蝶(チョウ)の図像の歴史・文化
蝶は虫(昆虫)とは違うというイメージであったが、同様なことがwikipediaにも書かれていた。「 チョウは、美しくて無害な生き物との感覚があり、その他の虫一般と区別されかねないくらいの評価がある。」と。(20230321閲覧)また、「イメージ・シンボル事典」では「蝶は魂を表す、それは虫=体とは反対のイメージである。」という表現であった。(後述)
形・イメージ (文様/文化/象徴)
蝶
『図説世界シンボル事典』
蝶(チョウ)
蝶はしばしば人間の魂とみなされる。
ギリシア語では「プシュケpsychḗ」という語が、「魂」と「チョウ」の両方の意で用いられる。
wikipediaではギリシア語でなく、ビルマ語についてで、
「ビルマ語に至っては〈チョウ〉を表す語 လိပ်ပြာ /leʲʔpjà/(レイッピャー)がそのまま〈魂〉という意味で用いられる場合もある」、という記述(出典 大野, 徹 『ビルマ(ミャンマー)語辞典』大学書林、2000年、660頁)
日本語では、ハエ、ハチ、バッタ、トンボ、セミなど多くの虫の名称が大和言葉(固有語)であるのに対し、蝶と蛾に関しては漢語である。蝶や蛾もかつては、かはひらこ、ひひる、ひむし、といった大和言葉で呼ばれていたが、現在ではそのような名称は一般的ではない。
万葉集には、蝶を読んだ歌は一つもない。(wikipedia
蝶の化石は、約 5600 万年前の 暁新世にまでさかのぼる。知られている最古の蝶は、デンマークの古新世ファー層からのProtocoeliades kristenseniで、約 5500 万年前のもの
チョウ 蝶
蝶の化石
Prodryas ペルセポネ、フロリサント化石層からの始新世後期の蝶、1887
Engraving of the holotype fossil of Prodryas persephone, from an advert in Canadian Entomologist
Color reconstruction of Prodryas persephone based on the colors of Hypanartia and Antanartia.
Rhopalocera
鱗翅目
鱗翅目(りんしもく)、またはガ目
「ガ」の種類数は「チョウ」の20-30倍で、ガの方が圧倒的に種類数が多い。また鱗粉を持つ翅のある目なため、チョウとガはここでは区別されてはいない。Butterflies are flying insects.
日本にはチョウ目の昆虫が6000種程度知られているが、「チョウ」と呼ばれるものは250種類にすぎず、他はすべて「ガ」である。世界全体で見ると、ガの種類数はチョウの20 - 30倍ともいわれている。チョウとガに明確な区別はない (wikipedia:ガ)
ガは、
チョウ(具体的にはアゲハチョウ上科、セセリチョウ上科、シャクガモドキ上科)をのぞいた分類群の総称。
WEB図鑑
チョウの生物学
ハチ(蜂)とは、昆虫綱ハチ目(膜翅目)に分類される昆虫のうち、アリ(ハチ類ではあるが、多くの言語・文化概念上、生活様式の違い等から区別される)と呼ばれる分類群以外の総称。(wikipedia) `
Butterfly life cycle diagram
Aporia crataegi eggs Malus domestica
卵は一週間くらいでふ化する
チョウのハネにある粉は鱗粉と呼ばれる、細かい毛が進化したもので、水をはじく性質がある
チョウは、花の蜜や樹液などをエサにしている。口は蜜や樹液を吸いやすいストロー状になっています。普段は巻いていて、使うときに伸ばす。(福島県三春町図書館)
人間の文化
英語における "butterfly" と "moth"
漢語の「蝶」とは「木の葉のようにひらひら舞う虫」を意味し、「蛾」とはカイコの成虫およびそれに類似した虫を意味する言葉であった。
日本における今日的な「チョウ」と「ガ」の線引きの起源をたどってみると、英語における "butterfly" と "moth" の線引きと一致し、英語圏からの近代博物学の導入に伴って英語の文化的分類様式が科学的分類法と混在して日本語に持ち込まれたことが推測される。 (wikipedia)
Ancient Egyptian relief sculpture, 26th dynasty, Thebes. c. 664–525 BC
数え方は、一頭、二頭・・
チョウ (図像)
図案化された蝶、陶器の模様
Teotihuacánテオテワカン文化、古代メキシコ
(出典『図説世界シンボル事典』(p256図1)
蝶、岩に刻まれたレリーフ
アカルピサン、メキシコ
(出典『図説世界シンボル事典』(p256図2)
ケツァルパパトル(Quetzalpapálotl)
ケツァルパパトルとは、頭が鶏(ケツァル)で胴が蝶(パパトル)の聖獣
Teotihuacánテオテワカン文化
紀元前2世紀から6世紀まで繁栄
※ケツアルコトル:「羽毛の蛇神」、体が羽毛で包まれたヘビの神(アステカ語)マヤ語でククルカーン
『図説世界シンボル事典』
チョウ
蝶は多くの文化圏において、変身する能力と美ののシンボルとなる一方で、喜びのはかなさを象徴する」存在である。
ギリシア語では「プシュケ(psyche)」という語が「魂」と「蝶」の両方の意で用いられる。
※ディドロの百科事典は、蝶を魂の象徴として挙げている。(en.wikipedia)蝶が気のむくままに舞い飛ぶ様子は、妖精、精霊、童型の愛神エロス(アモル)の群れなどを連想させる。
中国では、蝶と梅を組み合わせたずあhhんは長寿と美の象徴
