樹下動物文
聖樹と獅子
「ヨーロッパの文様事典」の解説
中央に生命の木があり、その脇に獅子がいる図は
樹下動物文の代表的な一つで
西アジア地域に紀元前数千年より伝わる
聖樹はその樹液によっ動物に恵みをもたらす
命の木であることを象徴した文様である
古代ペルシアでは
天空には恵みの雨を降らせる深海があり
その海中には聖なる樹(ハマオ)が成育しその木からは
不死の霊薬が作られるという伝承がある。
そこで
聖樹を中心に動物が左右対称に置かれる構成は
ササン朝ペルシアの重要な文様になりひろまった。
その木の下は聖地や楽園を意味し
動物たちは清められ祝福されることを表している
また聖樹は単独では生命の樹として
使われ、イスラム美術の文様で重要なモチィーフになる。
ササン朝ペルシア
聖樹文銀皿
(ササン朝ペルシア
エルミタージュ美術館)
ササン朝ペルシアの銀皿には
乳を出す母と聖樹と同一視して
その両脇に乳で養われる子獅子が置かれる
735年ごろ
デオドータの石棺
(北イタリア パヴィア市立美術館=ヴィスコンテーオ城(Castello Visconteo))
西アジアの影響を受けた
北イタリアのランバルド族の石棺彫刻
有翼獅子は舌を出して生命の樹から養分を受けている
聖樹
キリスト教の象徴への変化
この西アジアの聖樹信仰は
キリスト教では
最も恐ろしい動物でさえ聖なるものの前では
従順であるという解釈で使われた。
獅子は舌を出して聖樹をなめ
それによって生命を得ている。
聖樹=神(キリスト)
獅子=信徒の関係を示す図像として取り上げられた。
8世紀中期
聖アウグスティヌスの旧約七書
パリ 国立図書館
10~11世紀
生命の木と獅子の石彫り
(アテネ ビザンティン美術館)
11~12世紀
ギリシア コリントス美術館
14~15世紀
獅子文様錦絹
スペイン製 リヨン織物美術館
染め織り文様の図案にも用いられた
西方への伝播
聖樹の意匠は西洋でも盛んに用いられ
聖樹の下に動物が集うキリスト教の楽園のイメージが形成された
遺されている文物
(調べています)
聖樹と羊
この絵の羊はキリストです
羊についてhttps://flora.karakusamon.com/hituji.html
(このページは 2004/11/19初UPしました)