エリカ・ジーモン (著), 芳賀 京子 (翻訳), 藤田 俊子 (翻訳)
全世界にちらばる名だたる古代ギリシア陶器を集成し、182件378点の図版を収めて、ひとつひとつに詳細な解説と分析を付す。刊行以来ギリシア美術鑑賞を志すすべての読者に格好の道案内となり、様々な入門書やカタログの記述に影響を与えてきた「新しい古典」の全訳。(Amazon)
この本では、まず
、樹木神話関連で、ローレルの冠を被るアポロンを見ようと、 No.85 「アンドキデスの画家」 の 腹部アンフォラを見ました。
後期アルカイックのアッテイカ赤像式
(前525-前480)
この陶器に器形が似るものとして挙げられていたのが、ヴァチカンの超有名なエクセキアスのアンフォラ・・
以下、これを見ます。
No77 腹部アンフォラ
エクセキアス(ja.wikipedia)
→ゴンブリッジも挙げる厳選アッティカ陶器です。
※ greece/attika_pottery.html
amphora by Exekias, Achilles and Ajax engaged in a game, c. 540–530 BC
このモニュメンタルなアンフォラ(A型)には、器形にも装飾法にも特別なものは何もない。
だがエクセキアスは、この陶器の両面のパネル部で比類ない仕事をした。
彼はどちらでも、英雄と牧歌的世界という対照的主題を結びつけることに成功している。彼はこの点において、彼の偉大なる手本はホメロスだった。
Exekias, anfora con achille e aiace che giocano a dai, castore e polluce, da vulci, 540-30 ac ca.
A面 アキレウスとアイアスが暇つぶしにボードゲームに興じている。おそらくトロイアの野営地であろう。
2人とも固唾を呑んで角石を見つめてはいるが、呼集の用意はできている。
どちらも左手に長槍と投げ槍を持ち、脛当と腿当(すねあてとももあて)を着け、アキレウスはさらに豹の頭部で飾られた肩当も着ける。
アキレウスの盾にはサテュトスの仮面と豹が、アイアスのものにはゴルゴネイオンがついている。
アイアスは盾の上に兜を置いているが、アキレウスは兜を上にずらして被っている。
エクセキアスは刻線に特別神経を使った。アイアスの髪が額とうなじのところでしっかりした巻毛に縁取られているのに対し、アキレウスの髪はうなじの上にまとめられており(クロビュロス)、より丁寧に梳かしつけられているように見える。
正真正銘、刻線の名人芸と言えるのは、かっては白く輝いていた銅鎧と、繊細な文様がちりばめられていながら布地の特質も備えている両英雄のマントだ。
背中では銅鎧の縁がマントを通して盛り上がってさえいる。
賽は投げられアキレウスの目は4、アイアスは3だ。
2人のあいだには「4」(TEΣAPA) 、「3」(TPIA)の銘が記されている。
ゲームの勝者であるアキレウスは、運のないアイアスに肉体的にも勝っているように描かれている。
アイアスの背後には、エクセキアスの作品によく見られる、美しいオネトリデスへの賛美の辞。アキレウスの背後にはもう一度、エクセキアスの陶工としての署名がある。 (エクセキアスが画家と陶芸家の両方として署銘)
ギリシア美術の著名な歴史家であるジョン・ボードマンは、エクセキアスのスタイルを次のように説明しています。
彼は革新的な画家兼陶芸家であり、新しい形を試し、色を強調するために珊瑚の赤いスリップを使用するなど、珍しい絵画技法を考案しました。
ボードゲームをしているアイアスとアキレウスのエクセキアスの新しい描写は人気があり、その後の50年間で150回以上コピーされました。 (en.wikipedia)
John Boardman、 Athenian Black Figure Vases:A Handbook(London:Thames and Hudson、1974
B面も有名。故郷の両親レダとテュンダレオスのもとに帰る、カストルとポリュデウケス
What is the myth shown on side B of this vase ? •
Return of the Dioskouroi or the heavenly twins Castor and Polydeuces to the home of their parents King Tyndareus and Queen Leda of Sparta
.◇https://slidetodoc.com/
レダはギンバイカの枝をかざしながら、母親を振り返るカストルに花を差し出す。
みなが髪に冠を飾り、 レダが左手に木の枝を持っているが、これは他の多くの宗教儀式でもみられる。両親のもとへの息子たちの帰還は、同時に神々への感謝祭としても祝われているのだ。
ギンバイカ(ミルテ)Myrtel wreath
ギリシア・ローマ時代にはゲッケイジュとともに凱旋将兵の冠の材料にされ、
花嫁の花環にもされた。◇https://love-evergreen.com/zukan/
馬の後ろ脚の前にも美しいオネトリデスを賛美する銘がある。
Onetorides kalos-「Onetoridesは美しい」
κάλλος (kállos) - 「美」 (古典語ではカッロスと発音し、「美しい人/物」も意味する)
https://dic.nicovideo.jp/
「オネトリデス Onetorides:
エキセキアス Exekias の使用したカロス名(銘)である。」とこちらにあったが、◇http://www.imeyesgaro.com/Acropolis/01pages3/p238.html
・・「カロス銘」という意味が分からない。既に書いていましたが。
→greece/attika_pottery_3.html
「ギリシアの陶芸」wikipedia
不可解な銘としてカロス銘がある。
これは当時の有名な美男子の名を書いたもので、アテナイ上流社会の求愛儀礼の一部だったという説もあり、日用品とは思えない様々な陶器で見られる。最後に、abecedariaと呼ばれる銘はアルファベットを順に書いたものだが、主に黒絵式でしか見られない。
ヴァチカンの収蔵の凄さを思わせる一枚(wikimedia)↓下
Museo Gregoriano Etrusco
更に検索
◇http://www.imeyesgaro.com/06nagai-greek/
◇http://arthistoryresources.net/greek-art-archaeology-2016/archaic-BF-exekias-achilles.html
以下、ギンバイカの冠ということで、本書のNo181.盛期ケルチ様式のレべス・ガミコス(婚礼用鍋)をみる。
「マルシュアスの画家」(帰属)
ケルチ(古代のパンティカバイオン)出土
高さ46㎝
サンクトペテルブルク、国立エルミタージュ美術館 inv .15592
ギンバイカの冠・・wikimediaのエルミタージュ所蔵の陶器を見たが、この形の陶器は見当たらなかった・・
ここで脱線して冠考を。