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「怪物―イメージの解読」

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me『怪物―イメージの解読』の目次読書最終

怪物―イメージの解読』河出書房新社1991刊
吉田 敦彦 ,尾形 希和子, 西野 嘉章, 神原 正明 , 若桑 みどり (著)

■「聖アントニウスと怪物」  神原 正明

西欧美術における一大テーマである「聖アントニウスの誘惑」には、怪物が数多く登場する。
41図

http://www.kusa.ac.jp/~kambara/profile/books.htm
はじめに
恐怖を具体化→ある種の身構えの余裕
近代の幕開け:ゴヤ「理性の眠りが怪物を生む」
それ以前は怪物を生み出したのはむしろ理性ではなかったか?

一 聖アントニウスの誘惑(p108~)
Temptation of St. Anthony(kotobank)
Niklaus Manuel Deutsch 001
図1 聖アントニウスの誘惑(p109)
Niklaus Manuel Deutsch (c. 1484 – 28 April 1530),of Bern

 

http://www.kusa.ac.jp/~kambara/bos/07.pdf by Masaaki Kambara
Schongauer Anthony
The Temptation of St Anthony, engraving by Martin Schongauer, c. 1470-75
@ニューヨーク、メトロポリタン美術館(en.wikipedia)
ショーンガウアーは、モノグラムですべての版画に署名した最初の芸術家

ニコラス・マニュエル・ドイチュ、グリューネヴァルトのイーゼンハイム祭壇画、ヒエロニムス・ボスのリスボン祭壇画等に直接影響、少年ミケランジェロも模写した。 @キンベルKimbell美術館美術館:フォートワース、テキサス州

マティアス・グリューネヴァルト
(Matthias Grünewald, 1470/1475頃 - 1528 ペストで死亡)
(「中央パネル:凄惨な描写で知られるキリスト磔刑像」wikipedia


Isenheimer Altar (Colmar) jm01229
イーゼンハイムIsenheimer祭壇画 フランスとドイツの国境に位置するアルザス地方(現フランス)のコルマールにあるウンターリンデン美術館収蔵
 Isenheim Altarpiece, around 1515, Unterlinden Museum, Colmar.
(元ドミニコ修道院)

Mathis Gothart Grünewald 016
Mathis Gothart Grünewald 018

Mathis Gothart Grünewald 015


Isenheimer Altar, ehemals Hauptaltar des Antoniterklosters in Isenheim/Elsaß,
Festtagsseite, rechter Flügel: Die Versuchung Hl. Antonius
Mathias Grünewald (c. 1470–1528)

Mathis Gothart Grünewald 023
Isenheimer Altar, ehemals Hauptaltar des Antoniterklosters in Isenheim/
Elsaß, Werktagsseite, Mittelbild: Kreuzigung Christi

図3.Lucas cranach the elder (german, 1472-1553)

byhttp://mementmori-art.com/
マルタン・ド・ヴォス(1532~1603)
表記Maerten de Vos マールテンフォス (wikimedia)
アントワープAntwerpen(ベルギー)に生れヴェネチアに死す
ヤン・ド・コック
ライデン美術館蔵https://www.holland.com/
(p112)ボス以降、16世紀後半、主人公は 聖人から怪物へ
二 アントニウス信仰(p113~)

3世紀にエジプトの砂漠で修業した禁欲の隠者
4世紀:聖アタナシウスSt.Athanasiusによる『アントニウス伝』
13世紀:ウォラギネVoragine『黄金伝説』奇病「聖なる火」アントニウス修道会施療院
エミール・マール『中世末の宗教美術』「この厳しいまなざしを持った偉大な老人は、足下に炎を置いた火の主人であった」

ピーター・ブリューゲル『聖アントニウスの誘惑』(1556)
tabbytravel.com/plginrt-project.com/
三 聖アントニウスの火

医学的研究: 18世紀になり、壊疽による「麦角中毒(Ergotism)」であったことが判明
ニコラス・マニュエルの誘惑図の別の一点は、この幻覚による狂乱の患者を描いたものと思われる(図10)
目をおおうよう肉体の苦痛が、怪物の形を借りて表現されたとするならショーンガウアーに始まる空中での殴打の場面は、この病気に伴った筋肉の突っ張りや、四肢の引きちぎられる痛みに対応するものであろう。
16世紀中頃から現れるボス・リヴァンヴァルの作品や近代以降のものでは、この点が徐々に抜け落ちて、もっぱら人間の想像力の生み出す図像にのみ、興味が限定されてしまった。(p120)

※(en.wikipedia)Ergotism

四 リスボン祭壇画の解読(p122~)

