イラン高原 先史時代 テぺ・シアルク
(深井晋司(Wikipedia)編『デザイン誕生 古代オリエントの文様 』光村推古書院 1981.11)P250~255 要旨
西アジアは、コムギ・オオムギ・マメの栽培耕作と
ヤギ・ヒツジ・ウシの家畜飼養の起源地
このような生産経済の初歩的段階=新石器時代と通称する
西アジアの場合、更に先土器新石器時代と土器新石器時代に区分される
彩文土器は、後者の編年的考察の標準遺物
農耕・牧畜研究の一方法論として成立しうるかどうかの試論(その後20年後の下記著書へ)
(粘土板文書は)ヤギ・ヒツジ・ウシなどの馴化・家畜化は文字の出現前(いわゆる先史時代)に成立しているので、家畜化過程を考察するのに意味をなさない
随伴遺物(犂・車輪、轡・鐙・杏葉・辻金具など)は、役獣・荷役獣として機能し始めてから製作されたものなので、肉を目的とする段階の家畜には随伴しない
最後に注目されるのが彩文土器の文様による推論
文様にそれだけの正確さと意味を期待しうるかどうか
ヤギ文
同一遺跡の、同一時代の、類似した器型の、類似した文様帯
亜種のレベルまで識別が及んでいる
(図1べゾアール種ヤギ 図2 マルコール種ヤギ テぺ・シアルク3期)
紀元前 5000年ごろにおけるマッコール種ヤギの存在を認められる(図3)
不思議なことに彩文土器の中に農耕文化の姿を見ることは稀
彩文土器の文様は 幾何学文が代表であり、動物文がこれに続く。
植物文も散見されるが、それは樹木であることが多い。
文様が一定の偏りを示すということ、周囲の生活を無作為に描いたわけではないということ
禾穀類が文様化されない理由は・・
穀物と家畜は共に食物には違いないが、精神的には同一の位置づけをされない
農耕を一定の像として具象化したものは、唯一、地母神像
地母神像の特異性の一つは、農耕の対象物は具象化されず。その源である大地の方が精神性を付与され具象化されているという点にある
彩文土器は
動物文を通じて家畜化過程進展の人文科学的側面を示してくれ、
逆に穀物文の欠如によって農耕の精神的な
特異性を暗示してくれる
『ムギとヒツジの考古学』 (世界の考古学) 藤井 純夫 (同成社 2001/9)
Amazonに農耕起源を考える必読書とあり
テル・ハッスーナ4~6層(紀元前5000年頃)(Tell Hassuna)
数少ない資料
イラクのラス・アル・アミヤ遺跡(紀元前4500年ごろ)
彩文土器長嘴形注口把手付水差 ウマ文様 前9~8世紀 土器 イラン テぺ・シアルク出土 東京 中近東文化センター蔵
彩文土器台付深鉢 ヤギ文様 前3200年頃 土器 イラン テぺ・シアルク出土 東京 中近東文化センター蔵
彩文土器壺 ヤギ文様 前3200年頃 土器 イラン テぺ・シアルク出土 ニューヨーク メトロポリタン蔵
彩文土器鉢 鳥人文様 前5000年紀後半~前4000年紀前半 土器 イラン タル・イ・バクーン出土
彩文土器の幾何学文は紀元前3000年以前のオリエントの文物へ
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