葡萄 象徴・文様・文化
「西洋シンボル事典―キリスト教美術の記号とイメージ」
ゲルト ハインツ=モーア , Gerd Heinz‐Mohr (著), 野村 太郎 、内田 俊一 (訳) (八坂書房 2003刊)
葡萄の項だては
「ぶどう酒、ぶどう摘み、ぶどうの木、ぶどうの房」
以下、図を検索しながら、抜き書き読み
この本の葡萄の表記は「ぶどう」
「西洋シンボル事典―キリスト教美術の記号とイメージ」
ゲルト ハインツ=モーア
ぶどうの木は複雑な象徴主義に陥りがちなロマネスク美術よりも、初期キリスト教美術、ゴシック美術において頻繁に用いられる。
ぶどうの木があらわす象徴は聖書の慣用ではまず、あらゆる果実同様、祝福であり、呪いである。
また、平穏、安全を意味する財産、迫りくる審判を象徴する。
さらに ぶどうの木は イスラエルの民の象徴
ぶどうの木の下で働く者(ぶどう作り、ぶどう摘み、ぶどう搾り)はさまざまなたとえ話に登場する
美術、イコンにおいて特に好んで主題として選ばれるのは、イエスが自らをぶどうの木(生命の木)に例えた言葉である。
この葡萄の木には使徒たちが座っていることもまれではない。(それゆえエッサイの木(*)とも関連性がある)
この木が十字架の形で描かれることも多く、生命の木、十字架の象徴も含んでいる。
しばしばエロースによって行われるぶどうの収穫は最後の審判を暗示するものである。
フランス、ドイツのぶどう栽培地域では守護聖人としてランブルの聖ウルバーヌスの彫像が好んで置かれる。
ぶどうの木 6世紀の柱と柱頭
サン・マルコ(ヴェネツィア) 524‐527
San Marc Pilastri Acritani
Pilastri Acritani in front of the South portal of San Marco basilica in Venice : they are spolia from the St Polyeuktos church in Constantinople (6th c.)
Ravensburg St Christina Hl Urban 聖ウルバヌス
「西洋シンボル事典―キリスト教美術の記号とイメージ」
1.ぶどう園の悪い農夫についてのたとえ話・・選ばれた民イスラエルの忘恩を表す
2.ぶどう園の労働者たちについてのたとえ話・・人間をその功績によって判断したい神の善良さ
ビザンティンの図像表現では、1日のさまざまな時間に雇われた労働者がさまざまな族長や聖人に結びつけられている
ベネデット・アンテーラミ(Benedetto Antelami)のレリーフは、これらの一日の時間は人間の一生と世界の年代を表したものであることを暗示している
6つのレリーフ「慈悲の行い」を描いた作品群1196年パルマの洗礼堂西口扉口
Photo(I, Sailko [GFDL (https://www.gnu.org/copyleft/fdl.html) o CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)], attraverso Wikimedia Commons)
Benedetto Antelami(1150?~1230?)
パルマの洗礼堂(イタリア)、西の門 慈悲の作品(wikimedia)
パルマの洗礼堂、西の入り口 男の年齢
Cilco dei mesi del battistero di parma, 09 settembre, bilancia
9月
12ヶ月の擬人像と冬と春の擬人像については
「労働」や「恵み」への感謝の表現
(公式サイト)https://www.piazzaduomoparma.com/
https://art.pro.tok2.com/R/Rembrandt/vv067.htm
ぶどう畑の労働者のたとえ オランダのレンブラント派画
1637 エルミタージュ美術館蔵
「西洋シンボル事典―キリスト教美術の記号とイメージ」
ゲルト ハインツ=モーア
ロマネスク美術においては、特にアプシスの柱頭の上で、しばしば跪いてほほえんでいる若い人々の手の中にブドウの房がある場合は、楽園の至福の時を楽しむ選ばれた人々を意味する。
12‐18世紀には、カンナの地から戻った斥候が2人がかりで運ばねばならなかったほどの大きなブドウの房がしばしば表現されている
ぶどうの房は予型論上は十字架を担うキリストと結びつけられることが多い。
それはキリストが十字架で流した血が教会の杯を満たしたという意味で、汁を搾られるぶどうに似ているからである
さらにぶどうがぶどう酒になる前に切り取られ、圧搾されることは、この世の苦しみと死に対応していると同時に、より高い生命への意向を示している
この意味でブドウの房と葡萄酒は穀物だねとパンとの関係に似ており、生産におけるキリストを示す象徴として用いられるようになった。(p270)
大理石石棺 6世紀後半 トゥルーズのオーギュスタン美術館(※)
「西洋シンボル事典―キリスト教美術の記号とイメージ」
ゲルト ハインツ=モーア
パレスチナの重要な特産物であり、またそれを飲む楽しみは、聖書や聖書が基にしているイスラエルの民衆の生活の中で重要な役割をはたしている
ぶどう酒という語は聖書の中に200回以上、ぶどうの山という語は100回以上用いられている(ぶどう酒とほかの語との合成語をのぞいた数)
ぶどう酒は革袋や甕の中に入れて保存される
祭や供犠においては絶対に欠かせないもの
ノアがぶどうを栽培し、ぶどう酒を飲んで酩酊したという話は酔って自制を失うことに対する警告、ノアの息子ハブの行動は、後に兵卒たちがイエスに加えた暴行と同様、不敬の念を象徴している
ぶどう酒をキリストの地とする考え方は旧約聖書における生贄に代わるものとして生まれた
カナの婚礼におけるぶどう酒の奇蹟は、しばしば美術の主題とされるが、そこではイエスの栄光が啓示されている
泥酔したノア ミケランジェロ システィナ礼拝堂天井画
https://art.hix05.com/Michelangelo/Sistina/09.drunk.html
by壺齋散人さん
カナの婚礼 ルーブル美術館
https://www.louvre.fr/jp/oeuvre-notices/
キリスト教は「わからない」が、サンマルコの6世紀の柱を見ると、この聖堂は非常に魅力的だ。
パルマ聖堂の ベネデット・アンテーラミのレリーフも人のからまる唐草で、見飽きない・・
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