植物としてのロータス
テーマは、
「ロータス文様」(ロータス・パルメット、象徴・文化)ですが、
、ここではまず、植物としてのロータスを見ていきます・・ 。
英名のLotusは蓮と睡蓮の両方を指します。
エジプトにおいては、ロータスとはスイレン・・
デニウエンコンスの石碑 大英博物館蔵 紀元前800年ころ |
学名:Nelumbo nucifera
英名: Lotus : Indian lotus: East Indian lotus
( 一般にIndianなどの種類を表す補語をつける)
英名のLotusはハスとスイレンを含めた総称
lotusロトス:ギリシア伝説上の植物
その実を食べると夢心地の忘却状態になる
(→”ロータス・イーター”)
和名 ハス「芙蓉(フヨウ)」蜂巣
蓮・藕・荷 など この読みの漢字は多い
蓮「艸(くさ)+音符連(レン)(つらなる)」
株がつらなって生えることから言う
科名 スイレン科 双子葉綱キンポウゲ目(下も参照)
科名Nymphaeaはギリシャ神話に出てくる水の妖精ニンフから
属名 ハス属 Nulumbo nucifera Gaertn
分類その1: スイレン科ハス属
水蓮 睡蓮
スイレン:熱帯から温帯にかけて分布する水生の多年草の総称
スイレン科にはスイレン属、ハス属などがあり
7属(9属?)100種あまりが分布
スイレン属(Nymphaea)
コウホネ属(Nuphar)
日本固有のスイレン属
ヒツジ草(Nymphaea tetragona)
:スイレンの原種の一つで
日本唯一の在来種(尾瀬のヒツジ草が有名。)
レンコン→ 食用に栽培されるハス属、
ジュンサイ→ スイレン科ジュンサイ属
分類その2 ハス科 ハス属 Nelumbo nueifera
従来の植物分類では、ハスはスイレン科に分類していたが
最新の分類ではスイレンの仲間からハスだけを独立させて、
ハス科という科を設ける場合がある
ハス属は2種のみ
アメリカ種(キバナハス):アメリカ東部原産
American lotus flower 花が黄色い
東洋種 :日本のほか中国やインドなどに自生しているハス
・・・というのが平凡社大百科辞典の記載でしたが:by伊藤元己先生
「今のところnucifera(東洋産)、lutea(北アメリカ産)
caspicum(カスピ海産)の3種だそうです。」
という。from蓮文化研究会阪本様)
性状 水生多年草
比較的浅い淡水に生える多年生の水生植物
沼や池などに生育する多年生の抽水植物
原産地 熱帯、温帯アジア、豪州北部
インド、中国、マレーシア
参考書 平凡社世界大百科辞典1988刊
ヨーロッパの文様事典(視覚デザイン研究上編・刊 2000/01)
滋賀県草津市立水生植物公園みずのもりロータス館資料
参考サイト 蓮文化研究会 The Lotus Japan
分類について
While all modern plant taxonomy systems agree that this species belongs in the genus Nelumbo, the systems disagree as to which family Nelumbo should be placed in, or whether the genus should belong in its own unique family and order.
The lotus is often confused with the water lilies (Nymphaea, in particular Nymphaea caerulea, sometimes called the "blue lotus").
In fact, several older systems, such as Bentham and Hooker (which is widely used in the Indian subcontinent) call the lotus Nymphaea nelumbo or Nymphaea stellata. This is, however, evolutionarily incorrect.
Far from being in the same family, Nymphaea and Nelumbo are members of different orders (Nymphaeales and Proteales respectively).
