異形のロマネスク 石に刻まれた中世の奇想 講談社 (2009/3/13)刊 (「BOOK著者紹介情報」より) 著者:ユルギス・バルトルシャイティス 訳者: 馬杉 宗夫 1942年生まれ |
ロマネスク聖堂の奇怪な造形の秘密とは?
聖書や神話に材を取り聖堂扉口や柱頭に表された石の彫刻。誇張や変形により見る人の目を惹く様々モチーフの造形原理は何か。異形・奇態の裏の統一法則を解明。
奇怪なデフォルメで見る者を当惑させるロマネスク聖堂扉口や柱頭の彫刻群。神話や聖書に材をとり空間を埋め尽くす異形のものたちに共通するシンプルな造形原理、基本モチーフとは。
同名の父(1873‐1944 )詩人・外交官
師アンリ・フォション Henri Focillon(1881 - 1943)中世美術史家、妻の父
師の師 エミール・マール(Emile Mâle, 1862- 1954)中世美術史家http://dictionaryofarthistorians.org/malee.htmMajor medievalist of French Gothic art and architecture, developed iconographic method.(図像学的手法を開発した)
Ⅰ 直線的処理、楣(まぐさ、のき)、破風(正面)/外的枠組み、オーベルニュ地方の三角形にされた楣/内的枠組み、天使の翼でもって構成された破風/破壊された枠組み、最後の審判の中に隠された破風
Ⅱ 曲線的枠組み、メダイヨンと光背/半円形の舞台装置、円盤、輪、動く車輪/光輪と自由に動く光背
Ⅲ 変貌 /四足獣と幾何学的鳥類、棒状人間と球状人間、人間の身体に変わった後光/天使の翼に変化する幾何学
空間恐怖とそれに結びついた枠組みの法則、建築物の構造への適合
Ⅰ 多様性と統一性/パルメットと波状唐草文モチーフⅠ/
モチーフⅠが二重になりハートのエース形になる/
モチーフⅡの変化の範囲
Ⅱ 軸の転換/X形に二重にされたモチーフⅠ/モチーフⅢのその変化/氾濫-幾何学的支配
Ⅲ パルメットと組み合わせ模様/符号と並置/モチーフⅡとモチーフⅢの上に接ぎ木された組紐模様/
組み合わせ模様の中のパルメット/分解できる迷宮
Ⅳ 装飾とその建築的支え/装飾の中での建築的ひな形/柱頭構造の中の装飾
基本形態をなす中心モチーフ両側に分配された半パルメット(葉)や、様式化された葉を伴った
単純な波状唐草文(=モチーフⅠ)
第一モチーフの唐草が二つ並んで作られる基本形態のハート形モチーフⅡ、
唐草(茎)とパルメット(葉)の新しい統一体
X形の新しいパルメット形が互いに補い合う構造体として確立され発展
ミラノのサンテウストルジオ聖堂
サントのサンテュートロプEglise St-Eutrope
唐草文の無数の変化
ヒルデスハイムのザンクト・ミヒャエル聖堂
パヴィアのサン・ミケーレ聖堂
Ⅰ 幾何学の影響力/自然の中の幾何学/レオナルド・ダ・ヴィンチのひび割れの生じた壁画
Ⅱ 幾何学的視覚/枠組みに入れ替わる装飾/三重の符号と重要な作例
Ⅰ モチーフⅠ/装飾と動物の雑種/
装飾の中への動物の侵入/怪物達の戦いとその組み合わせ/
聖ミカエルの戦いと下半身魚のサイレン
Ⅱ モチーフⅡ/パヴィアの動物返信行列/古代的グループから二つ身体のある怪物/二つ尾のある人物
Ⅲ 半人半魚のサイレン、その典型的なタイプ/尾の変貌/動物に取り囲まれた人間/諸要素の転例 ダニエル、アレキサンダー、聖ロカ、堕落などの表現/三位一体の人間とその図像学的目録/サン・ボンスの≪キリスト磔刑≫におけるシオンの怪物について
Ⅳ 装飾の直線的影響力/文字、または印章のような曲線PーF-T/異なった主題の同一曲線/人間像とその代用物との間のパルメット/サン・レヴェリアンの最後の審判
Ⅴ モチーフⅢ、双頭/爬虫類の動物、鳥、四足獣/サイレンの万華鏡/天国の鳥/三位一体の人物/シオヴィニーの驚異
