内容(「BOOK」データベースより) 古代エジプト・ギリシャから、中世・ルネッサンスにいたるさまざまな怪物図像を解読しながら、隠された精神の古層に光をあてる、イメージの精神史。図版多数。怪物のイコノロジー。
西欧における異形の図像の一つに二重体像がある。顔や胴体が二つ接合したこの表現は、その起源を古代にもち、古代の宇宙論的思考を反映したものである。
35図
西野嘉章(wikipedia) (にしの よしあき、1952年1月生 )
著書
「十五世紀プロヴァンス絵画研究 祭壇画の図像プログラムをめぐる一試論」(岩波書店 1994)
「西洋美術書誌考」 (東京大学出版会2009)
「 インターメディアテク: 東京大学学術コレクション 」 (平凡社2013)
西野 嘉章 (翻訳書)
「形象の解読〈1〉芸術の社会学的構造 」(新泉社1981年)
ピエール・フランカステル (著),
「幻想の中世 ゴシック美術における古代と異国趣味」(ユルギ」ス・バルトルシャイティス、リブロポート 1985年/平凡社ライブラリー(上下)、1998年)
「イコノゲネシス イメージからイコンへ」(H・W・ジャンソン、J・ビアウォストツキ 松枝到共訳 平凡社 1987年)
中世の美術 「ケンブリッジ西洋美術の流れ2」(アニー・シェイヴァー=クランデル 岩波書店 1989年)
「アレゴリーとシンボル 図像の東西交渉史 」(R・ウィトカウアー 大野芳材共訳、「ヴァールブルク・コレクション」平凡社 1991年)
「イコン 聖画像新釈」(エフラム・ヨン、フィリップ・セール リブロポート 1995年)
東京大学総合研究博物館 研究者紹介um.u-tokyo.ac.jp/
西欧における異形の図像の一つに二重体像がある。顔や胴体が二つ接合したこの表現は、その起源を古代にもち、古代の宇宙論的思考を反映したものである。
(p72~ 105)
コンラート・フォン・メーゲンベルクが1487年にアウグスブルクだ刊行した『自然の書』(Buch der Natur)で15世紀のフランドル本からテキストと挿絵を借用した(p73)
Thomas of Cantimpré (Thomās Cantimpratensis or Thomās Cantipratensis) (1201– 1272)
異形民族がなんとフランドルの当時の流行服に身をくるんでいる。
ルドルフ・ウィットカウアーも、同じような現象が中世末期に数多作られた『驚異の書』の写本群にも見て取れることを指摘している。(p73の注4)→※
「本物そっくり」でなく「本当らしさ」が優先された。
時間的に隔たった「過去」や地理的に隔たった「辺境」を、同時代の「出来事」と全く同じ地平でとらえる<視角>の一翼を担っていた。
(p74の注6)→Jurgis Baktrusaitis,LeMoyen Age fantastique,Paris,1981)(『幻想の中世』 リブロポート1985)の主眼もこの<視角>を浮き彫りにすることにあった。
コンラート・フォン・メゲンベルク(Konrad von Megenberg、1309 - 1374)、トマ・ド・カンタンブレ(1201– 1272) 、※ルドルフ・ウィットカウアー(Rudolf Wittkower, 1901 - 1971)については、こちらBuch_der_Naturi.html で補います。
なお、バルトルシャイティス(1903-1988 同名の父(1873-1944)も高名な詩人)の、『幻想の中世』(平凡社ライブラリー)は西野 嘉章さん訳で、副題「ゴシック美術における古代と異国趣味」とあるので、私としてはブレイキをかけて、ロマネスクでしかみてなかった。→ 2010/jurgis_baltrusaitis.html
(p74の注6)、
Andre Breton/アンドレ・ブルトン(1896-1966)がシュルレアリスムの仲間の協力を得て制作させたもの。
https://toddlowrey.com/
第二次大戦中アンドレ・ブルトンがマルセイユで監修し、作り上げた芸術的なトランプセット。
