聖獣

黄道一二宮の星座

昨日の続きの近藤二郎著『星座神話の起源』
⇒2010年刊行の『わかってきた星座神話の起源-エジプト・ナイルの星座』『同-古代メソポタミアの星座』の2冊を再編し、1冊にまとめた決定版『星座の起源: 古代エジプト・メソポタミアにたどる星座の歴史』が 誠文堂新光社 より新刊となった。(2021/1/20)

古代メソポタミア編(目次)
序章 古代メソポタミア天文学の世界
第1章 天文学発祥の地メソポタミア
第2章 黄道一二宮の星座
第3章 北天の星座
第4章 南天の星座・黄道一二宮以外の星座
第5章 古代メソポタミアの天体観測
第6章 古代メソポタミアからギリシア、アラビアへ

第2章の「黄道一二宮の星座」であるが、

まず、「古代メソポタミアの星座の始まり」で、「カルデア人とは誰か」という話が(p046)

そう、

嗚呼カルデアに牧びとの
なれを見しより4千年
光はとはに若うして
世はかくまでに老いしかな。
(土井晩翠)

・・ですよね。

その話(ご研究)がhttp://www.kotenmon.com/str/hitsuji.htmありましたけど、

「野尻抱影氏はバビロニアの歴史観が定まらない時期の海外文献を参照されている」ということだ。

 

次の「みずがめ座、うお座、おひつじ座、おうし座」(p052)

「やぎ座、みずがめ座、うお座と続く冬(冬至のころ)から春(春分のころ)にかけてのメソポタミアの星座は、「水」との関連が強い(p053)

みずがめ座の原型と考えられる偉大なるものの図像
「収穫前の灌漑を意味しているともいわれる」

 

うお座の原型「尾」「つばめ」
「尾」と呼ばれる2匹の魚


解説(近藤二郎p054)「うお座の2匹の魚をつなぐロープは、
メソポタミア地方を象徴するチグリス川とユーフラテス川を表している」
巨大な四角形はバビロン市(耕作地):ペガススの大四辺形
右の魚はしばしばツバメとして描かれている

なぜツバメなのか?・・ということは書かれていないが、ツバメは
日本では、3月頃来る渡り鳥。季節感の指標

 

※この書に掲載の図は、ほぼ
Babylonian Star-Lore. an Illustrated Guide to the Star-Lore and Constellations of Ancient Babylonia
(ギャビン・ホワイト Gavin White著)からの引用であるが、

他に、ロナルド・ウォーレンフェルスRonald Wallenfels著からの図もあった。
Uruk:Hellenistic Seal Impressions
https://nyu.academia.edu/RonaldWallenfels

おひつじ座の原型「雇夫」(p056)

「雇夫」(男)と「羊」が同一視されている(発音が同じであるため)
雇夫はうお座の中央に位置する「野(耕地)」を耕すために存在する
黄道十二宮の最初にあたる星座

下の右メリ・シパク王のクドゥルに描かれた羊

麦の穂がある祭壇の前に座る羊
「麦の穂」は「アマル」と呼ばれる楔形文字記号で、矢羽根状になっている。

※https://www.karakusamon.com/orient/mugi.html

Melischipak kudurru sb22 mp3h9116
Description: Kudurru of king Meli-Shipak II (1186–1172 BC):(部分図wikipedia)
land grant to Marduk-apal-iddina I. Kassite period, taken to Susa in the 12th century BC as spoils of war.
Date from 1186 until 1172 BC ルーブル美術館所蔵

おうし座の原型 「聖なる天の牡牛」(p057)

星座としての図像は非常に数少ない(p059)

ふたご座、かに座、しし座(p059)

ふたご座の原型「大きな双子」

カストールとポルック
シュメール語でマシュタブバ・ガルガル
マシュ(双子/連れ/仲間)ガル(偉大な)
武器を手にした二人の武人


大きな双子(p 060 図2-20)

古代エジプト「セバウイ」(一対の星々)ヒエログリフの星(セバ)二つ
大きな双子に続く小さな双子(マシュタブバ・トゥルトゥル)

かに座と水との関係


起源税い2世紀のカニと三日月が表現されたスタンプ印章の図像
(ギャヴィン・ホワイト著より)近藤p061(図2-22)
シュメール語クシュ(水の生物)

エアンナ・シュム・イディナの境界石(紀元前12世紀)36㎝(p061)
大英博物館所蔵
https://commons.wikimedia.org/wiki/Category:Kudurru

しし座の原型「大きなライオン」
シュメール語 初期の文献ではムル・ウル・マク(星 「力強い肉食獣」)
その後 ムル・ウル・グ・ラ(偉大な肉食獣)
(両方、百獣の王ライオンも意味した)

