前田 徹著『メソポタミアの王・神・世界観―シュメール人の王権観』(2003/11)p21 表2「王権を授与する神」
統一国家期を形成期と確立期に二分した。 外的な指標として、王権授与にかかわる神の存在がある。
王権を授ける神がエンリルとイエンナに分かれることは、王権に抱くイメージの差による
イエンナ神が王権を授与することは、武力による領土拡大が含意される
わが女王〔イエンナ神〕よ、戦いにおける獅子よ、諸国に荒れ狂い、打ち倒すものよ。
エンリル神は、シュメールの王権を取り戻すようにお命じになった。あなたが私の援助者でありますように。
(p71) イエンナ神のバルバル歌)
イエンナ神が戦闘の面でなく、豊穣の神の側面を強調されるのは、ウル第三王朝時代も第四代のシュシンから。この時から国家祭儀としての豊穣を祈願する聖婚儀式が始まったのであろう。
第三王朝の王妃は王に殉死したと考えられる。例外がシュシン治世にも権勢を誇った「太后」アビシムティ。(一代遅れてシュシン王に殉死したと考えられる。)
(p72)
聖婚儀式とは、シュメールの伝統である都市神と配偶神の結婚を新しい理念で加工したもので、特定の時期に現れた国家祭儀の一種とみなすべき
[全世界の秩序ある平和的統治]の一側面を儀式化したもの
1.「遠き日」(永遠の昔)・・原古の創造の時・・次元を異にする神々の時間
2.「メ(me)」・・これがなければ活動しない、定められた神的な法則・規則
「シュメールの王名表」にある大洪水以前の原初の五大都市の時代
洪水の時、ジウスドラ(「永き生命」)がただ一人残る
エタナの危機・天において神々から地上の支配権をゆだねられた者
キシュとウルクの対立期・・武人の主人公同士が争う論争詩(イエンナ神の好意を争う)英雄叙事詩
神とは、初めは形なきもので、自然の現象そのもの。それが、神人同形を取るようになった。以前の姿は神の標象に残る
神人同形の姿を取らない神々は恐怖の対象=悪神
シュメールの神々の最大の特徴は、万神殿(パンテオン)の神の性格と、都市神の性格の、二重の性格を持つことにある
この二重性は時に相反する性格になる⇒都市神の優位
(p156)
シュメールにおいて、神は都市神の性格を有し、その都市が政治的統一の主導権を握った時に、最高神としての地位を得る
(p162)
都市とその都市神の自立性が、最後まで維持されたところにメソポタミアの特色があり、それを打破できなかったところに、メソポタミアの王権の限界があった
シュメールのイエンナ神はアッカドではイシュタル、エンキ神はエア、ウトゥはシャマシュ。名前は異なっても、神の属性はほぼ一致。シュメール人とアッカド人は同一の文化を共有したことは確かである・彼らの敵はエラムをはじめとする周囲の異民族であった。
(p120)「四方世界の王」王の神格化
神々の末席にあって支配する
アッカド王朝のナラムシン//全世界の支配を表明した最初の王
(p121)シュメールの世界観
天=神の住む所
地上=人間の住む場所ょ
地下は生命の源と死者の世界
生誕から死へという人生の時間的継起や神と人間の神話的関係を地理的もしくは空間的な場に置き換えている
人間と自然との対立ではなく、神々の加護を受けた人間社会=文明(都市)に対するのは神々を知らない非文明社会=野蛮な周辺世界の異民族
(p59)
王の神格化
王が神になった、とはいえ神々の最上位にある「運命を定める神々」に加えない。守護神として人間社会の運命を最上位の神々に執りなす神。
王の象徴が、王杖から王冠に変わる
初期王朝からアッカド王朝時代まで、王権は王杖で代表された。
ウル第三王朝時代には、王杖に代えて、王冠が象徴となった。王杖、王冠、王座の三点セットで表現。シュメールの神々は角のある王冠を頭に戴く。
(p61)ナラムシンは、浮き彫りにおいて、角のある王冠を戴いた姿に描かれる。王冠は神たる王を象徴。王杖は、指揮権・統治権などの王の機能を象徴。 王座は、神たる王の優越性を象徴する。
as a god-king (symbolized by his horned helmet)(en.Wikipedia)
有角⇒神は興味深い・・角のある神々はこちらだが、シュメールの神の姿を以下へ
平坦な大地を覆ったドーム(ドームの外側はテェアマト) Anu existed in Sumerian cosmogony as a dome that covered the flat earth; Outside of this dome was the primordial body of water known as Tiamat (not to be confused with the Subterranean "Apsû")
His image is a double-helix snake, or the Caduceus, very similar to the Rod of Asclepius used to symbolize medicine. He is often shown with the horned crown of divinity dressed in the skin of a carp.
獣帯の山羊座の起源となるHis symbols included a goat and a fish , which later combined into a single beast, the goat Capricorn , recognised as the Zodiacal constellation Capricornus .
He is usually depicted as wearing a horned helmet and carrying a saw-edged weapon not unlike a pruning saw.
wearing a version of the horned cap or tiara of divinity(en.Wikipedia)
ここで本来のテーマ、獣帯に戻ります
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