蝶は耊(てつ 70歳)、猫は耄(ぼう 80歳)と同音であるから、組合せであわせで、「 耄耊 」即ち、長寿を願う図案である。
古代メキシコでは、植物の生育を司神ショチビリの持物だが、ゆらめく火の象徴でもあり、太陽と結びつけられる。
アステカでは石のナイフで縁取られた蝶「は、女神イツパパトロルを表す。子の女神は、夜空に煌めく星々の神であり、産褥で命を落とした女性の魂を象徴する。
出典:ドイツのハンス・ビーダーマン著『図説世界シンボル事典』(p256)
イツパパロトル(Itzpapalotl)はアステカ神話の女神。
図像上は羽根についているのは黒曜石ではなく石刀(テクパトル)(wikipedia)。
頭が髑髏で石刀の刃がついたチョウの羽根が生えている図像は後古典期早期のトゥーラに最初に出現する
イツパパロトルはまた戦いの女神でもある。メソアメリカにおいては、チョウやガが火の中に飛びこむ習性を自己犠牲の英雄的行為と考えられており、またチョウ自身が炎の象徴ともされた。戦士たちは戦闘時にチョウの図像を身につけていた。死んだ戦士の霊魂は、チョウやその他の飛ぶ生き物になって太陽の楽園に住むと考えられていた
『図説マヤ・アステカ神話宗教事典』東洋書林、2000年)Miller, Mary; Taube, Karl (1993). The Gods and Symbols of Ancient Mexico and the Maya: An Illustrated Dictionary of Mesoamerican Religion.
イメージ・シンボル事典
魂を表すそれは虫=体とは反対のイメージである。
死を表す。卵から、サナギ、チョウへ段階を経るため、蝶はギリシアの若者タナトスにあらわされる。
精神分析では、再生、復活を表す。
愛。昔の記念碑にはヒューピッドがチョウを引き裂いている図柄が見られる。
(魂が愛によって支配されていることを示す)
キューピッドは今でも一方の手に弓を持ち、他方の手にたいまつをもて、そのたいまつでチョウの羽を焼いている姿で表わされる。
チョウの羽は、つまらぬ行為、軽率、快楽を表す。
気楽さやのんきにやることを表す。チョウは横道にそれることがあるが、勤勉なハチが一直線に飛ぶのと対照的。
虚飾、華美な服を着た人、特に宮廷人。
関連;cocoon(繭)
初期のイタリア美術で、栄光に包まれた魂のエンブレム。
『イメージ・シンボル事典』(アト・ド・フリース原著 山下主一郎 大修館書店創元社1984)cocoon
チョウ 図像
綿綿瓜瓞:瓜が繁茂するように子孫繁栄すること
出典:『中国シンボル・イメージ図典』p52図
鈴木春信「猫に蝶」。猫に輪郭線はなく、和紙の表面を盛り上げる「きめ出し」と呼ばれる技法で立体感を表しています。「浮世絵動物園」でご紹介→https://t.co/n3axgqITYC pic.twitter.com/uBzYXHbY0V
— 太田記念美術館 Ota Memorial Museum of Art (@ukiyoeota) August 3, 2022
https://cat-press.com/近代中国絵画
絵画(ギリシア神話)
早くも紀元前4世紀にはギリシア美術に登場
Cupid and Psyche (François Gérard - Louvre INV 4739) ルーヴル美術館 蔵
ラファエロと彼のワークショップによるキューピッドとプシュケの結婚披露宴(1517) 、ロッジア・ディ・プシケ、ヴィラ・ファルネジーナから
19世紀
パリの Palais Garnierガルニエ宮のエルメスとプシュケ。プシュケの頭の上には蝶がいます。
彼らの名前はギリシャ語で、ΨΥΧΗ (プシュケ) と ΕΡΜΗΣ (ヘルメス)
プシュケの頭の上には蝶がいます。
Cupid and Psycheの
絵画のデーテイルから
ラファエル(工房)
The Wedding Banquet of Cupid and Psyche (1517) by Raphael and his workshop, from the Loggia di Psiche, Villa Farnesina
フランソワ・ジェラール (1770–1837)
(François Gérard - Louvre INV 4739)
Cupid and Psyche (1817) by Jacques-Louis David: the choice of narrative moment—a libertine adolescent Cupid departs Psyche's bed with "malign joy"
日本の絵画
伊藤若冲 伊藤若冲(1757-1758)「芍薬群蝶図」Itō Jakuchū - Herbaceous peonies and butterflies (Colorful Realm of Living Beings).
虫の図像学
今回、「文化昆虫学」という分野を知った。虫は「虫唾が走り」、蛇は「蛇蝎の如く」嫌いだが、なぜか、色々かかわってくるのであった・・、
文献読みでは、どこまでが許可される引用なのか、と引くこともあるが、とにかく必要に応じて参照していきます‥
図像
家紋に、「蝶紋(ちょうもん)」がある。
桓武平氏の一族やそれを称する一族、末裔を称する一族などによって用いられることがあった。
Ageha inverted
代表的な図案の「揚羽蝶(アゲハチョウ)」は特にアゲハチョウを図案化したものではなく、羽をあげて休んでいる蝶の姿を描いたもの(wikipedia)
能衣日本 1700年代
絹糸で刺繍し、金箔で型抜きした絹