Ⅵ 変化と迷路/様々な身体の動物形態学的帯/T点とP点における断絶/サンタンブワットマンの水平的、垂直的動物 交換可能な部分を持つ像/ウルセルの淫乱とモワサックの怪物/抽象により吸収
Ⅰ 立体幾何学的筋図式/突出部と基盤
Ⅱ いきいきとしたこぶし花/コルベイユに浮き出る動物と人間/サン・サヴァン聖堂の人間の形をしたこぶし花/こぶし花の上で動いている人物/モチーフⅡのこぶし花/タイプⅠとタイプⅡの組み合わせ
Ⅲ 軸を形成するはめ板/箱から出る/人間、キリスト、天使/棒/アーケードの下の人物/アーケードになった人物/動物形態学的な建築/コルベイユの仮面
Ⅳ 水平層/タイプⅣの調度、動物、そして人間のいる柱頭の下部、茎と渦巻き/ドラゴンと雄羊の角
Ⅴ 演出/怪物の世界/タイプⅢ/中央の像の変装/三人で一つのものの表現/タイプⅠとタイプⅢ/同一主題のための様々なタイプ/サムソン、サン・ブノワ・シュル・ロワールの≪エジプトへの避難≫/同一テーブルの周りや、同一の舟
の上での種々の表現/≪墓を訪れる三人の聖女≫の建築
Ⅰ タンパン上の柱頭の動物形態学/モチーフⅢ、螺旋、相対するグループ/サイレンとライオンの穴の中のダニエルの主題
Ⅱ 勝利の主題のパルメット/ヌイルィ・アン・ドンジョンの≪三王礼拝≫/≪荘厳のキリスト≫の三つの主題/天使に囲まれたキリスト、≪最後の審判≫のキリスト/四福音書記者の象徴に囲まれたキリスト/多葉形弧帯の中のパルメット
Ⅲ アーキボルトに示された数字/≪キリスト昇天≫における天使の踊り/アカンサスの葉とパルメット
Ⅳ 複雑な積み重ね/モワサックのパルメットシャルリュの円のアーチ
Ⅴ ヴェズレーの三角測量
Ⅰ 装飾の中での誕生/解剖学的変形/多くの身体の再統合/三つの怪物/三本の足と三つの身体を持つ怪物
Ⅱ 部分を取り換えうる像
/パヴィアのサン・ミケーレ聖堂の混じり合い/オルネーの分解できる玩具
Ⅲ 一様な骨組みで構成された存在/基本的なタイプ/同一曲線の上での種々の部分の組み立て/寄せ集めと溶解
Ⅰ 庇護の手法、対象と補充の特性、地獄の怪物たち/天国の鳥たち、角ばった装飾
/多角形の人間/砕かれた曲線
Ⅱ 解剖学的変形 /人間の身体全体とその部分の幾何学/なじみのものと新奇なもの
Ⅲ 不変動と動き/同一枠組みの中での不動と動き/踊り子と軽業師/不均衡、動き、誇張した動き
結論 形態的強制と荒々しい生命
Ⅰ 最終段階/幾何学と具象の解体
Ⅱ 幾何学/自然の中に隠された抽象的像、ロマネスクの≪構造主義≫/規則的な壁の像、三角形、円、螺旋/装飾的主題、集まり(束)、扇、貝殻、アコーディオン/組織者としての襞、装飾品としての襞、そして襞の氾濫
Ⅲ 解放された怪物/変形、外的強制のない不均衡、人魚、自由で紋章的な双頭の怪物、異種交配と移植/頭の多様性と直接的な寄せ集め、再構成された二つの尾を持つ人魚
Ⅳ さまよえる人間/タンパンやオーベルニュ地方の楣まぐさの上のこぶし花/ブルゴーニュ地方のタンパンや柱頭の像/ロマネスクの小人とその動き/変形した人の動作/踊りのリズム
*巻末の聖堂建築各部の名称・・・
p328「ロマネスク彫刻は
それが置かれている建築の場所の拘束を受けている」
[文様伝播の状況を巨視的に見れば,原初の文様モティーフの意味が不明となり, ただ形だけが模倣されていくことや,まったく別のモティーフと融合して新たな形をなす]
モティーフ喪失 やモティーフ融合の造形展開2012年
「ゴシックのグロリス」 バルトルシャイデスの「幻想の中世 ゴシック美術における古代と異国趣味 」を読む
2014年訳者の本⇒『ロマネスクの美術』を読む
他に、美学で、
ゴシック建築についてなど追加
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First update 2010年3月25日 2012-03-23追記;LastModified 2025/10/02