尾形希和子著 /目次読書/
第一章 怪物的図像とイコノロジー的アプローチ
第二章 神の創造の多様性としての怪物・聖なる怪物
第三章 怪物的民族と地図
第四章 「自然の力」の具現化としての怪物
第五章 世俗世界を表す蔓草
第六章 悪徳の寓意としての怪物から辟邪としての怪物へ
第七章 古代のモティーフの継承と変容、諸教混淆
第八章 怪物のメーキング
結び 怪物的中世
第一章 の研究の方法、図像へのアプローチの仕方に続いて、第二章・第三章で「怪物」の意味をチェック、次いで怪物セイレーン、グリーンマンへ
自然-人知を超えた危険な世界
魚の尾をもつセイレーンが海や水の、ワイルドマンあるいはグリーンマンが大地や森などの具現であるように、宇宙を構成する四つの元素(エレメント)が「怪物的表象と結び付く例
「罪深きカップル」―サン・ミケーレ・マッジョーレ聖堂
サン・マルコ大聖堂のオケアノスとテルス
人魚とワイルドマン、オケアノスとテルス(図像は下へ)
オケアノスから継承した「死と再生」
植物に宿る循環性と再生力
オケアノスの仮面に由来する葉の仮面、すなわちグリーンマンは4~5世紀には聖堂の装飾のレパートリーに入る
グリーンマンはオケアノスから死と再生に関わる性質を受け継ぐと同時に、キリスト教において禁止され続けながらついぞ死に絶えることのなかったデオニュソス信仰や樹木信仰の残滓であると言われている〔p154〕
「口」がすべてを生みだしすべてを、無へと返す「時」ならば、動物や人間、仮面の口から吐き出される蔓草こそは、「時」が生み出しては破壊して無に返す「現世」と解釈される〔p156〕
「海(オケアノス)」も「時(アンヌス)」もワイルドマンの姿で
「大地」の乳を吸うケンタウロス
ケンタウロスの獣性
流動的に伝染し、混同されていくイメージ
→ケンタウロス「2」
→四大「4」
天使か悪魔か―「風」の両義性
翼をつけた男性の姿
悪魔的イメージへの変遷
自然への畏怖が産みの親
→風の薔薇
"Die mosaique 4 fleuves-Euphrates" by Ursus - Own work. Licensed under CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons.
単に河川や海を表す中立的な水の記号として機能する場合もある(p142)
●From Roman To Romanesque By Julianna Leeshttps://www.green-man-of-cercles.org/‥.pdf
Fig 90 : Mosaic from the Chapel of St Nicolas, Die – a River
"Die (Drôme) Notre-Dame 17" by GFreihalter - Own work. Licensed under CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons.
上はおまけで同じ礼拝堂の柱頭の人魚Kapitell in der Vorhalle der Kathedrale Notre-Dame in Die・・棒を持っている
«Capitel portal norte catedral urgell1 (2)» por MarisaLR - Trabajo propio. Disponible bajo la licencia CC BY-SA 3.0 vía Wikimedia Commons.
"Pavia Chiesa di San Michele1" by Welleschik - Church San Michele in Pavia, Italy.. Licensed under CC 表示-継承 3.0 via ウィキメディア・コモンズ.
(右の入口の柱頭 12世紀)
図4-5 「オケアノス」、 図4-6 「テルス」
(ヴェネツィア、サン・マルコ大聖堂Basilica_di_San_Marco、
正面中央扉口、アーチ内孤基部 13世紀)
ターバンは異世界のしるし
→オケアノス、テルス
ここまで見た人魚とワイルドマンはセットのようですが、 グリーンマンは単独のようです
wikimedia で、グリーンマンはワイルドマンのカテゴリーの中にある。→greenman.html
「緑」の葉を纏うグリーンマンと、多色や縞の服だけではなく、緑色の服も身につけるという道化の間の関連性も推測される。ワイルドマンと道化も「棍棒」を持つという共通性がある
図4-7「グリーンマン」北側側廊外部、
アーケード柱頭、ヴィリジェルモ作
,1099~1106年
→モデナ大聖堂のイメージ
"Mosaique au musée archéologique de Sousse" by English: Credits to Habib M’henni / Wikimedia Commons
- Own work. Licensed under Public Domain via Wikimedia Commons.
図4-8「オケアノス」スーサ、床モザイク、スーサ美術館 3世紀
一見は角、カニのハサミやサンゴ、耳は貝であるか?
図4-8所蔵というスーサ美術館が不明
→スーサ(Susa,イラン)でなくて
スース(Sousseはチュニジア Tunisia)であった。
※Susa・・先史からイスラーム時代にわたる遺丘:現地音シューシュ 特ににアケメネス王朝都市遺跡として有名、1854年よりフランス調査隊によって継続的な発掘調査が行われた。R・ギルシュマンは15層の文化を確認している(by古代オリエント事典)【Roman Ghirshman】
(おまけ→別のテーマ
古代オリエント美術 Art of the ancient Near East ;
バビロンの蛇orient/Kassites_art.html)
図4-8「真実のくち」ローマ サンタ・マリア・イン・コスメディン聖堂、前廊 1世紀頃
図4-10フォリーニョ大聖堂( Foglino ) 、扉口側柱、12世紀
イタリア・ベル―ジャこちらのブログに図があり
吐き出しのみ込む「口」はインド思想、あるいは中国の饕餮文などとも共通する、すべてを生みだしすべてを無に帰してしまう「時」のシンボルであるとされている
「口」がすべてを生みだしすべてを無へと返す「時」ならば、動物や人間、仮面の口から吐き出される蔓草こそは「現世」と解釈される 。(p195-196)
動物の尾の先端が植物へと変化しているのは、その生殖性をさらに強く暗示するもの(p196)
インド美術というと立川武蔵さんの本で見まし
た
→
「唐草とともにある聖獣」=神々や仏の聖性を高める獣たち」・・・
ここで感じるのは、
動物に対する感覚がかなり違うように思えることだが・・
p197の3つの12~13世紀の写本の図、これがまた問題ですね。
図4-11「大地と水の創造」
図4-12 「暦の中心に座すワイルドマンの姿のアンヌス」
図4-13 「四大」
→romanesque_ogata04.html
→時の擬人像アンヌス、黄道十二宮・・・「12」
→Zodiac(途中)