生命の木 聖樹


「無花果にまつわる話」

西洋古典こぼればなし 』 岩波書店〈同時代ライブラリー〉、1995年
柳沼 重剛(やぎぬま しげたけ、1926 - 2008)著
p187- p195
柳沼重剛『西洋古典こぼれ話』は、「ギリシア・ローマの猫」というエッセイの依頼を受けたのをお断りする手紙、という長いタイトルで、 9ページもみっちり書いていたりする・・これぞ「滋味あふれるエッセイ」(^^)/
表紙のイチジクの話は、「週刊朝日百科物の世界」84に初出だったという・・
これも「こぼれ話」で、少々ここに追加しておきます・

果物として最も食べられた

古代ギリシアの五大農産物
穀物(麦)、牧畜(牛、豚、羊、山羊、牛乳、チーズ〕、オリーブオイルmはちみつ、(古代でただ一つの甘味源(、蒲萄(酒)
果物として最も食べられたのはリンゴ(ギリシア語でmelon)と言われたが、実は違う、イチジク(sykon)である。(p187)


51種類のイチジク

古代にはどういう植物が知られていたか。
テオプラトス(アリストテレスの弟子)の『植物誌』
プリニウス『博物誌』
食べ物としてなら、
アテナイオス『食卓の賢人たち』を見るに限る

イチジクはわれわれの像をうを遥かに超えて重んじられていた (イチジクは51種挙げられている。リンゴは23種。)
51種のうち最もふつうのイチジクは
Fixus caricaで、珍しくもわれわれがイチジクと呼んでいるものと同じ。
とくに広まったいたらしい食べ方は、
干しイチジク(ischas)として食べること


アリストパネス(前5世紀)の喜劇『騎士』
「干しイチジクを empodizoする(語意不詳)時みてえに口をぽかーんとあけやがって」

ホメロス『イリアス』(岩波文庫 松平訳5-902)
「あたかも無花果 の樹汁が、純白の乳液をたちまちにして凝結させ、かき廻すうちに数値に見る見る固まってゆく。そのように素早く、パエオン(医神)は荒れ狂うアレスの傷を癒した」


夏目漱石『吾輩は猫である』
(鈴木君)…「世の中は笑って面白く暮らすのが得だよ」「どうも君はあまり陰気すぎる様だ」・・(苦沙彌先生)「昔希臘にクリシツパスという哲学者があったが・・・笑い過ぎて死んだんだ」「驢馬が銀の丼から無花果を食うのを見て、可笑しくて堪らなくなって、無暗に笑ったんだ。ところがどうしても笑いがとまらない。とうとう笑い死にに死んだだあね」
ディオゲネスの『ギリシア哲学者列伝』(加藤彰俊焼く岩波文庫版なら中巻のp360)
・・・・

思うに無花果を食ったのがおかしいのではなく無花果を食った驢馬に(それを飲み管う章に)葡萄酒を飲ませたのがおかしかったのではないか

漱石の見事さに夢中になる

イチジククイ(sykalis)という鳥がいる、、、、これはウソだと言われたりヒガラだとされたりヒタキとされたりしている・・



ヤフオクでは6000円くらいで買えることもあるようです・・


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