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ロータス文様研究

蓮のイコノロジーを読む

仏教美術のイコノロジー―インドから日本まで
(宮治昭著 吉川弘文館 1999)

本の説明。(「BOOK」データベースより)
[豊穣なインドの大地に生まれ、中央アジア・シルクロードを経て、中国・日本へと伝わってきた仏教美術。その伝播と変容、展開の様相を風土・民族・歴史と関連付けながら、イコノロジー(図像解釈学)の方法によって読み解く。 ]


インド美術というと、イメージは・・カーマスートラとかタントラとかですけど、 宮治 昭さんによれば、それは「仏教文化東漸のモニュメント」…
聖樹信仰と仏教美術」という項目もあり ちょっとワクワク、久々にノートを取りたい
…以下明日~~的に、ゆっくり続けます

なお、この本の目次はこちら(20160428追加)


蓮のイコノロジー

p28
はじめに(…というところをピックアップ)
蓮と仏教美術

蓮はインド以来仏教美術と縁が深い装飾モティーフであるばかりか
仏像成立以前から 仏教美術の基底をなしているイメージ
「誕生」「生成」「光輝」「心(心臓)」「胎(子宮)」「宇宙」といったシンボリズムとかかわる

誕生と増殖…インドでの蓮

生命の花、増殖の花…豊穣多産の象徴性が強い (日常目にする蓮のイメージ)
ストゥーパ(仏塔)の象徴と装飾

表層レベルでは釈迦の死、仏教の理想郷涅槃の象徴
深層レベルでは宇宙的な始原、生命発生の母体を象徴
・・インド世界では後々の至るまで仏教の中心的礼拝対象
舎利=種子(ビージャ)
ストゥーパの覆鉢=胎(子宮ガルバ)または卵(アンダ)

仏教美術はストゥーパの装飾から起こっている。
門や玉垣の浮彫彫刻として本生図・仏殿図などの仏教説話図のほかに、ヤクシャ・ヤクシー、ナーガなどの豊穣多産の民間信仰の神々が守護神として取り入れられて、さらに動物・植物の多彩な装飾で埋められる。
とりわけ蓮のモティーフがこのまれる。それjは声明の母体としてのストーゥパシンボリズムと呼応している(p32)

図14 アマラーヴァーティ出土のストゥーバ図
図15 壺から出る蓮華蔓草(バールフト)

■アマラーヴァーティ:南インドの仏教遺跡: アマラバティは古代の重要な仏教の中心地
2000年前に立てられた、仏塔(草で覆われた円丘状の盛り土と石でできている)の遺跡が残っている)
■アマラーヴァーティのストゥーバの写真
インド仏跡編 (正法寺HP内) 南インド仏教遺跡旅行記(広済寺HP内)
大英博物館に展示あり

蓮の生命力と意匠


最初期のバールフトの欄盾浮彫(前2世紀末頃)
円形(半円形)区画に開蓮華を基本としながら 未敷蓮華、連弁、アカンサスの葉、鳥獣を組み入れ変化に富んだ意匠
中心からの放射状構図、円周の回転や旋回を示す運動性 太陽としての蓮の光輝と生命の動き、生命感の暗示
インドでは植物生命力は動物生命力より強く生死の循環を司っている
水から生ずる蓮のイメージ…インドでは誕生と生成の基本概念
満瓶(まんびょう プールナ・ガタ)と呼ばれる表現
バールフト、サーンチー、アマラヴァーティなどの初期仏教美術に頻出 豊穣・吉祥の象徴として後々まで愛される
例 クシャーン朝 マトゥラー出土ラクシュミー(吉祥天)立像
p34図16 マカラの口から発出する蓮華蔓草 サーンチー

■バールフトの欄楯(らんじゅん
カルカッタ・インド博物館(アジアの宗教美術と博物館!(写真:河合哲雄氏)「インド博物館を代表する展示物」
■「プールナ・ガタ」(満瓶)
インドの宗教にみる死のイメージ→リンク切れ
(金沢大学森雅秀教授サイト)
■ラクシュミー(吉祥天)(Wikipedia
All About日本画 山田真巳エッセイ
世界創造神のヴィシュヌの奥方、 ハスの花の女神(パドミニー)、総ての生き物や物体を生み出す母神、物質的世界の幸運の象徴。

蓮華蔓草と如意の蔓

蓮華蔓草…蓮の生成・増殖のイメージの表現

蓮の茎を波状にあらわして、節々から茎を枝分かれさせて、空隙を蓮華・荷葉・水禽などで埋めつくす 唐草文様のインド版 
パルメットに変わり蓮をモティーフとし 茎には必ず「節」(パルヴァン)がありそこから葉が枝分かれしている

