唐草図鑑

唐草図鑑参考文献

世界を駆けめぐる意匠(2)

目次読書(詳細)



この章の初めのロータスつなぎ文(図.13)は花の側面形と蕾の他に正面形( ROSETTE DESIGN)も入っている。
探したが同様なものが見当たらないので宿題です。(ただいまのこれは、エジプトでよくある花の側面と蕾のもの



上記宿題の件探索結果ですが、Dover社の収集デザインでこんな感じでしょうか。

蓮の正面形というのが実に問題なのですね…

杳(はる)かなる記憶

立田洋司さんの「唐草文様 世界を駆けめぐる意匠」(講談社選書メチエ 1997年刊)ですが、10章ある中の、その第一章です。ページ数は30ページ、17段落、図版数は15。
まずもってこのあたりが、私の興味の中心。(=*ロータス文様 )段落というか、小見出しごとに、少しピックアップしてみます。

2009-07-24


杳(はる)かなる記憶


なかなかのくせもの

唐草はけっして純粋な植物文様ではない

造形物の新しい世界

“ 自然はそのまま、あるがままで、隙というものがない。ところが人間が何か「もの」を作り出すと、そこには自然の秩序からはずれた空白や空間ができる。そしてその「もの」が特定の意味を持つためには、そこで作られた空白や空間が、人知の支配を受けなければならない。
造形物に宿命的に付きまとうこの空間(空白、余白)は当初人間に未曾有の恐怖心や畏怖心を植え付けた。(いわゆる「空間恐怖」)”
図1.平面造形のプロセス

空間恐怖との戦い―先史時代の鉤十字


図2.サマラ土器の図柄

渦―アニマー巫術―情念

空間恐怖駆逐の主役=卍文…造形的な中心を定めることが鍵。
渦巻き… 心理的な中心部や求心力。…シャーマニズムの根源。空間恐怖とは別の怖さ。
シャーマニズム(巫術・呪術)やアニミズム(霊魂信仰)からの脱却も必須の問題

魔的なもの


渦文…シャーマニズム的・アニミズム的 シャーマニズムと渦巻きとの心理的連合
閉じていない形態=魔的なもの

恬淡たる昇華

空白の恐怖から肌出しても心に渦が残れば、シャーマニズムの残像が消えない

縛りと絡み―唐草への布石

卍文を先史時代の空間恐怖との戦いの主役とする・・
「唐草文様が最初に地上に現れたころ、この古代鉤十字の息は、まだかすかに残っていた」(p11)
「渦と唐草の決定的な縁は、渦巻きの御し方、すなわち渦紋から呪術的要素を抜き取っていく過程に見られる人間の創意工夫が、そのまま唐草の発生問題につながってくる点にある」(p15)

渦巻き文様と唐草文様の切っても切れない因縁関係。
図3~5 渦文 台風を思わせるような渦巻き

「絡み渦連続文」のバラード

「二つ以上の渦は互いに巻き込まれることによってつながり合うことができる」という発見
⇒(紀元前2500年頃)キュクラデスやエジプト
図7.(右まき渦と左まき渦の結合⇒絡み渦連続文(=ヴィトルヴィアン・スクロール)へ) 図8.シュロス島出土の焼成土器「アリュバロス」(3~6センチの小瓶)の文様に見られる(グーランドリス・コレクション)
図9.金製の帯、4本と6本の渦が相互に絡む。(ミュケーナイ出土、アテネ国立考古学博物館)
図10.4種の絡み渦連続文… 走行渦文、
スキップ渦文あるいは舞踏渦文
嵌入渦文、
旋転渦文

「帰らざる線」―閉じた線は唐草的でない

呪縛を解く

植物文様の発生

図11.グラス型の杯(スーサ第1式)
麦の穂が山羊の角の弧の中に描かれている。
動物の角の大きく伸びやかな描写に比べ観念的
(紀元前3500年前後 ルーブル美術館蔵)
この杯は「ヨーロッパの文様辞典」山羊の項に収録されている。
(*前4000年紀前半 イランスーサ出土となっている)

(*同様の杯「ペルシャ文明展」 平成19年大阪歴史博物館Japan Design Net


装飾の初期における植物図柄の欠如
植物文様が動物文様より先に表れた例は発見されていない。
古代における動物存在の重要性やアニミズムとシャーマニズム的観念とのつながり、渦文と幾何学文との関連性が再指摘される。
植物文様の実質的な始原…エジプト湖王国時代にまで下る。
図.12(表)最古の植物文様は?
紀元前2000年ごろ

ロータスの意味するもの

古代文明に表れた植物文様の中で最も難解な意味を有しているのがロータス。
ロータス文様……蓮の生態⇒自然に対する崇拝や驚愕の念、恒久の生命の象徴といった内容を包み込む
古代エジプト人の蓮に対する思いがロータス文の精神的背景になっている 地理誌的背景がロータス文やパピュルス文などに転写されている。…風土的負荷

古代エジプトの限界

文様化に対する愛着や執念
図.13 ロータスつなぎ文 蓮の花の正面形と蕾をつないだ文様
硬くて規則的な配列に限定されている。

波濤を超えた蓮の花

古代エジプトにおけるロータス文様展開の特徴…完結性
エジプト文化の特質を担う
ロータスを介添えした幾何形態(ロータスの特殊性を覆い隠すように併用された幾何文) …「絡み渦連続文」が浮上
一般概念(絡み渦連続文という幾何形態)による特殊性(エジプトのロータス花)のカモフラージュ
図.14 ロータス充填絡み渦連続文 紀元前2100頃のエジプト 植物文と渦文とが組み合わされた文様として世界最古の文様
…=ロータス嵌入(かんにゅう)型渦文、他の文明世界に上陸
図.15 イオニア式柱頭右半分略図

波―「うねり」が加わる

蓮華(ロータス)が絡み渦連続文によって地中海の波濤を超えた
クレタ島やミュケーナイからの出土品に残る連続的な渦文
造形文化がシャーマニズムの呪縛から脱却し始める時点にさしかかり、 海を渡ってきたロータス嵌入の渦文も波のような柔軟性を備え持つことができた ⇒結果的に大きく変貌し新鮮な雰囲気を醸し出す= 文様における唐草的資質

源泉は、幾何形態にあり

植物図柄たるロータスの形をいろいろ操作してみても決して元の形態以上に唐草的にはならない
⇒唐草的資質の源泉は、幾何形態たる「絡み渦連続文」の方に存在している
唐草文は植物的文様ではあっても、動態的な性格を保有している


ロータスつなぎ文補遺


こちらはアッシリアのもので、松毬が…そしてギリシアは…


これらイメージはClipart ETCの作 ( the Educational Technology Clearinghouse

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