『教会の怪物たち』を読むページその4 に入る前に、小休止で、→馬杉宗夫「ロマネスクの美術」を一読中
(p235)A・リーグルによれば、幾何学文様や動物文様に比べると、植物文様の出現は遅いという。幾何学文様は身にまとう織物や編み物の文様から必然的に生まれるし、動く動物の方が、植物よりも人間の興味を引く対象であるというのである。
それでも、ロータス花、パルメットという植物文様の基本パターンは、紀元前3000年以前の古代エジプト美術に出現しているし、 波状唐草文様も、ミケーネ美術において出現し、古代ギリシア・ローマ美術(地中海美術)において広まり、純粋な形式美として高められた。
それゆえ、唐草文様について言えば、西欧中世美術は、何も新しいものを想像していない。
しかし、 紀元1000年を境として登場してくるロマネスク美術は、この波状唐草文様を中心として、実に驚くべき多様な装飾のパターンを生みだした。
(p235) 西欧中世美術の装飾の領域の双璧は
初期中世時代に出現したアイルランド写本の華麗な装飾の世界と
ロマネスク聖堂の扉口や柱頭を飾る石による彫刻の世界
(p236) 中世ロマネスク時代(1000年頃~1200年頃)においては、「美は物質的塊のなかに求めてはならない」という聖アウグスティヌスの言葉が、積極的指導理念として生きていた。 それゆえ、自然界の動植物群は抽象化され、人間の姿すらも様式化され、装飾の王国への道が開かれたのである。
(p226)古代ギリシア神殿でアカンサスの葉の装飾を生んだ柱頭の部分は、ロマネスク聖堂でも、もっとも豊かな装飾を提供する場所になったことはいうまでもない。
窓枠などの細部にも、あたかも空間恐怖を持っていたかのようい、様式化された同植物群が繁茂していく。
(p226)西部フランス地方では、それらは、聖堂扉口の半円の孤体の部分のみでなく、上部空間をも、刺繍のように埋めつくす
(p236)ラ・ランド・ド・フロンサックでは、宇宙を象徴するはずの半年のタンパンの部分にまで装飾が侵入し、諸刃の剣の口にし七つの星を右手に持つ黙示録の神と混じりあう。
ついには、植物お装飾のみがタンパン全体を埋め尽くすようになる
この場合、植物は単なる装飾でなく、生命の樹という象徴性をおびている。
扉口を取り囲む円柱群も、種々の装飾の衣を纏う。
聖堂扉口をこれほどまでに装飾し、装飾の王国を伝えた時代は、西欧世界にはほかにないであろう。
スペインのグラナダにあるアルハンブラア宮殿は、アラビア人たちによる壮絶なまでの装飾の世界をみせている。しかしそれは「神のみが勝者なり」といったアラビア文字を永遠に繰り返したりした抽象的なものであるのに対し、
※ここ、要検討ロマネスクの装飾は人間を含め、主として、自然界にいる動植物群がその主役を演じている
。
ときには中近東から来た幻想的動物群もあり、人間の頭をしたスフィンクスすら柱頭部分を占める。
頭が一つに胴体が二つある動物や人すら現れてくる。
そこには、幾何学的装飾にありがちな冷たさはなく、親しみやすく愛らしい装飾の世界である。
12世紀中ごろから台頭してくるゴシック美術とろもに、写実的な草花が聖堂を飾るようになるまで、ロマネスク聖堂建築は、装飾の王国として君臨していたのである。
バルトルサイエィスの研究(『ロマネスク彫刻における装飾的様式』によれば、これらの多様な装飾のパターンは、すべて波状唐草を基本として生まれている。
それは、
幾何学文様や動物装飾の領域にまで、影響を与えている。
(p240)バルトルシャイティスの論に従って、波状唐草が、以下に他の装飾のパターンを生んでいったかをたどる
4. 3のモチィーフが先端で結びつき、8字型 5.2つの4が直角に交差し、薔薇型(4つの2) 7.ハート形の茎の頂点が離れ⇒X型パルメット 10.ハート形モティーフⅡも、動物や人間へと変貌していく |
1.基本パターン(波状唐草) 2.2本左右相称 3.2枚の葉が内側で向きあう部分⇒ハート型モティーフⅡ 6.3が横に平行にならぶ、接点から→X型モティーフⅢ 8.7の茎と茎の交わるところにリングでX型の強調 9.扉口の幻想的動物群は、波状唐草と同じリズムに従う |
"Aubazine - Abbatiale - Vitrail cistercien -1" by MOSSOT - Own work. Licensed under CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons.
"Poitiers - Notre-Dame la Grande 03" by Christophe.Finot - Own work. Licensed under CC BY-SA 2.5 via Wikimedia Commons.
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図125はこちら見られるもの
2匹の動物が共有の尾で結合されている
photo bykristobalite
※https://www.flickr.com/photos/art_roman_p/
図126はこちらで見られるもの→ https://www.flickr.com/
二人の人物が結合している(頭一つ、体2つ、手2本足4本)
http://fr.wikipedia.org/wiki/%C3%89glise_Saint-Pierre_de_Chauvigny
【wps+(ワールド・フォト・サービス)】
http://lesmaterialistes.com/age-roman-6eme-partie-eglise-jugement-dernier-justice-divine
« Avallon 011 ». Sous licence CC BY-SA 2.5 via Wikimedia Commons.
ヨーロッパ中世ブラブラ歩記:中世の町、アヴァロンのロマネスク(仏)
http://www.paradoxplace.com////Avallon/Avallon.htm
"Autun saint lazare chapiteau 25" by Gaudry daniel - 投稿者自身による作品. Licensed under CC 表示-継承 3.0 via Wikimedia Commons.
p243の図123
ハート形とX型のモチーフ(オ―タン大聖堂の柱頭彫刻)
« Le Mans - Cathedrale St Julien int 08 » par Selbymay — Travail personnel. Sous licence CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons.
図124 普通のよくある双鳥文に見えるがよく見るとしっぽが渦巻いていますね
二羽の鳥がハート形、パルメットの代わりに水盤