唐草図鑑

ペルシア美術

ササン朝の生命の木

Taq-e Bostan - tree of life

Taq-e Bostanの生命の木

meTaq-e Bostanの正面壁の飛天像の 下のアーチの支柱部分・・にある、高さ3.6メートルの「生命の樹」(残念ながら葡萄の葉とは言い難い・・アカンサス状の葉をつけた木。)


ペルシア美術史 」(深井 晋司・ 田辺 勝美 著、吉川弘文館 (1983/01) 刊)のp134

タ―ク・イ・ブスターン大洞のアーチ支柱の、左右対称聖樹は、非現実的な葉や花が認められる。生命と不老不死のシンボル=ハオマHaomaあるいはガオケレナGaokerenaの樹とみなす見解もある。またはサエーナ(種々の薬草や食用植物の種子を創造する ビシュポータオクマVishpotaokhma)樹ともいわれる。

■WEBにある論考も参照:ターク・イ・ブスターンの摩崖浮彫図像解釈学的試論(田辺勝美)

※(ハオマ、ガオケレナ、サエーナ?)ハオマ考に続く。


IR04-08-27a
Detail of a winged figure on the entrance of the main grotto
at Taq-e Bostan
(By Philippe Chavin (Own work), via Wikimedia Commons)
p134「有翼の飛天は、右手にフヴァルナーを持ち、左手に葡萄ないし真珠を盛った金属製碗を持っている」
「アーチの迫石部分にはチューリップなどの植物文やヴァ-レガン鳥の羽根が描写され、更に両端からは大きなディアデム(リボン)が翻っている」
ササン朝時代摩崖浮彫の写真測量(1976年東大)

me 非常に装飾的に見える・・
また、コルヌコピアのように見える大きなリボンである。※リボンというよりマフラーのような太さに見えるが、天使が王の頭部にかけようとしている・・こちらの図参照(en.)王の頭部から翻っている
また、「葡萄ないし真珠」についてだが、真珠が出てくる意味(必然性)がわからなかったのだが、下記論考に「ソロアスター教の象徴」とあり。(田辺勝美)
(※イメージシンボル事典には、真珠はアレクサンダー大王がペルシア、インドから地中海に持ちかえったもの、とあり)
「フヴァルナー」について、巻尺であるという説が、私には親しいのだが・・ディアデムなどについて詳しくはこちらに続く
ここでは、Taq-e Bostanの浮彫の植物文について


me縦に、チューリップの花と葉(パルメット?)が、交互にある文様の下に、横にまっすぐなアカンサスの葉が鱗状に続いているようだ。
「ヴァーレガン鳥の羽根」とあるのは、不明・・(?)・・検索中・・



meTaq-e Bostanの7世紀前半の作品というが、「衣服の装飾文様や武具の細部を克明に描写する、装飾主義や真実主義verismが看守される」とある。帝王騎馬像浮彫の、上着にはシームルグと、あの、宝相華文だという。(「阿修羅のジュエリー」参照)

ターク・イ・ブスターンの摩崖浮彫図像解釈学的試論(田辺勝美)の方に

 最上段には矢狭間(オールムズド神の象徴)を設け、その下方に一対のニケ女神(ゾロアスター教ではフウァニンド女神)を配す。
アーチは植物文で縁取り、その中央に三日月を置く。
アーチの下部は一対の空想的な植物文(アカンサスの葉の変形)で装飾されているが、恐らくオリエントの代表的なモティーフ「生命の樹」であろう。


ニケ女神の手には真珠(フウァルナーの象徴)を盛った台付き碗とリボンで飾った環(ディアデム)がある。


アーチの内枠の部分にはパルメット文とチューリップの花を連続的にほどこしている。


同論考にあるアーチのチューリップ文[Domyo 1984, fig.55-1より]
Domyo, M. 1984. Royal boar-hunting of the left wall-(2) Costume and Textile designs. In: Fukai, Sh. et al. Eds., Taq-i Bustan, vol. IV, pp. 99-134. Tokyo: University of Tokyo.

※ (ターク・イ・ブスターン大洞の彫刻に描写された「チューリップ」の形式から作成年代について論じておられる)

Taq-e Bostan - equestrian statue
重装騎馬人物(奥壁下段): Relief Taq-e Bostan (Kermanshah Province in Iran)
from the era of Sassanid Empire: One of the oldest depictions of a cataphract.

