興味深い聖獣の象形文字について、白川静の『字統』を参照します・・。
竜・鳳・虎は、霊獣たることを示す辛字形の冠飾をつけているという。
象形 頭に辛字形の冠飾をつけた蛇身の獣の形。
竜
は龍の初文。【説文解字】 十一下(
鱗蟲
の長なり。
能
く幽にして能く明、能く細にして能く巨、能く短に
して能く長。春分にして天に登り、秋分にして淵に
ふち
つくり
潜む」とし、その字は肉に従い、旁は肉飛の形。
字は蛇身の獣の象形で、
頭上に辛字形の冠飾をつけている。
この種の冠飾は
鳳・虎のト文形にもみられるもので、霊獣たること
を示すものであり、四霊の観念がこれらの字形の成立
した当時において、すでに胚胎するものであるこ
とが知られる。
ト文・金文に龔の字形がみえるが、
その竜形は青調器の文様にみえる
虺龍文
の
竜形に似ており、竜を両手で拝する形であるから呪霊のあるものとして、呪的な儀礼に用いられたものであろう。 (白川静 『字統』p912)
※四霊
AI による概要
「四霊」(しれい)は、中国の古典『礼記』に由来する、麒麟(きりん)、鳳凰(ほうおう)、亀(霊亀)、龍(応龍)の4種類の瑞獣を指します。これらは世の中の吉兆を示す霊妙な存在とされ、一部では「四瑞」とも呼ばれます。四霊は、東西南北を司る「四神(青龍、白虎、朱雀、玄武)」とは異なる概念ですが、混同されることもあります。
「四霊」は
竜・鳳の他、麒麟と亀になるようですね。これは置いておきます。話戻し、龍と鳳・虎を見ます。
以下補足で、蛇の象形文字、蛇、它、巳、九 の4字を見ます。
【蛇】
ジャ・ダ・イ
形声。
声符は它。它は蛇の象形。
「【説文解字】 十三下に它を正字として「虫なり」
とし、重文として蛇を録する。
蛇は它の形声字であ
る。
它に他などの意があって、のち区別して蛇の字
を用いる。
蝎
とともに恐れられ、最も忌むべきも
だかつ
のを蛇蝎という。
(白川静 『字統』p409)
【它】
夕・ダ
へび・ほか
象形 頭の大きな蛇の形。蛇の初文。
【説文解字】 十三下 に「
虫
なり。虫に從ひて
長し。冤曲垂尾の形に象る」 (白川静 『字統』p379)
象形 蛇の形。
十二支の第六、「み」に用いる。
【説文解字】十四下 に「四月、陽气巳に出で、陰气巳に
あら
る。萬物
見
はれて文章を成す。故に巳を蛇と為す。第六辰の「み」
は、ト文では子の字を用いており、巳を用いること
はない。
(白川静 『字統』p373)
象形 竜の形。
竜蛇に虫形のものと九形のものとが
あり、九は岐頭の形でおそらく身を折り曲げている
雌の竜であろう。
禹は虫と九とを組み合わせた形
である。
【説文解字】 十四下 に「陽の變なり。其の屈曲し、
かたど
究盡するの形に象る」という。
七は陽の正、九は
その正陽の変じたもので、陰の八正六変に対する易
の象数論より説くものである。
九は岐頭の竜で
蚪竜というのと同じ。
ト文の雲・旬の形は、カ
形の竜がその尾端を捲いて内におさめている形であ
る。
九は聖薮。(楚辞、九歌]は十一首、(七発、八
首)の七が魂振りの文学であるように、九とは自然
神を祀る祭配歌謡の名である。
神話や神仙に関する
語に、この聖数を用いるものが多い。
(白川静 『字統』p176)