葡萄唐草文の文化史
葡萄唐草文の文化史は、ギリシアからローマ、そして西アジアの考察へ・・
抜き書き、図像検索しつつ、再読中。Thu, 2012-02-02
上はライオンを抱っこしているアッシュールバニパル王。@サンフランシスコだそうだ。ギルガメッシュのようだ。このようなものは見られましたが、第18図のライオンと葡萄の樹は『アッシリア大文明展』図録によるものだそうで、探してみたが、WEBには図がないようなのでヤフオクで購入予定。
(https://mphot.exblog.jp/6262525/ こちらの方のブログの「庭園の雌ライオン」なのだが、
ライオンは実は葡萄の木の下にいる)
ライオンを捕獲したギルガメシュのレリーフ (ルーブル美術館)(Wikipedia) |
補足 「ギルガメッシュ叙事詩」 発見年:1849年 発見場所:ニネヴェのアッシュールバニパルの図書館 発見者:オースティン・ヘンリー・レヤード (ニムルド発掘⇒大英博物館のアッシリア関連のコレクション) |
西アジア―具体的にはイラン・イラクなど
(p70)西アジアではすでに新石器時代の遺跡より葡萄の種が出土している・麦の栽培や牧畜と共にブドウが栽培されていた
p72 第18図 紀元前7世紀「猟苑図」ニネヴァ出土 大英博物館蔵
p72 第19図Ashur-bani-palアシュールバニパル王と王妃の饗宴 (紀元前7世紀 ニネヴァ出土 大英博物館蔵)
(p73)枝がまだ直線的。葡萄の実や葉が先端部についていなければ葡萄の木とは断定しにくい。おそらく西アジアにおいて葡萄の木が唐草文風に表現されるのは、ギリシア、ローマの葡萄唐草文の表現が入ってからであろう
この図では敵の王の首であるはずのものが、ちょっとよくわからない。
「紀元前662年にはエラム王テウマンと戦ってこれを破り、エラムを属国とした。テウマンの首は、祝宴の席で庭の木に吊るされたという」(Wikipedia)
「ちょと見には鳥やバッタがいる静かな庭園で王家の饗宴が行われているように見える。
王は武器を卓の上に置き、葡萄樹の下のソファーにもたれている。ソファーには踊る獅子の絵が描かれている。」(クリックで拡大するが、ここはよくわからない)
「王妃は城壁冠をかぶり、左手には花を、右手には杯を持って2人は
ワインを飲んでいる。
両側には香炉が立っているが、これは、匂い消しのためであろう、というのは、ハーブ奏者のそばの木に人間の生首がかけられているからである。これはエラム王テウンマンで、彼はテイル・トゥ-バの戦いThe battle of Til-Tubaで敗れたのである。エラムの高官たちは給仕の仕事を強いられている。」
安楽椅子を使った饗宴図としては年代の最も古いもの、という説明。
p75 第20図 葡萄唐草文浮彫り(2~3世紀ハトラ出土)
イラク北部
葡萄の実や葉が写実的に表現されローマの影響がみられる。唐草文の間に見られる楽人はまた間にブドウの葉のついた冠をかぶりディオニュソスの祭りの音楽を演奏している
p75 第21図 生命の木と山羊 クテシフォン出土
(3~7世紀 ベルリン・ダーレム博物館蔵)
生命の木と動物の文様は、正倉院宝物の屏風や織物などに装飾され我が国にも伝わっている
ササン朝ペルシアの王宮には、駝鳥、山羊、驢馬、孔雀、獅子などを飼っている猟園がある
持ち運びが容易であったので、ササン朝の版図以外にも交易品ないし贈り物として運ばれ、中国からも出土している。
植物文様の柱の上に葡萄唐草文のアーチがつき、その中にいわゆるアナ―ヒタ―女神(*1)あるいはダエーナー(死者の霊魂ないしゾロアスター教の化身)(*2)とされる女性が立っていて、犬・鳥・蓮華などを持っている。左肩の上にはライオン、左足の下には鳥。
底部にはスィーモルグ(*3)という想像上の霊鳥がメダイヨンの中に入り、その上下にライオンの首
アナ―ヒタ―女神は水と豊穣、戦勝の女神、ゾロアスター教徒に崇拝された。(ササン王系の先祖はその女神の神官であったといわれる)
全体の形 「Barbaroi!」のサイト掲載
もこの壺と思ったが、背面か?持っているものが違う、その後⇒この壺には4体描かれているそうだ・・アナーヒター女神
*1 アナ―ヒタ―WikipediaAnahita
*2 「ダエナー」は不明。ぺリエの将来した敦煌文書にも描かれているとあるが(?)
*3 Simurgh
p81 第23図葡萄唐草文銀壺(5世紀 大英博物館蔵)
O.M.ドールトン著『オクサス遺宝』所収の図
2本の葡萄の木が唐草文状に枝を広げ、その間にブドウ収穫の人物、バスケットに山盛りに入った実が配置され、一本の葡萄の木の下に鸚鵡、他の木の下に孔雀、上にジャッカルとこ取りを表した図から。
図柄は、前述の
アレクサンドリアなどに用いられたものと同じ
p83 第24図 葡萄唐草文銀皿(6~7世紀サックラー美術館蔵)
A.C.Gunter,P.Jett,Ancient Iranian Metalwork による
p85 第25図 葡萄唐草文盤(6~7世紀サックラー美術館蔵)
A.C.Gunter,P.Jett,Ancient Iranian Metalwork による
中央に孔雀のような鳥を入れたメダイヨンがあり、その上を下にブドウの木が両手を広げたようにスクロールしていて、その先端に葡萄の葉・実がついている。上と下の葡萄の木の間には動物が左(犬)と右(ジャッカル)にいて葡萄の実を食べている。
また、メトロポリタン美術館蔵の葡萄唐草文銀は地(7世紀)にの文様は、中央にライオンを配し、その周囲にメダイヨン状に葡萄唐草文を巡らせ、葡萄の枝が分かれる部分に巣にこもる二羽の鳥を配している。・・・
どの容器にも葡萄が生命の樹として象徴的に描かれ、左右に動物や鳥を配置する図柄が用いられている。
このような文様は古代西アジアの樹木信仰から起こり、メソポタミアにおいて、初期王朝時代以降の円筒印章や彩文土器の文様に用いられている。
ササン朝時代になると、古くからこの地域に伝わる伝統的な角の大きな羊、山羊の他にジャッカル、ライオン、犬などの動物を使用するようになった。
ただし
鳥は、孔雀、尾の長い鳥、鸚鵡などに限られる
サマッラーは9世紀にアッバス朝の首都が置かれた都市であり、宮殿址や寺院址が発掘されている。
太いアカンサス唐草の幹に葡萄をつけたもので、全時代のササン朝の葡萄唐草文とは異なっている。
ヴァチカン美術館にあるコンスタンティンの石棺(✳)に見られる葡萄唐草文と類似していて、アカンサス唐草文の本体に葡萄の実や葉をつけた唐草文。
むしろ初期キリスト教文化の葡萄唐草文と似ている。
人物像はいかにもペルシア風の豊満な女性が座っている姿その他にジャッカルを押さえつけている鷲、その左に鷲と鹿、右に兎をとらえているジャッカルを配した
これらの図柄の鷲は、
古代メソポタミアやイランでは天空を支配するものとして、太陽・富・栄光・世界の王者など、王権のイデオロギーを象徴するもの
鷲が動物を襲う図はユーラシアにおいて冠の飾りとして各地で用いられている。
葡萄唐草文の中に狩猟する王者を描写することによって豊穣の観念を表象している