唐草図鑑
聖樹聖獣文様

西欧初期中世の美術

キリスト教芸術の起源の問題

Early Christian Monuments of Ravenna


世界美術大全集 西洋編7・西欧初期中世の美術
編集委員/辻 佐保子 1997 https://www.shogakukan.co.jp/
「世界美術大全集 西洋編7・西欧初期中世の美術」だが、月報に対談が、辻夫妻
辻 邦生は「最初の留学の3年半の間には、古代末期からロマネスク、ゴシックのはじまる11,12世紀までの間は感覚的にも、どうもイメージを結べなった」という。それがだんだんつかめるようになった、そのきっかけは、ラヴェンナのバシリカ教会と出会ったときである、という。
「エクレシア(集会堂)からエグリース(教会)という言葉が生まれてきますが、そのエグリーズの原形をバシリカの中にみたように思った」
辻 佐保子(1930- 2011)(Wikipedia:「ビザンツ美学美術史専攻」)
辻 邦生(1925(大正14年)- 1999)(Wikipedia:「パリ5区、Rue Descartesに位置するポール・ヴェルレーヌが没した建物の左隣に在住した。没後はヴェルレーヌと並び記念プレートが掲げられている。」)

辻邦生はラヴェンナのサン・ジョバンニ・エヴァンジェスタが特に気にいったという、「ラヴェンナはその後の文明、例えば、ルネサンスなどが起らなかったことが幸いし、集中式とバシリカ式の二つの基本形がよくわかる建築がいくつも残っている」(辻佐和子)

サン·ジョヴァンニ·エヴァンジェリスタ教会

San Giovanni Evangelista (Ravenna)奉献 426

Porta San Giovanni Evangelista.jpg
"Porta San Giovanni Evangelista" di Incola

Frammenti di mosaico pavimentale del 1213, 23
サン·ジョヴァンニ·エヴァンジェリスタ(ラヴェンナ) - 1213年のモザイク床の断片(Wikimedia)

「サンタポリナーレ・イン・クラッセは街から離れた所に建っていて、採光状態もとてもいい。身廊の両側には同時代の石棺も並んでいて、緑の野原も美しく、とてもすがすがしい」(辻佐和子)

サンタポリナーレ・イン・クラッセ聖堂

Basilica di Sant'Apollinare in Classe 549年完成

2012 ravenna 141.jpg
"2012 ravenna 141"

「北イタリアの港町ラヴェンナには、5~6世紀に建てられた初期キリスト教の聖堂などの建造物が多く残されており、その内8つが世界遺産に登録されています」 https://www.nhk.or.jp/sekaiisan/

(Wikipedia:ラヴェンナ)

サン・ヴィターレ聖堂

( Basilica di San Vitale)

初期キリスト教建築の代表的な聖堂(教会堂)であり、カトリック教会のバシリカ。6世紀前半に建設された。
初期ビザンティン美術の傑作で。ユスティニアヌス1世とその皇后テオドラのモザイク画で知られる


サン・フランチェスコ聖堂

(Basilica di San Francesco)

10世紀から11世紀に再建。前の聖堂は、12使徒に献堂され、のちペトロに献堂された。
321年、ダンテ・アリギエーリは聖堂付属の墓地に埋葬された


サンタ・マリア・マッジョーレ教会

(Chiesa di Santa Maria Maggiore)

は525年から532年に建てられた教会で、1671年にバロック様式で再建された。ルカ・ロンギの絵画を所蔵。

「世界美術大全集 西洋編7・西欧初期中世の美術」の辻夫妻の巻頭対談、ラヴェンナのモザイクの次は石棺の話。 アルルでは、キリスト教のものと異教の石棺がおいてあるところと、二つの美術館が並んでいる。
ローマでは、今はヴァティカンの中にきれいに並べられているが、もとはラテラーノ宮殿のコンクリート打ちっぱなしのようながらんとしたホールに並んでいた。
古代のものなどをルーブルで見ていると、それは彫刻作品としてであって、葬式用という内容を見落としてしまいがち。それが南仏に行ってみる彫りかけ(ボス)のものなどがあって、それが葬礼美術だったということが実感できる(辻邦夫)
「世界美術大全集 西洋編7・西欧初期中世の美術」の辻夫妻の巻頭対談、次はカタコンベの話。
ヴィア・ラティナのカタコンベはローマのラテン街の殷賑を極める場所にある。いろいろな宗教が混じっていてこれがキリスト教の墓所だろうかとびっくりさせられた。(辻邦夫)
普通のカタコンベは行けども行けども絵の描かれているところなんてない、ヴィア・ラティナの場合は、全部の部屋が絵で埋まっているからそれだけでも驚異(辻佐和子)