横長・縦長の帯状区画をとって、 初期のストゥーパ装飾はもとより、グプタ時代の寺院の入り口装飾 アジャンターの天上壁画などにも みることがでる

壷から出る蓮華蔓草
象やマカラといった水と関係の深い動物の口(二股になっている)から生える
豊穣神ヤクシャの口から吐き出されたり 臍から生じる

■アジャンター
(天井壁画写真) http://www.ne.jp/asahi/y-sakai/fukui/
■マカラ (Wikipedia

「マカラ(Makara)は、インド神話に登場する怪魚。愛神カーマの旗標であり、ヴァルナ神や女神ガンガーの乗り物(ヴァーハナ)とされる。カーマのシンボルであるマカラは門や装身具の装飾に用いられた。象のような鼻、とぐろ巻く尾を持つが、イルカやサメ、ワニの類ともされる。」 ニューデリー国立博物館ヒンドゥー教の美術写真:河合哲雄氏
■豊穣神ヤクシャ 旅のPhoto Gallery 北インドの旅ストゥーパ、欄楯、南門の柱頭 獅子像、西門の柱頭 ヤクシャ像 東門のヤクシー女神像(背面)などなどの写真がみられます。
■マカラ、ナーガ、獅子…ミャンマー  パガン遺跡のマカラとナーガ(龍)の”色と形”論考 アジア各地のナーガの”色と形”文・写真:岡崎信雄氏(メコンプラザ)

蓮華蔓草の発展・・如意の蔓(カルバ・ラター)
…蓮華蔓草の節…ものを生み出す力 打ち出の小槌
節と二股と胎
バールフトの玉垣に表された、ウッタラクルの楽園表現…蓮華蔓草の波状の区画の中に楽園4場面

■蓮華蔓草
日本印度学仏教学会データベース 書名 南インドにおける蓮華蔓草に関する一考察-ローマ帝政期のアカンサス唐草の受容と展開を中心に- 叢書 仏教芸術 246 著者 永田 郁(崇城大学、インド美術史)   仏教芸術 246 日本の仏像と唐代の建築ほか
■ウッタラクル(北倶盧洲) インド伝統の理想国土ウッタラクル
「仏教の宇宙説では・世界は須辮峨(スメール山)を中心に八山と八海に交互に囲まれていて、最も外側の海中の四方に島があるとされる。そのうち、甫の島が我々の住む地・猷漸獄であり・北の島がウッタラクル州であるといわれている。」 北倶盧洲(ホックルシュウ)とは - コトバンク

…渦巻き唐草…
グプタ系蓮華蔓草

蓮の生成・増殖イメージの展開
グプタ時代(4世紀中ごろ~6世紀中ごろ) サールナートの名高い初転法輪仏坐像 グプタ仏 頭光円周 波状の蓮華蔓草 ここではもはや分岐した茎から開敷や未来敷の花あるいは葉を表すことなく 分岐した茎は激しく回転する渦巻きとなって抽象的な流動表現となっている。 生命の躍動と本龍を象徴する渦巻き唐草は、静寂の世界へといざなう瞑想風の顔立ちを一層際立たせている。
アジャンター石窟をはじめとする後期仏教石窟(5世紀中ごろから6世紀ごろ)
満瓶…そこから生え出た蓮が抽象的な渦巻き唐草になりあたかも水があふれ出るかのような表現 胎(ガルバ) 宝珠(チンターマニ) 宝石(ラーマ)の表現を中心に:そこから渦巻き唐草が発生
動物の下半身が渦巻き唐草に変身…など

■グプタ朝(Gupta Empire) (Wikipedia)
「イラン系の外来王朝であったクシャーナ朝に対し、インドの土着王朝。ギリシア文化の影響が色濃かったガンダーラ美術に代わり、純インド的な仏教美術」
■アジャンター石窟 (Wikipedia)

生成と世界…インドから中央アジア

インドにおいて蓮の図像は生命の誕生・成長・増殖・繁栄のイメージ
もう一つの側面 水から出現する蓮…それ自体一つの世界、宇宙の象徴
蓮が一つの世界を象徴するという考えはインド起源であるが 中央アジアから東アジアにかけて大きく発展する
蓮は「水」から生じる⇒蓮は「光」から生じる