創作当時は薄暗い礼拝堂のなかで、ぼんやりと暗闇の中から怪物と聖人の姿が浮かびあがるものだったに違いない。

Hieronymus Bosch - Triptych of Temptation of St Anthony - WGA2585

Hieronymus Bosch  (circa 1450 –1516)
Dutch: De verzoeking van de Heilige Antonius
The temptation of Saint Anthony

Date circa 1500
Medium oil on oak
Dimensions Central panel: 131.5 × 119 cm (51.7 × 46.8 ″)
Side panels: 131.5 × 53 cm (51.7 × 20.8 ″)
Lissabon Museu Nacional de Arte Antiga(en.wikipedia) 
国立古美術館 Museu Nacional de Arte Antiga(MNAA) taptrip.jp

Jeroen bosch verzoeking van sint-antonius (left panel)

外翼パネル

※https://footage.framepool.com/で見ることができる)

図解A(図11a p124)

左右両画面面とも、キリストをテーマにし、捕縛と十字架運びが
グリザイユ()という灰色の淡彩画で描かれている。

キリストとともに処刑される善悪二人 、キリストの姿はともに小さく、それを取り巻いてあざけり攻め立てる人の群れは祭壇画が開いたときに展開する聖人とそれを取り巻く怪物に対応する。

外側のキリストの受難と内側の聖アントニウスの誘惑の図像の対応・・聖アントニウスへの信仰がキリストに匹敵するほど高まったいた事を意味する。
外翼の現実的なキリスト受難の場面は、扉を開けることによって聖アントニウスの幻想的世界に変貌していく。(p127)


図解A(図11b p125)

前景 ペテロに耳を切り落とされようとするマルコス
財布を持って去ろうとするユダ

左翼パネル

TemptationStAnthony-left

「聖人への直接の攻撃を主題にしたもの」(p134)

封筒を口に加えた猫背の鳥の怪物:漏斗を逆さに被り、
先から出た枯れ枝には振り子がぶら下がり、スケートのそりを履く(怠惰なメッセンジャー)

「背中に追われた教会の塔や車輪 のついた魚のイメージは15世紀の装飾写本にしばしば現れる。 」
※ボスの怪物フィギュアmementmori-art.comkarapaia.com

Hieronymus Bosch 005

図解B(p128)
アスピドケローネAspidochelone ボドリアン美術館
ギリシア語で「蛇亀」
the-devil-in-the-deep-blue-sea/

右翼パネル

図解C(p133)
「聖人の欲情に仕掛けてくる悪魔」


中央パネル

図解D(p139)

Temptation of Saint Anthony central panel by Bosch
Central panel of a triptych depicting The Temptation of Saint Anthony. The central figure of this painting, Saint Anthony in his blue monk's habit, is beset by a large number of demons and devils. He looks in the direction of the viewer while being turned to a crucifix placed inside a tower ruin.   

(a)キリストの出現
(b)「魔術師と切られた足(p142) (c)寄り添う女と聖杯
(d)グリロ(頭と足だけの怪物)


図22 グリロ頭から赤いマントを被ったグリロ(✳)という怪物
命名:アンティフィロス(コオロギと豚を意味する)
歩行器に乗り、風車のおもちゃをもつ、老人でありながら幼児(「錬金術の子」(ジャック・コンブ))

(e)サバトと黒ミサ
(f)「 水」と「土」
(g)「火」と「大気」

ボスの描く怪物の特徴

1、宗教的な聖なる主題を悪魔的に変換させたものが見られる
2.ボスが好んで用いたいくつかのキーサードが怪物表現に認められる
ヘラサギ、バグパイプ、卵、船、ジョウゴ、酒壺、枯れ木、魚、ヒキガエル、豚、ネズミ・・
3.しばしば性的暗喩を含んでいる。これは現代的なフロイト的な文脈で見るより当時のエネルギッシュな民俗的欲望としてみる方が良い。
4.胴体を持たない頭と足だけの怪物ぐいっろが、ことに頻繁に現れる。 (p160)

人体が動物や植物、さらには日常の道具と結びつけられてきわめて個性的な怪物を生み出す

むすび

見えないものを見えるようにする点に、絵画の勝ちを置くことがある。
ホイジンガの言うように、中世末のネーデルランドは、すべての想念を目に見える形にしてしまった時代であり、ボスの誘惑図もその延長線上にあった。そこでは怪物は描かれることによって実在化していった。
見えるということは、つまり人間の思いつく範囲のもの、つまり人間の理性によって支配されたものに他ならない。つまり怪物の造形は、いわば恐れの緩和でさえあった。(p162)

me以上で起承転結、 怪物のイメ―ジを読む・・であった・・

補遺→もう少しヒエロニムス・ボス

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LastModified: 2020年

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