https://hdl.handle.net/10129/1373ヴィア・ラティーナ・カタコンベの装飾モティーフについて


「世界美術大全集 西洋編7・西欧初期中世の美術」の辻夫妻の巻頭対談、もう一つの話。
半島を縦に走る山脈の中を(ペスカーラからべネヴェントまで)旅し、これがバシリカとともに 古代末期から中世初期の空間を埋めるものの一つだと納得したこと。
宗教の伝播の形とか、宗教が山の奥で人々と交わりながら、しかし隔絶しているとか、秘教性や矛盾を体験した。 土地そのものが、聖性を持っていたということ。(辻邦夫)
ナポリ、カプア、チミティ―レなど、このあたりは初期キリスト教美術にとっては大事な場所だった(辻佐和子)
「世界美術大全集 西洋編7・西欧初期中世の美術」の辻夫妻の巻頭対談、最後の話。
初期キリスト教美術を考えるとき、個々の図像研究より、図像の形成ということに興味を覚える。13世紀ころできあがったキリスト教の図像とは違った、もっと混沌としたものをはらんだ美術(辻邦夫)
もし旧約聖書が無かったら、キリスト教というのは福音書だけではどうにもならなかったと思う(辻佐和子)

ここでエミール・マールに戻ることにします。ちょうど第3章では、ラヴェンナの聖堂の話

サンタポリナーレ・ヌオヴォ聖堂

Basilica di Sant'Apollinare Nuovo(6世紀)

Meister von San Apollinare Nuovo in Ravenna 002.jpg
"Meister von San Apollinare Nuovo in Ravenna 002"

Ravenna.jpg
"Ravenna" by Nina Aldin Thune

 「ヴェールで手を隠す」・・・
マール:天使たちが持つヴェールの意味・・敬意によって手を隠している(オリエントの儀礼)⇒フランスの新機軸の図、シャルトル 1150年、キリストのテュニックを持つ・・第3章の図のチェックに続く

ビザンチン美術への旅 (角川書店[角川新書] 1966年)
古典世界からキリスト教世界へ 舗床モザイクをめぐる試論 (岩波書店 1982年)
中世絵画を読む (岩波セミナーブックス) ([岩波セミナーブックス] 1987年)

ビザンティン美術の表象世界 (岩波書店 1993年)
中世写本の彩飾と挿絵―言葉と画像の研究 (岩波書店 1995年)


ピーターラビットの謎―キリスト教図像学への招待
ビザンティン聖堂装飾プログラム論 』中央公論美術出版 2014
益田 朋幸(1960年- )(著)

ラヴェンナ:モザイクと石棺の街

世界美術大全集第7巻の月報ですが、対談の他に、
「ラヴェンナ:モザイクと石棺の街」というエッセイも1ページ(by清水徹)詩人のイヴ・ボ(ン)ヌフォアYves Bonnefoyの『ラヴェンナの墓』の話。
燦然たる色彩のモザイクと、くすんだ灰色の大理石の棺とが、ラヴェンナでは深い親近性に結ばれている・・という。
モザイク像では、生が儀式化され、そのことによって時間が消えている。単純と華麗が支配し、時を越えて存在し続ける。 装飾紋様を刻まれた石棺も死という異次元のものと人間的な時間との交錯に他ならないとボンヌフォアは感動的に語っている・・と

ボンヌフォアは二匹の孔雀が身を起して向きあい、同じ聖杯から飲み、同じ蒲萄の木をついばんでいるモチーフに注目して、そこに死と不死性の出会いを読み取っている

 この美術全集(世界美術大全集 西洋編7・西欧初期中世の美術
編集委員/辻 佐保子 1997 →目次)イメージを見るだけでなく、いろいろな論考もありますが、まずは巻頭対談でした・・次に、興味の中心の円柱ということで、 「柱頭から見る西洋中世」を・対で残りのテーマ特集を見ます。

2017年6月の旅 #ラヴェンナへ
6/5 Ravenna サン・ヴィターレ聖堂・ガッラ・プラキディア廟、ネオニア―二洗礼堂、 サンタポリナーレ・イン・クラッセ聖堂 
6/6 ダンテの墓 サンタポリナーレ・ヌオヴォ聖堂


 エミール・マールの古典的著作『ロマネスクの図像学』を読む

△ PageTop


唐草図鑑ロゴ


獅子紋章風
聖樹聖獣文様
聖獣概観
生命の木
 獅子
唐草目次
文様の根源
文献
用語
サイトマップ
唐草図鑑