馬の鞍敷には怪鳥セーンムルウ(Senmurv)が織りだされているが、この怪鳥は英雄や王を守護する役割を与えられていた(グリフィンに相当)。

[挿図11]セーンムルウ、馬の腹部by上記論考
Wikimediaの同部分 ではわかりません(o|o)

meこの大洞の、帝王の馬印シーグルム(セーンムルウ)・・・
シーグルムの意味するもののつづきはこちらで、ハオマの樹(王権神授の図)



アッシリア式のジグラット型矢狭間(オールムズド神の象徴)(by田辺勝美)・・というものはこれ・・・

※オールムズド :オフルマズド (Ohrmazd)
ゾロアスター教におけるアフラ・マズダの別名 (ゾロアスター教、マニ教の最高神。)
アフラとアスラ(阿修羅)は語源的に同一
飛天・・ギリシヤ系のニケ女神や、豊穣の女神テゥケをモデルにしたもの
※ニケ女神(ゾロアスター教ではフウァニンド女神)
ゾロアスター教の方は、不明・・ 


東西美術交流史にとって貴重な資料となっている

帝王狩猟図、 つづきはこちらで、(王権神授の図)

重装騎馬人物(奥壁下段)の背景の文様



アルダシール2世叙任式摩崖浮彫 2×4.5メートル
中央に帝王、左にミスラ神 右にオールムズド神

城壁冠(オールムズド神の冠)
ミスラ神の職能: 「契約履行の監視」
(p132) ミスラ神は旭光式の頭光で荘厳され、台座は、仏教美術ないしグプタ美術に描写された蓮華座を想起せしめる

・・とあるが、確かに、 右は「ローマ皇帝らしき人物の死体」を踏んでいるが、左のミスラ神はハスのような「花」を踏んでいる。

meケルマーンシャ―市郊外のTaq-e Bostanの浮き彫り図像は・・こういったところであろうか・・・
■イランのイコノグラフィーのサイトがありましたので、とりあえず出しておきます。
http://www.iranicaonline.org/articles/farr-ii-iconography



Tutankhamun and his wife B. C. 1330
By Scan by Pataki Márt

meこのツタンカーメンと妻の図像のマフラーのような形のものが、ペルシアのアルダシール2世叙任式摩崖浮彫の「リボン」と同じように見える・・・
下の垂れの部分(?)であろうか?


Photo by Jon-Bodsworth

ペルシア美術史p148
ササン王朝で独自の形態を生み出したとして挙げられているものに 八曲長杯・十二曲長杯(酒杯)
異常の器形・・ ローマ貝殻型容器起源説

ペルシア美術史 」(深井 晋司・ 田辺 勝美 著、吉川弘文館 (1983/01) 刊)p1

東洋美術の流れには三大潮流。
中国の美術、 インドの美術は縦糸、 ペルシア美術は緯糸。


meこの本で取り上げられている図像のうち、比較的あたらしくよく知られた:ペルセポリスやササン朝の:部分を見てきました。
以下の部分・・


ペルシア美術史 」(深井 晋司・ 田辺 勝美 著、吉川弘文館 (1983/01) 刊)の巻頭にある図版
帝王と牡牛の闘争図 ペルセポリス
ペルセポリス俯瞰図
万国の門、ペルセポリス
百柱の間の側柱、ペルセポリスHall of hundred columns
クセルクセス1世銘金製杯、伝エクバターナ出土、B.C.5世紀頃 テヘラン国立考古美術館蔵
乳白色、ロータス文切子装飾瑠璃碗、伝アナトリア、出土B.C.5~4世紀
パルティア貴人像、青銅、高さ1.9m,シャミー出土、テヘラン国立考古美術館蔵
銀製ヘラクレス立蔵、伝ネハーヴァンド出土、B.C.1世紀頃

国王騎馬戦闘図浮彫、タング・イ・サルワーク、長さ2.4m
アルダシール1世騎馬叙任式図摩崖浮彫、ナクシュ・イ・ルスタム、4.2×6.7m
シャープール1世騎馬戦勝図摩崖浮彫 ナクシュ・イ・ルスタム、7×15m
帝王(シャープール3世)豹狩文装飾銀製皿、クリモヴァ出土、4世紀後半、直径22cm 、エルミタージュ美術館蔵
帝王猪狩図浮彫、タ―ク・イ・ブスターン大洞左壁
帝王叙任式図、帝王騎馬像、タ―ク・イ・ブスターン大洞奥壁、高さ8.7m

p167  (最終頁)
グリフィン連珠文錦断片、パリ、装飾美術館臓

連珠文、葡萄唐草文、連続ハート文で縁どられた円形、楕円形などの構図を得意とし、「知王狩猟文」と共にペルシア・モードとして東西両洋の文化へ伝播した。


Persepolis 5

meこの写真は凄い。


ペルセポリスhttp://es.wikipedia.org/wiki/Pers%C3%A9polis
ペルセポリス(Persepolis)はアケメネス朝ペルシア帝国の都


Persian objects (From Persepolis) at Louvre Museum in Paris, July 2006 Photo by Pejman Akbarzadeh (Persian Dutch Network)

me出土が新しい・・、この本には[未知の世界とある]その他の「ペルシア美術」の図像はこちらに続きます。


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