(wikipedia 閲覧20160806)
ロータスと総称される睡蓮と蓮であるが、近年の分子系統学的研究・分類では、スイレンは「古草本群」で、ハスはそれよりあとに分化した、違うものであるということである。
また、蓮というと、「古代ハス」→およそ2000年前の大賀蓮の、種の寿命の長さという方向に引きずられるのだが、ハスの植物としての古さは実感できていなかった。スイレンは確かに、エジプトの文物に見られる、遥かに古いもの(*)である。・・ハスの古さを初め感じるのは、仏教における象徴の関係において・・
※スイレンは白亜紀初期(1億2500万~1億1500万年前)までさかのぼる
ハスとスイレンの違い
ハスの大きな葉とスイレンの花(photo 20160804 @花の文化園)
睡蓮の葉には切り込みが入ります。
蓮の葉は丸っこいだけなので違いは一目瞭然!?
睡蓮の学名は
ギリシア神話の水の精Nymphaeaから
■蓮と睡蓮の区別
スイレンは、花被弁が多く
螺旋状に並び、開花後に脱落する
雄しべがたくさんあり、
花托のへこんだところに埋まっている
果実が成熟後にも開かず、種子に胚乳がない
葉は水をはじく撥水性がある
睡蓮には青い花があるが、蓮にはない
睡蓮が浮葉が主体であるのに対し、
蓮は水面から抜き出る立ち葉が主体
睡蓮の大部分が、
水面上に浮かぶように咲くのに対し、
ハスは水底の地下茎の節から花が伸びる
違いが図表でよくわかるサイト:グレゴリウス講座
※https://www.gregorius.jp/presentation/page_53.html
APG植物分類体系
ANGIOSPERM PHYLOGENY WEBSITE
植物名について
補足1
荒俣宏さんの「花の王国」から
学名Nelumbo 属名ネルンボはスリランカ島の言葉でハスの意。
英名lotus ラテン語のハスあるいはスイレンをさす言葉から。
和名 はす、はちす 実がハチの巣に似ていることに由来。
⇒ ロータス2(荒又宏を読む)
2016-08-28 古書の『蓮の文華史』(三浦功大編 1994 かど創房)で、蓮の語源について、蜂の巣から(『和漢三才図会』(1713年刊)というのは、つじつまが合いすぎてこじつけにしか見えないと、斎藤正二氏。蜂は人々に恐怖の対象とされ親しまれていなかった、と。(p92~105「蓮と日本文化」)
中国名 蓮
蓮の字はもともとは蓮の実をさした。
葉は荷、茎は茄、花は芙蓉という。
⇒詳しくは※ハスの漢字について(「花と木の漢字学(寺井泰明著)」)
2016-08-28 『蓮の文華史』(三浦功大編 1994)からの続きであるが、これについても少々違い、7~8世紀の日本律令政府の官僚が活用した類書『芸文類聚(げいもんるいじゅ)』の(『芸分類聚』巻82)の出典用例から、葉は「葭」で、「荷」は総称として挙げている。
「日本の古代詩歌にハチスが
登場する場合には、原則として「荷」という表記が用いられている。しかるに、平安中期ごろになって浄土教が知識階級の文化意識の中に浸透してから以降になると、ハチスといえば、もはや「蓮」のみに限られてしまう」
このことは、語源究明上大変重要なのであるという。
「ハチス(ハス)」の語源は、「荷(Ho)」もしくは、
「芙蕖 (Fu-ch'u)」の中国音ではないかと推測される、という。
『万葉集』においてハチスを詠んだ歌は四首あり、その四首すべてに「蓮」を用いている。
(中略)
万葉歌人が、ハチスを支持する正しい漢字表記が「荷」でなければならぬことを確実に知っておりながら、(*)「蓮」を用いたのは、美的規範を中国文化に求めてそれを学習した七~八世紀の律令知識人が、ハチスの花といえば、美女のアナロジーとして把握したろうことは、容易に想像され得る。」
*3826番の前書き、3837番の詞書きでは「荷」を使っている
中国詩文においては、「蓮」といえば、だいたい、「怜」「憐」「恋」の相関語として用いられるのを常とした。これは、 蓮(Lien) =怜・憐(Lien)=恋の音声連関による。
斎藤正二(1925~2011)教育学者wikipedia仏典 インドにおける蓮の名前: 宮治昭「仏教美術のイコノロジー」から
蓮は仏教美術の根底をなしているイメージ。
(⇒詳しくは蓮のイコノロジーを読むへ
仏典には種々の種類が説かれている。
もっとも一般的なのはパドマ。ピンクの花。
パドマ(紅蓮華…蓮華と普通訳される花はこれ
ウトパラ(優鉢華)…青い睡蓮
クムダ(拘物頭華)…黄蓮華(実際は白い睡蓮) プンダリーカ(芬陀利華)…白い蓮
蓮や睡蓮を日常的によく見ていたインドの人々にとってはその区別は容易で
観音菩薩はパドマ(赤い蓮華)を
文殊菩薩はウトバラ(青い睡蓮)を持つというように、
菩薩によって蓮や睡蓮の持物が異なり、美術表現の上でも両者は明確に区別されている。 しかし、中国や日本でが区別が分からない。
観音様の持つ蓮 パドマ?
