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聖なる樹

木の図像の美術文化

生命の木 聖樹


生命の木

クリムトの生命の木
クリムトの生命の木…
生命のエネルギーをあらわすかのように、どこまでも伸びる枝
唐草状にぐるぐると渦巻いています。
聖樹とは聖樹文様とは ・・・・

宇宙樹

me 生と死をみつめる聖なるもの、宇宙の「中心のシンボル」 、樹木と木の円柱と生み出す女神の同一視・・・などなど、新しい文献から、各ページに追記します
矢印生命の木と生命の樹(ロジャー・クックの本「生命の樹 -中心のシンボリズム」を読む)


聖樹・ 聖樹文様

(平凡社百科辞典 長田玲子)

「生命の樹」を典型とする聖樹は世界各地で
装飾文様として使われている。
イランではハオマと呼ばれたがこれは葡萄だとされる。
聖樹は多くは聖獣や女神を伴った形で
装飾文様に使われる

すでに前3000年紀のスーサ出土の円筒印章には
動物を伴った樹木文様や
樹下に聖獣を配したものがある。
なお、ヨーロッパのキリスト教美術でも
生命の樹として葡萄がしばしば描かれ

今も行われる枝の主日のオリーブやナツメヤシの祝福、
またクリスマスツリーも聖樹崇拝の名残といえる。


ブドウ聖樹ナツメヤシ

 

(「ヨーロッパの文様辞典」より) 古代ペルシア「聖なる樹」(ハオマ)
聖樹を中心に動物が左右対称に置かれる構成はササン朝ペルシアの重要な文様になった。。
その木の下は聖地や楽園を意味し、動物たちは清められ、また祝福されることを意味している。
また聖樹は単独では生命の樹として
使われ、イスラム美術の文様で重要なモチィーフ

東方への伝播

樹下動物文 円文 左右対称形、といった
ササン朝の伝統様式は
イスラム世界にも取り入れられた

西方への伝播

聖樹の意匠は西洋でも盛んに用いられ
聖樹の下に動物が集うキリスト教の
楽園のイメージが形成された

詳しくは→樹下聖獣文


ここで「ヨーロッパのキリスト教美術でも 生命の樹として葡萄がしばしば描かれ」るという件であるが、もちろんブドウである!?
「ユダヤ国民の象徴で、後年、キリスト教会の紋章として使われるようになった」と 「聖書の植物 」モルディケ 著 奥本裕昭 訳 八坂書房1991刊)にある。

ブドウのページにて続けます。


WEB検索
生命の木について、Wikipediaでは、ほぼ二つに分けている。(2009-12-19閲覧 掘り下げた記述はない。)
生命の木 (神話学)として、北欧神話の世界樹、聖書の「生命の樹」、仏教の菩提樹・娑羅双樹、メソポタミアの生命の木、アッティスとキュベレーの神話など、とあり。
生命の樹のほうには、・・旧約聖書「創世記」からカバラ哲学・セフィロトの樹・・だそうだ。

ここで用字、漢字表記に「木と「樹」の使い分けがあるが、決められているのかどうか?(続きます。→生命の木と生命の樹
また、楽園のイブ(エヴァ)の葉の衣については、イチジクの葉から、別に、キリスト教美術方面?

me思うに、母なる豊饒の木・果樹と不死の木・常緑樹の系統
を分けて考えるのもよさそです(20180219)
矢印常緑樹

 

ペイズリー文様

杉浦康平の「生命樹・花宇宙 万物照応劇場)」
ペイズリー模様も生命樹から, という話がこちらにありました。

「ペイズリー文様 は、古代ペルシアからインドにかけてイスラム文化の広がりともに普及した。 「生命樹」のもう一つの姿である」

生命の木の美術
J. Bosch The Garden of Earthly Delights (detail 2)
By Jheronimus Bosch (ca. 1450-1516) , via Wikimedia Commons

me クリムトもそうですが、ボッシュも興味深い。
マンフレート ルルカー著 「シンボルとしての樹木―ボッスを例として」 (叢書・ウニベルシタス1994)
矢印生命の木の絵画

