聖獣

北天の星座

近藤二郎著『星座神話の起源 古代メソポタミアの星座』を読む

続き

第三章の北天の星座

現代の88星座で、<北天19星座>は
おおぐま・こぐま・うしかい・りゅう・ケフェウス・カシオペヤ・アンドロメダ・ペルセウス・さんかく・ペガスス・いるか・ぎょしゃ・ヘルクレス・こと・はくちょう・わし・や・かんむり・へびつかい(へびを含む)

~~~以下は所収の図像(主にギャビン・ホワイトのもの)を詳しく見ることがメインのまとめです~~~

「荷車」の星座:北斗七星

Etendard d'Ur - char

(p080)
写真3-2 「ウルのスタンダード」の「戦争」の場面
最上段に描かれた2頭のペルシア驢馬に惹かれた荷車
前2600年頃 大英博物館蔵

四頭馬車の図、背中の上のものは、ねじまきのように見える?
馬の足回りの人物は敗者の死者であるか・・
車輪の図が独特だ‥
上は鋸歯文、下は斜め四角の列

なお、ウルのスタンダードについては竪琴ということを見ました。
https://www.karakusamon.com/orient/Ur_lyre.html

 

キツネ(Fox)と牝ヒツジ(Ewe)

・・デンデラ神殿の円形天体図
北斗七星を表わす「メスケティス」が牛の前足として描かれている
図3-3(p083) 牛の前足の下に小さく牝ヒツジがうずくまっって描かれている

 


写真3-3 ルーブル美術館蔵

天の北斗七星(の形)=荷車というのが初見でした。その荷車に、キツネと牝ヒツジが乗っているというのをもう少し見ておきたい。
また、エジプトにおいて、北斗七星=牛の前脚であったという。の前脚は、今までも見てきたが、北斗七星というのは初見。そこでも、(カバ女神の方が大きいが)牝ヒツジとキツネも描かれる・・・

その動物があらわす星は不明のようだ・・

天の荷車:こぐま座

荷車の小型版としての天の荷車

現在北天におおぐま座とこぐま座があるように、古代メソポタミアに「荷車」と「天の荷車」があるのは興味深い(p084)

古代バビロニアでは 北極星=「荘厳な神殿の相続人」
ギャヴィン・ホワイトは。現在の北極星であるこぐま座α星を天の荷車のシャフトの軛の位置としている

犂(すき)とオオカミ

「『ムル・アピン』の命名の由来の犂(=アピン)・・ムル・アピン粘土板の一番最初に登場する星座
ギャヴィン。ホワイトは、犂は、古代メソポタミアの社会を象徴するもので、おおかみは世界の秩序を破壊するものとして描かれているのではないかと推測(するが不明)(p・085)

※検索:ムル・アピン(B.C.1000頃の天文の書)
バビロニアの星座の名前
MUL.APINの星座http://www.kotenmon.com/str/mulapin.htm

「シュパ」と北天の星たち


シュパ=エンリル神? 推定うしかい座
ロープで天の星の動きを制御している

興味深い図像だ・・アンズーはいない

wikipedia
シュメール・アッカドにおける事実上の最高権力者。随獣は怪鳥アンズー
Chaos Monster and Sun God
wikipedia < EN = 主人、LIL = 風 >
原初の天空神(=アヌ)から農耕に不可欠な雨をもたらす「嵐」と「風」の神(=エンリル)へと信仰が変動していったことを意味する

北天をとりまく星座

ヒョウ(空想上の動物)
=有翼のライオン・ドラゴン、ライオン・グリフィン、ライオンのような鳥の怪獣


図3-5「ヒョウ」カッシート朝時代  近藤 p088
(ブラックとグリーン著 Gods,Demons and Symbols of Anciant Mesopotamia,Austin,1992)

有翼で、前脚は獅子、後ろ脚は鳥のもののように見える・・
下の巣においても和え足と後ろ脚は形が違う・・
下で乗っているのはイエンナ女神
以前見たページから再掲すると

https://karakusamon.com/orient/sumer_gods.html
前田 徹著『メソポタミアの王・神・世界観―シュメール人の王権観』(2003/11)
エンリル神がシュメール統治に与る最高神であるのに対して、