Sculpted reliefs depicting Ashurbanipal, the last great Assyrian king, hunting lions, gypsum hall relief from the North Palace of Nineveh (Irak), c. 645-635 BC, British Museum (16722368932)
Ashurbanipal (在位:BC 668-627頃) が行った「ライオン狩り Royal Lion Hunts」
アッシュルバニパル王の「ライオン狩りのレリーフ」 (BC 645-635頃)(大英博物館所蔵)

王がライオンを倒すことには象徴的な意味があった。(p063)

占星術では王や王国の命運を握る星と考えられていた(p064)
検索:大英博物館の特別展「I am Ashurbanipal」https://art.japanesewriterinuk.com/

しし座とうみへび座の関係
しし座に踏まれている蛇

ライオンと蛇の関係

「デンデラの天体図」(前1世紀 ルーブル美術館所蔵)

 


拡大図 蛇の上に乗るライオン(近藤写真2-5 p066)

 

有翼の蛇の上に乗るライオンの図像(ウラク出土の後期の占星術を刻した粘土板 )


「デンデラの天体図にある図像とはライオンと蛇の向きが左右反転している。
この蛇は翼だけでなく、前足も描かれており、竜のように見える。」(近藤p067)

※ライオンと蛇というと・・一大テーマで見ていままでみてきた。
ライオン(=獅子)、ヘビ(=龍)
https://karakusamon.com/index_hebi.html

「この有翼で角と前足を持つヘビがどのような過程を経てうみへび座となったのであろうか」
(近藤P68)


メリ・シバク王のクドゥルに描かれた蛇には角が描かれている(前12世紀)

https://www.karakusamon.com/egypt/asklepios.htmlアスクレピオスの杖で
世界シンボル事典(ハンス・ビーダーマン著)の解説としては、以下であった。

原型は、シュメールおよびバビロニアの医神で冥府の神でもあるニンギッジドゥがもつ
2匹の蛇が巻きついた杖だとみなされている。
ニンギッジドゥは、角のある蛇を従えた姿で表現されることもあり、
ラガシュのグデア王(前2100ころ)の守護神でもあった。

今回「ニンギッジドウ」を検索したが何もない。
「角」の項目を見ると「(角は一般に力と攻撃性のシンボル、権勢や権力のシンボル」
「ラガシュ王Gudeaの守護神」をみると、ニンギルスNingirsu(Ninurta)wikipedia(en)とあり

シュメール初期に最初に崇拝された、農業、癒し、狩猟、法律、筆記者、戦争に関連する古代メソポタミアの神。初期の記録では、彼は農業と癒しの神であり、人間を病気と悪魔の力から解放します。

 

おとめ座、てんびん座、さそり座(p069)

おとめ座の原型「畝(うね)」と「葉」

畝(Furrow)
葉(Frond)


ライオンのしっぽを両手でつかんでいる女性が畝という星座を表わす。
その後ろで手に葉を持つ女性が葉という星座
この葉は「エルアの葉」と呼ばれる:ナツメヤシの葉
ナツマヤシは中近東では最も重要な果実
この二人の女性は統合されて一つの星座の知のおとめ座になっていった(p071)
秋の農耕と結びついている星座

おとめ座の原型と考えられる麦の穂を手にした女神もメソポタミアで作られた(p071)

 

さそり座から分かれたてんびん座


図-2-39 byギャビン・ホワイト@近藤(p073)
てんびん座はさそり座のハサミから作られた星座

 

 


図2-31 太陽神シャマシュと天秤を描いたアッカド朝時代のの円筒印章の図像
天秤とともにシャマシュ神の武器であるノコギリも表現されている。


図2-32  ロナルド・ウォレンフェルス著(近藤p073)
「大きな双子」とともに描かれた天秤

さそり座の原型(p075)

  • さそり座α星:アンタレス

「アンタレス(ギリシア語で「火星に対応するもの」)は、シュメールの母なる女神リシ(Lisi)と同一視されていた」

ここまで出てきた聖獣は


カニ
ライオン

サソリ

⇒第3章 キツネ 牝ヒツジ オオカミ ヒョウ(ライオン・グリフィン) 牝ヤギ イヌ

BOOOK

    1. 矢野道雄『星占いの文化交流史』勁草書房、2004
    2. H.J.アイゼンク・D.K.B.ナイアス共著、岩脇三良・浅川潔司共訳『占星術-科学か迷信か』誠信書房、1986
    3. ニコラス・キャンピオン著、鏡リュウジ監訳『世界史と西洋占星術』柏書房、2012
    4. 中山茂『占星術─その科学史上の位置─』朝日新聞社、1993


西洋占星術史 科学と魔術のあいだ (講談社学術文庫)


検索中に見つけた魅力的な図像

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北天の星座

2021年1月29日