聖樹聖獣文様
奇想図譜
三面相
「Sphynx スフィンクス 視線の科学・デザインの科学」（季刊誌）所収
西野嘉章（wikipedia）
＃0102号 p160-p173 15図
＃03号p005‐033 19図
＃04 p150‐169 18図
このまさに「古色蒼然」とした古い季刊誌であるが、昨年見た『怪物のイメージ
』の関連としてここで見ることにします。
まず2号の「三面相」からである。C・H・ルイスの『愛とアレゴリー』所収の、、「シャルトル派の詩人」とする「ベルナルドゥス・シルヴェストリス」（？）の言葉に始まる。
この人物は
wikipediaでは「シャルトルのベルナルドゥス（1124以降に没）あるいはシャルトルのベルナール（仏: Bernard de Chartres）」で、
巨人の肩の上（✳）の成句が最も早く帰された人物とする。
ちなみに、表記のBernardusベルナルドゥスは良いのだが、SilvestrisでなくCarnotensisなのが不明、一応後ほどもとの翻訳書を当たりたい。（『愛とアレゴリー』G・H・ルイス著玉泉八州男訳amazon）
話を戻すと↓下は特筆引用したい。
造物主が三位一体であれば、森羅万象をかたちづくる諸々の構造物にもその構造が投影されると考えたのは、ごく自然なことである。（p160）
続いて図版チェックだが、
図1（p161）は、太陽と獅子、銅壺、グリスターン宮殿美術館、テヘラン12世紀 Golestan Palace（ゴレスターン宮殿）
ペルシアが生み出した太陽のヒエログリフ
図1（p161）太陽の顔が3面
「あらゆるものを見通す太陽は、太陽の動物として典型的な獅子と組み合わされ、ペルシア中世美術にしばしば登場している。」
二対四眼の畸形
図２ シェーデル『世界年代記』世界の第二段階
ｆ ＸⅡ,verso.（左）
（Hartmann Schedel, 1440-1514）ニュルンベルク年代記
×https://daten.digitale-sammlungen.de
○ https://www.ndl.go.jp/incunabula/
視角構成ではたしかに三面の相を思わせるが、鼻・口がそれぞれ一つしかなく、三面相族が畸形族と異なる起源につらなっていることをうかがわせている。（p161）
三頭三身の怪物グリュオン
Geryon
Musée Saint-Raymond, Toulouse, France
三面相が太陽と結びつく例は、ピエリオ・ヴァレリアーノの『ヒエログリフィカ』（1556）にも見られる。（✳）
身体の部分の反復による能力の増大の例は異教の古代霊やヒンドゥ―教の図像（シヴァ神、ブラーマ神など）に多くみられるが、西欧では例えばアルキアーティの『エンブレマータ』（1548）の「三頭三身の怪物ゲリュオン」にその典型的な例を見ることができる。（p161）
図3 （p162）アルキアーティの『エンブレマータ』（1548）
「三頭三身の怪物ゲリュオン」 グリュオーン wikipedia
三面で手足が3つずつあるが、腰でつながっている軍人に見える。wikipedia
Herakles fighting Geryon (dying Eurytion on the ground).
Side A from an Attic black-figure amphora.
アンフォラ,紀元前540年ごろ,ルーヴル美術館蔵。
ダンテ・アリギエーリは『神曲』の地獄篇第16～17歌にゲーリュオーン（『神曲』でのイタリア語表記はジェーリオンGerione）を登場させている。『神曲』におけるジェーリオンは3頭の怪物ではなく、けばけばしい蛇の体を持ち、獣の脚、二股のサソリの尾、そして翼が生えている（この姿は「三体」という要素を「人間、獣、爬虫類」という三性質をもった体として表現したとする説がある。[平川祐弘訳『神曲 地獄篇』河出書房新社、p234]）wikipedia
Heracles fighting with Geryon (dying Orthrus and Eurytion on the ground).
Chalcidian black-figured amphora from South Italy, ca. 540 BC
Cabinet des médailles
図6 洗礼盤の三面相ペリー公のいとも豪華なる時祷書 fol.37v
:Folio_37v_-_The_Baptism_of_Saint_Augustine
図4（p163） ランスから出た墓柱、エスペランディウ、3652番、1‐3世紀
図5（p163）異形 聖職者席のミゼルコルコルディア（15世紀）
Saint-Pol-de-Léon (Brittany)
図7 巨人、イギリスの動物誌挿絵８cod.22.f.3r)ウエストミンスター図書館 ロンドン
図8 《時》『教会日祷書』（ms.thed.lat.133c)アルスナル図書館、パリ、14世紀
図10．（p168）三位一体
シモン・ヴィストルがパリで羊皮紙に刷った時祷書より、1524年
図11．（p169）三位一体 『交誦（こうしょう）聖歌集』
サン・ジェミアーノ美術館、15世紀
図11（p169） コッセ・イサルコ、油彩、イタリア民族博物館、19世紀
図13（p171） 悪魔、『聖杯伝説』より、(ms.fr.96.r61)国立図書館、パリ、15世紀
図14（p172）ルシファー、ソフィア・ジャコメッリ
『神曲を飾るための百の像の集成』パリ、1813年
図15（p173）『過去と現在と未来を思う国王ルイ＝フィリップ＝』，
ドーミエ『カリカチュア』より、1834年。
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