イエンナは外敵を撃破する神


図3-6「ヒョウ」アッカド時代(円筒印章)

下の図(円筒印章)ではイエンナではない男神が乗っているようだ


写真3-4 「ヒョウ」(上段中央)古代シュメールの円筒印章
(B.ブキャナン著 Early Near Eastern  Seals in the Yale Babylonian Collection,New Haven,1981)

下は4段目の際下部の行列で、パビルサグ(頭二つ)の後ろに、王冠を頂く?人頭獸身巻き尾の象と同じ台に乗っているが・・


図3-7 カッシート朝のバビロニア王マルドゥク・アプラ・イッディナ王
(Marduk apla iddina在位:前1171頃-前1159)の境界石(クドゥル)
(U. ザイドゥル著 Die Babylonischen Kudurru-Reliefs (1989))

写真3-5「ヒョウ」新アッシリアの円筒印章(中央)
(B.ブキャナン著 Early Near Eastern  Seals in the Yale Babylonian Collection,New Haven,1981)

 

(wikipedia)で検索)

新アッシリア時代は、アッシリア語が新アッシリア語と呼ばれた形であった紀元前10世紀の末頃から、アッシリアの滅亡までの時代を指す。この時代アッシリアは、全オリエントを覆う世界帝国を打ち立てた。有名なアッシュールバニパル王の図書館が作られたのもこの時代である。

Cylinder seal(wikimrediaカテゴリーCategory:Cylinder seals)を検索したが、これはみあたらなかった(20210203現在)

 


図3-8 新アッシリアのアッシュル・ナツィバル2世時代のカルフ(現在のニムルド)のニヌルタ神殿のレリーフ  (近藤 p.090)
(ブラックとグリーン著 Gods,Demons and Symbols of Anciant Mesopotamia,Austin,1992)

(wikipedia)
ニヌルタ=「エンリル」と「ニンリル」(あるいは変形神話では「ニンリル」の代わりに「ニンフルサグ」)の息子。単頭のライオン頭の鷲である、怪鳥アンズーを退治する神話が有名

アンズ―は、「単頭のライオン頭の鷲」で「双頭の鷲」でない・・・が・・
ここでいう「ヒョウ」の部類であったようあ・・

牝ヤギ

グラという女神(天空の神アヌの娘)の化身とされる牝ヤギ。
座るイヌのグラ女神の聖なる獸

 

座るイヌ


図 3-9 ネブカドネツァル1世(Nebuchadnezzar I、在位:紀元前1125年頃 – 紀元前1104年頃)

(本題にあまり関係ないが、ミスを発見。p.092には間違って図3-7と同じ、在位:前1171頃-前1159という年代になっている・)


図3-10 グラ女神と横に座るイヌの図像
前10世紀のバビロニアの王、ナブ・ムキン・アブリの境界石

後々もこのイヌは貴婦人の足元に居たりする…
⇒イヌの象徴
https://www.karakusamon.com/zusyo/inu_panofsky.html
https://karakusamon.com/2019k/guui_amour.html

立てる神々

図3-11蛇ヘビの神々 足の先がヘビになっている
(ブラックとグリーン著 Gods,Demons and Symbols of Anciant Mesopotamia,Austin,1992)
立てる神々はヘラクレス座

この図像も初見

~~~~以上、第三章(p.078-p.094)の北天の図像(主にギャビン・ホワイトのもの)を詳しく見ました・・

天空の女神の娘グラ女神とその聖なる獸の座るイヌ・・

https://www.karakusamon.com/unicorn.html
(2019年6月2日撮影 クリュニー中世博物館)

一角獣の他に貴婦人の足元にイヌ、ウサギが・・

イヌの象徴(パノフスキーをベースに)は昨年も見ましたが・・
まとめの浅さを感じさせられる(^-^;

黄道一二宮の星座

2021年1月26日