水・生成・世界

「舎衛城(しゃえいじょう)の神変」(千仏化現) サルナート
二竜王によって作り出された大蓮華に仏陀が坐して転法輪印を結び、 みな蓮茎で結ばれる蓮華座上に化現の仏陀があらわされる、
蓮の宇宙論的なイメージ
地下に住む竜王が上半身を現し、大蓮華を作りだすというイメージ
原初の水から蓮華を発するイメージ
宇宙それ自体の象徴でもある蓮華に「絶対なるもの」が宿る
ウパニシャッドには 蓮(特に白蓮)にブラフマンが宿り、人はそれを追求すべきことが説かれている。

■ウパニシャッド (Wikipedia) ウパニシャッド(アマゾン文献)

ヒンドゥ教の神話
全世界か水に覆われていた時、ヴィシュヌはアナンタ竜を寝台として眠っていた。
ヴィシュヌが目覚めて創造を開始しようと欲したとき、彼の臍から蓮が生じ、 その世界蓮(ローカ・パドマ)からブラフマー(梵天)が自力で生まれた (デオーガリのダシャ・アヴァターラ寺の高浮彫)
竜によって象徴される水から 蓮華=宇宙が想像される 仏陀はそこに座って、転法輪印を結び、世界の統御者、宇宙主としてのイメージを完成 [アジャンター、カーンヘリー、アウランガーバードなどの西インド後期仏教石窟)

■ヴィシュヌ (Wikipedia)

ヒンドゥ教の神話

光・生成・世界
(ガンダーラ・中央アジア)

インドとは異なる相貌
ガンダーラの蓮は仏陀の放つ光が化して次々と蓮華となる (茎がつながっていない)
太陽の花としての蓮華
エジプト…水連は太陽の花として崇拝された
インド…クシャーン朝マトゥラー仏
天蓋の中心に開蓮華 天蓋や頭項に会蓮華を表して仏陀の光輝を象徴する
アフガニスタンのハイパク石窟…ドーム天井の蓮華文様
クチャのキジル、クムトラ、 トゥルファンのトヨク、ベゼクリクなどの石窟 壁画装飾の様相を異にするが天頂部にはいずれも開蓮華を描く

浄土と蓮華化生―中国と日本

「浄土」という言葉に対応するサンスクリット語はなく、 同義語として極楽(スカーヴァーティ)があげられるが インドには浄土図[この世を離れた浄土世界夢想]はない インドではこの世とわが身を如何に成果するかに努力がむけられた

浄土の原意は仏国土を浄める菩薩の行のこと

最初期の浄土図 蓮池の叙景性 天上のヴィジョン

竜門賓陽中洞の天井浮彫…大きな開蓮華とそれをめぐる飛天 床の蓮池…大開蓮華文・連珠文・蓮弁・流水渦文 主尊の釈迦仏の光背に自然描写の蓮茎、その外側に火炎…

天上浄土への再生―蓮華化生 (光が化して蓮華となり、そこに天人が誕生する)

ガンダーラから中央アジアで成長

北涼~北魏時代の敦煌壁画 菩薩の執る蓮茎から生じた蓮華に化生の童子が顔を見せたり 仏陀の頭上の天蓋や宝珠に蓮華化生の天人が浮かぶ

方柱仏龕の龕ぴにパルメット唐草とともに蓮華化生の童子が見られる

天人誕生の図 竜門古陽洞の浮彫 (吉村怜中国仏教図像の研究 」東方書店 1984)
蓮華とパルメットが孵化したような蛹のような奇妙な形態 蓮華化生として@天人が誕生し、飛翔する様子の描写

東大寺の阿弥陀浄土図 成熟定式化 蓮池の蓮台に座す阿弥陀如来 左右に観音・勢至の菩薩 虚空段、宝楼段、華座段(三尊段) 宝池段、宝珠段、宝地段(舞楽会、父子送迎会)

敦煌の壁画 阿弥陀浄土を透視画法的遠近法も取り入れ叙景的な世界としてとらえている 中国における情景的浄土図の成立

阿弥陀三尊五十菩薩図は様相を異にする インドの「舎衛城(しゃえいじょう)の神変」の図像に近い

観経変―華座観(けざかん)と普観(ふかん) 悪逆の子阿闍世(あじゃせ)を嘆く韋提希(いだいけ)夫人(ぶにん)

大蓮華に座する盧舎那仏 東大寺大仏蓮弁線刻図様

■大仏の台座蓮弁 をWEBで見る
つれづれ旅日記
竹仙堂 拓本
http://www.digistats.net/museum/mm_1235.htm80円切手
http://blog.livedoor.jp/ricefield_1947/archives/2008-06.html


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