ダーウィンの生命の木

ダーウィンの生命の木

最初の使用 チャールズダーウィン 、
その後、進化の過程で生きとし生けるものすべての相互関係を記述する図に。 Wikipedia

(詩)「木の戦い」

me 6世紀の詩人、ケルトのタリエシンTaliesinの詩を約した ロバート・グレイブスの「The Battle of the Trees」も興味深い

矢印「白い女神」

(日本の民俗学)「楠」

me 法政大学出版局の「ものと人間の文化史」シリーズに、日本の樹木信仰の研究として、『楠』の巻がありました。
矢野憲一・矢野高陽(父子 伊勢の神主)著 2010年刊
以下、「はじめに」と最終章から少々抜粋要約付記

目次
はじめに 楠の木学問
   第一章 クス・くす・楠・樟
   第二章 文学や歴史にあらわれた楠
   第三章 民話や昔話の楠の木
   第四章 クスノキの利用 
第五章 楠の文化史 
  第六章 楠の雑学・民俗学
   第七章 楠の巨木に誘われて
   第八章 樹木の信仰と自然保護
    付録 日本のクスノキの巨樹
 参考文献
 あとがき
 

内容紹介〔文化史・植物〕
語源と字源、分布と繁殖、文学や美術における楠から医薬品としての利用、キューピー人げ陽や樟脳の船まで、楠と人間の関わりの歴史を辿りつつ自然保護の問題に及ぶ。

 

はじめに 楠の木学問
「楠の木学問と梅の木学問」クスノキは成長が遅いが着実に大木になる処から、進歩は遅くても堅実に成長している学問。それに比べてウメの木は、初め成長は早く華やかだけれども、結局は大木にならないという意味。

第八章 樹木の信仰と自然保護
世界各地に分布している樹木信仰として「宇宙軸」の思想がある(『宇宙軸・神話・歴史記述』(イワーノフとトポローフ著)(矢印
「宇宙軸」「世界樹」「生命の木」
樹木により様々な世界観を表現することができる
その世界観が信仰となり、表現方法の一つである樹木自体が信仰の対象となっていく(p287)

「聖樹」・・ 巨樹や美樹、老樹
宗教や民族、地域などの違いにより特定種の樹木が崇拝対象となる例が多い
・イスラム教:オリーブの木
・仏教:菩提樹
・ゴール人:オーク
・インド人:バニヤンと呼ばれるイチジク
・シベリア原住民:カラマツ
・北欧:トネリコ

問 「日本の聖樹はなんですか?」
答 「榊、杉、檜、楠、梅、松・・」=特定種の樹木に限定されていない
すべての樹木を同等に崇拝する(アニミズムに近い神道の影響)

日本における聖樹 神木(p291)
古来神社における樹木は神籬(ひもろぎ)の役割を持っており、高天原より神々が降りる依代であった。
現在の神社祭祀では榊(サカキ)の枝が神籬として用いられることが多いが、古くは境内などにある樹木そのものが神籬として用いられた。

橘守部『鐘の響き』(国語辞書)
「この語の本義は生諸樹(オヒモロギ)のオの省かれたるにて、(中略)生茂れる樹ぞ即神の御柱なりつればなり」

日本人の樹木に対する愛着 
日本最古の造園書廃案時代中頃の『作庭記』
 住居の四方に木を植えることは四神の戒めの地とすること(道教の影響)
木を建材とする(他の古代文明が石の文明であるのに対し、木の文明)
伊勢神宮の式年遷宮は二十年というサイクルで常若の建築として永続性を持たせている
西岡常一:樹木というものは建材として利用した場合、その樹木の樹齢、もしくはそれ以上の年月にも耐えることができる
・・世界最古の木造建築、法隆寺の太い柱の木材は樹齢二千年以上、直径2.5メートル以上の巨木を用い、その木材を木の芯中より四つに縦割りしたものを使っている
(法隆寺の造営当時の建築技術と木に関する知識の驚くべき高さ)

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