアの混乱の中で、一つの時と半分の時が過ぎた時に、すなわち聖ヨハネの11章によれば悪魔が3年半の間解き放たれるという黙示録の第2の災いの中で、この絵を描いた。
やがて悪魔は第12章で鎖に繋がれ、そして我々はこの絵に見るようにはっきりとそれが(地に落とされる)のを見るであろう。」(京谷啓徳 p86)
サヴォナローラとの関係が取りざたされる、謎めいた2点の宗教画:
神秘の磔刑、神秘の降誕(1501)
伝統的な降誕図に、不可思議なモチーフがいろいろと付加されている。
*ボッティチェリ《神秘の磔刑》
=The Harvard Art Museumsのコレクション
以前の祭壇画
ボッティチェッリの分割構図
祭壇画は等身大以上の人物は避けるべきであるため、縦長の巨大祭壇画を満たす図像として、聖母の戴冠を地上世界と天上世界に分割
手をつなぎながら輪になって踊る天使たちの姿は、後の《神秘の降誕》のそれを予感させるとともに、かっての《プリマヴェーラ》の三美神の優雅な踊りをも思い出させる。
地上の聖人たちは、左から、聖ヨハネ、聖アウグスティヌス、聖ヒエロニムス、そして聖エリギウス。
4人の聖人中3人が書物を手にし、近郊細工師の守護聖人で会った聖エリギウスはこちらに視線を向けることにより、この祭壇画の注文主を神にとりなしている。
本作品は金工細工師たちによって注文されたため、とりわけ天上部分に多くの金が用いられている。
京谷啓徳(p68)