もともとさまざまな寓意を加味した単純な人像表現の形をとっていたらしいが、今日では点対称の形に転化してきている。カードに天地があると使い勝手が悪いからだろう、というのはいささか単純にすぎる。なぜなら、この種の回転図形には、単なる視角の戯れを超えた伝統的な象徴学が見て取れるからである。(p76)
図3 教会堂の要石装飾
(p77)
(バルトルシャイティスの『幻想のゴシック』
Le Gothique fantastiaue、Paris,1960、p68 fig.12,p156,fig.1
人間や獣の体を複合させた回転図形
西欧世界には、遊びの要素を盛り込んだこの種の図像が古くからあった。(p76)
※ここにある、バルトルシャイティスの『幻想のゴシック』という書名は、「幻想の中世 ゴシック美術における古代と異国趣味」の省略形かと思ったが、p76注8に、出典があり、別書のようだ。
図5 「カトリーヌ・ド・クレーヴの時祷書」(p78)
聖二コラ1425‐40年頃
四隅に配された単純で奇妙な図形:四つの方位に位置する「風」を擬人的に表している。 根の深い宇宙史的な伝統が息づいている。(p78)
(Catherine de Nevers, 1548 - 1633)
wikipediaによればアレクサンドルデュマの劇にもなった人物
2巻と3巻で登場する中世の写本は、所蔵館サイトで鑑賞できるものも多く、たとえば『カトリーヌ・ド・クレーヴの時祷書』The Hours of Catherine of Clevesは、The Morgan Library & Museumのサイトで各頁を拡大して見ることが可能です。 pic.twitter.com/E5F0LrodyV
— 中央公論新社『西洋美術の歴史』 (@chukoseibi) April 6, 2017
「風」はほとんど例外なく人間の姿に擬人化されている。.
その中に、三人組の人像を四隅に配したり、三頭の人頭や三面相などを東西南北の方位に配したものがある。
図8 (p80)
なぜ「三」という数が基になるのか、それはミュンヘンにある13世紀の宇宙誌写本のような例を見ればただちに納得がいくだろう。
(p79注12)Munich,Bayerische Staats biblioithe,Cod.lat.2655,fol.105rこの世界誌では、
四隅に、プラトンの『共和国』以来の長い伝統を持つ、中世キリスト教の「枢要徳」すなわち、《賢明》《正義》《剛毅》《節制》の擬人像が配されており、
中央の円形メダイヨンの中でキリストが両手を広げてマクロコスモスの環を掴んでいる。
その内側には正方形をしたミクロコスモスが配され、更にその内側で、《四大元素》を表す擬人が両腕を広げ環を作っている。
「空気」「火」「大地」「水」の擬人像が、季節の春夏秋冬、方位や風の南東北西など、
一般に四性論として体系化される諸々の要素の呼応している。
《四大元素》の擬人像と擬人像の間の空間、すなわち正方形枠の四隅に示されているのは、腕を広げ息を吹く出す頭部を手にした「風」の擬人像である。
「風」が頭部のモティーフと結びついたのは、東西南北の風をそれぞれ、ミカエル、ラファエル、ウリエル、ガブリエルの四大天使、あるいはセラフィム、タルシス、ケルビム、アリエルに呼応させるという考え方があったからだろうl。
このもモティーフは十六方位の中から東西南北を除いた残りの十二方位を四等分したもののの表現であり、これによって「風」の擬人像と数字の「三」の結びつきが説明される。
もっとも、方位を十二等分した宇宙誌図も多く、その場合には《風》が年暦の十二カ月や占星術の黄道十二宮と直ちに結びつく。(注13 Cf.JBaltrusaitis,op.cit.,1938)
(注14)Raimond van Marle.Iconographie Renaissance,2 col.,Nerw York,1971,T.
両腕を広げた人像が向かい合って環をつくるとい構成は、「風」の図像より起源がされに古い。
図33 (p)
LastModified: 2019年 …