スターウォーズのヒロインの名前は「パドメ」
スイレン
スイレン
ハスの花がぼってり大きいのに対して、睡蓮の花びらはとがっている
多肉質の根茎
蓮根は、ビタミン、デンプン、ミネラルを含んでいる。
茎は通常地下茎=根茎は多節で水底を横走し、空洞を持つ
「蓮根」は、人に福をもたらす食べものとされる
8本の空気の通り道を持つ
栄養価が高く、 縁起がいい家庭の必需品。
効能: 滋養強壮、扁桃炎、口内炎、歯茎のはれ、炎症緩和
「 ハス、スイレンの呼吸
根や株は空気(酸素)を必要とします
そこで、葉の表面などから取りいれています。
特にハスの葉の茎を切断してみるとストローのようになっています。
ちょうど太いストローの中に細いストローを数本通したような感じです。
ハスの根(いわゆるレンコン)も穴が空いているのは空気を通すためで、
この葉と根は当然つながっています。
葉柄や地下茎にもレンコンと同様な穴があり
葉で形成された酸素を泥の中に送り込んでいる。」
(引用) by Y.HADA 岡山理科大学 総合情報学部
生物地球システム学科 植物生態研究室(波田研)
象鼻杯 とは= 葉に注いだ酒を葉柄から吸う姿を象の鼻に例えたもの
象花杯で水を飲むテスト中:2011年9月花の文化園(大阪)にて
ハスの茎がストロー状であるということがよくわかるが、また、
ハスの葉の大きさにも驚くべき・・・
象花杯のほかに、「蓮の葉の帽子」というイベントもよく見受けられます。
・・東南植物楽園(沖縄)など
ハスの花は両性
夏に開花
花びらは睡蓮よりぽってりとほんわりとゴージャス
秩序正しく整った花形
花は白から淡紅色で、直立した茎に1個咲く。
ハスの実は堅く、楕円形。。
花のあとに大きな花托(果托 かたく)が残り、
アーモンドみたいな種が並んで顔を出していますが、
この形を蜂の巣にみたててハチスと言ったものが
ハスに変わったようです。
種子にはハス属を除き、
胚乳とともに周乳があり多くの澱粉を蓄えている
この花托はスポンジみたいにフワフワと柔らかく
中の種子は食べられます。
ハスの種子の果皮は非常に硬く、
自然状態では、なかなか発芽しにくい.
ハスの種の発芽調べ(photo20120707@花の文化園)
※参考:蓮を種から育ててみよう!!
→モネの睡蓮の模作も壁画にありました
(@草津市立水生植物公園)
美術用語 | 「アカンサス」 | 「アンテミオン」 | 「アラベスク」 |
アカンサス | ハス | ナツメヤシ | ブドウ | ボタン | ツタ |
モティーフ | ロータス | パルメット | 渦巻 | ロゼット | メアンダー |