ギリシア式唐草の生誕 |
立田洋司さんの「唐草文様 世界を駆けめぐる意匠」(講談社選書メチエ 1997年刊)を丁寧に再読[再々再読?]中です。 10章ある中の、その第三章、ページ数は18ページ、7段落、図版数は12。 2009-11-04 |
メロス島…エーゲ海のキュクラデス諸島の最も西寄りの外周、ヴィーナス像、紀元前第二千年紀中葉に隆盛した、初期アルカイック陶器の生産地
図26.メロス式アンフォーラ(把手付き壺)…前8~前7世紀
図26はリーグル「美術様式論」よりの引用の引用
ここで、「アンフォーラ」という表記は一般的ではないですね。「アンフォラ」が一般的。……
「それまでには見られなった意匠感覚」…という。
ややうるさい感じ、どことなくユーモラス←
「それは、渦文がそれ以前に比べて、かなり大胆かつ自由になってきていることに起因する。」
*『ウィキペディア(Wikipedia)』アンフォラamphora
リーグル美術様式論―装飾史の基本問題
⇒
図28.ロードス式アンフォーラ
(ロードス考古学博物館7~6BC)
渦文の次の変貌
メロス島のアンフォーラの単純化(斬新)
卍、木蔦文様、絡み渦連続文
独特な海洋的おおらかさと洗練性
「(様式史の流れから言えば)胴に非常に大きく描かれたこの渦文が
造形的に類型化されていく方向に、
ギリシア式パルメット唐草文の定着化が認識される」
「コリント式陶器」と時代が重なる
↑
チャンダリル遺跡(古名ビターネ)出土イスタンブール国立考古学博物館所蔵
幾何学的な構成、オリエント風動植物、エキゾティシズムの情緒
⇒コリント式陶器から純粋に抽象的図柄を取り出して再構成した(先覚的)
アルカイック時代のギリシア…様々な文化的要素の胎動時代
あくまでロータスとパルメットが主流
わずかに、
木蔦文様・
ザクロの実のモチーフ
木蔦は、インドや中国でも紀元前2000年ごろから文様として使用され始めた
西方から伸びてくる絡み草の鶴との合流を待っているモチーフ
蔓延性の植物…最広義の単純な唐草文「写生派唐草」
図29.葡萄の下の饗宴の壺絵(メタポント美術館)
…「アシュル・バニパル王の葡萄の下の饗宴」のギリシア版模作とも言うべき
ギリシア神話では、ブドウとワインはデュオニュソによって伝えられたとされている
図像的にはっきり表現されるようになるのは前6世紀以降
葡萄とともに木蔦が添えられることが多い
「東方からもたらされた葡萄=デーメ―テール伝説の小麦同様「再生」のシンボル
一方木蔦は「常春藤」常緑蔓延性⇒両者の対比がデュオニュソス教の象徴」
ロータス(エジプト伝来)とパルメット(メソポタミア原産)の二つの
モチーフをもとにして発展した「第二の唐草」(ギリシア式唐草)の本質は?
シンメトリー(対称)…古代ギリシア語シュメトリアsymmetriaの英訳
sym(共に)+metros(測られて)…調子の揃った者同士、それぞれがきちんと整った状態
ファンダメンタルな概念
紀元前600年ペルシア戦争の終結
・パルメット唐草文
・パルメット・ロータス交互連続文
・自由に描かれたパルメット↓
図30.洒落たカディンツァ(マドリード考古学博物館)
イベリア半島
第Ⅰーa形式 | 図31. | 唐草蔓絡み文様 |
第Ⅰーb 形式 | 概念に従っていない文様 (アルカイック時代の唐草) ほとんど存在しない |
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第Ⅱーa形式 | 図32. 図33. 図34. | 「パルメット唐草」の典型 図32 左右対称のパルメット 黒絵式、赤絵式陶壺の取っ手部分に 陶壺の胴や首に多用される |
第Ⅱーb形式 | 図35. | 図32の変形、左右対称を大きく外した先進派 |
第Ⅲーa形式 | 図36. | パルメットとロータスの組み合わせによるギリシア式唐草連続文 |
第Ⅲーb形式 | 図37. | 「アルテミオン」の変形あるいは進化形 |