唐草図鑑
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聖書の生んだ名画

キリスト教美術

『聖書の生んだ名画』保坂 清
玉川大学出版部 (1992/12/1)


内容(「BOOK」データベースより)

西欧の人びとの生活に深く浸透しているキリスト教、聖書の世界。そこから生まれた絵画や彫刻など優れた美術作品のもつ本当の意味と価値、そして聖書的背景がいま、明かされる。
今日の文明の基礎になった「キリスト教的精神世界の背景」、つまり聖書的背景を知らせたい。それを知ったうえで、優れた西欧の美術作品の前にもう一度立ってほしい。そうしたら、名作というもののもつ本当の意味と価値がわかってもらえるに違いない。そういった著者の願いがこめられている。

作品59項目

/聖書以前と聖書以後/天地創造(ミケランジエロ)/バベルの塔(ブリューゲル)/イサクの犠牲(ギベルティ)/スザンナと長老たち(ヨルダーンス)/エゼキエルの幻想(ラファエルロ)他/キリスト教の誕生と美術のひろがり/聖誕(ラ・トゥール)/カヤパの審問(アンジェリコ)/カナの婚宴(ヴェロネーゼ)/最後の晩餐(ダ・ヴィンチ)/嘲笑されるキリスト(マネ)/アヴィニョンのピエタ(クァールトン)/聖書からみたルネサンス/春(ポッティチェルリ)/受胎告知(アンジェリコ)/五旬節(グレコ)/他

Ⅰ 聖書以前と聖書以後

 この章の14項目を以下に見ます‥


天地創造(ミケランジエロ)

Sistine Chapel ceiling photo 2
Sistine Chapel ceiling
旧約聖書第一章一節 初めに神は天と地を創造された

Sistine Chapel ceiling diagram

Creation of Adam

 2017年5月31日、ヴァチカンでの感想の第一は、その広大さと貪欲な収集とグリザイユ技法とであった。
システィーナ礼拝堂では、見上げるばかりで、本などで見ていたものの存在を遠く確認するだけであった。
この本で、天地は自然物でなく、「創造されたものであるという宣言」が、人間を地上の権力者の支配から解き放とうとする「神の意志」が描かれたということをまずしっかり見ておかねばならないという。(p17)
天地の創造という、厳粛で重大な「事実」が描かれたと。 



ロトとその娘たち(ルーカス・ファン・ライデン)

Lucas van Leyden - Lot and his Daughters - WGA12932
Lucas van Leyden (1489頃~1533)- Lot and his Daughters
ルーブル美術館(パリ)
創世記第19章  ソドムとゴモラの町
人間の生存における深刻な状況と男女の欲望の倒錯した心理

 格調高い「天地創造」の次は、私には聖書で最も不快なこのエピソードであった。ヨブの物語とともに解せない話であるが、西欧では重要な意味を持つという。
私には不可解だが・・
ルーブルには6回行ったが、記憶にない。
なお、ローレンス・ゴドウィンの『ルーブル美術館の絵画』(高階秀爾訳 中央公論社1991)によれば、
この絵は レイデン作と書かれておらず、アントワープは又はレイデン派(SCOOL OF ANRWERP OR LEIDEN)の作で、(1500/50)48×34㎝、1900年購入(p232)とある。ルーカス・ファン・ライデン名義では、p241に「女占い師」という、さらに小品(24×31㎝)があった。


バベルの塔(ブリューゲル)

Pieter Bruegel the Elder - The Tower of Babel (Vienna) - Google Art Project
ウィーン美術史美術館16世紀 創世記第11章
ブリューゲルの意図は「人間の偉大さ」の誇示にあった(p26) 

 この絵の解説には非常に驚いた。

まことに意外なことに、全能の神は私たちがしばしば呼び掛けられる人間同志の「一致団結」を望んでおられず、むしろそれが破られ、散り散りになり、常に最小の単位としての「個」に戻って神と対面し、生きていくことを求めておられる、と思って下さい。(p25)
「バベルの塔」はその建設の動機において人間の団結とか集団の能力を誇り、それを象徴するものだえあったがゆえに中止され「永久に不可能なもの」の象徴となったのでした。

 これは人間の倨傲を叱るものではなかったのか。一般的解説として、コトバンクなどの辞書では、傲慢に対する戒めや、実現不可能な計画の意にも用いられるとある。
その説の可否はともかく、今まで 本当に「辞書的」で浅い理解であった、と思った。


イサクの犠牲(ロレンツィ・ギベルティ)

Wga ghiberti sacrifice of Isaac
Ghiberti's winning piece for the 1401 competition.
国立パルジェルロ美術館(フィレンツェ)
創世記第22章
https://firenzeguide.net/firenze-san-giovanni-nord/

 この絵のテーマは私には全く通じない、わからないものです。「正しい神を信じることこそが生きるということの本当の意味である」ことがのっぴきならない形で示されている、とあるが。(p28)
「人はパンのみで生きない」という言葉の続きは「マナ(神の言葉)によって生きる」ということです、とある。(p30)「信じるものは幸いである」というのは確かだろう。


Nicolas Poussin 073エリエゼルとリベカ(ニコラ・プッサン)


創世記第24章
エリエゼルとリベカ (Eliézer et Rébecca) 
Nicolas Poussin 1594-1665
1648年 118×197cm
ルーブル美術館

 イサクの妻を、この地=カナン(現在のイスラエル、忌むべき異郷の地)でなく、親族の地=カルデア(現在のイラク)のウルから娶るため、アブラハムが僕(しもべ)のエリエゼルに頼む。エリエゼルが泉で水を所望尾すると一人の娘リベカが望んでいた言葉を返す・・という物語・・


モーゼ像(ミケランジェロ)


photo byM 20170603

 この聖堂、ちょっとした丘の上という感じのこんなところでこんなふうにこちらをみていました。


サン ピエトロ イン ヴィンコリ ローマ ミケランジェロ 墓
San Pietro in Vincoli, by Michelangelo Buonarroti
en.wikipedia )これについて →モーゼの角へ。


ローマ地下街の掲示
出エジプト記第2章
サン・ピエトロ・イン・ヴィンコリ聖堂(ローマ)
https://www.musey.net/8930


筆記するエズラ(写本)
ラ・ワレンツィアーナ図書館 (フイレンツェ)

CodxAmiatinusFolio5rEzra
Medieval illumination depicting the scribe Ezra
restoring the Old Testament (4 Ezra [= 2 Esdras] 14: 41-48;
from the 8th century Codex Amiatinus)
ラウレンツィアーナ図書館Biblioteca Medicea Laurenziana
manuscript.html

6~8世紀にかけて、キリスト教美術には多くの福音書記者の姿が描かれている。「筆記するエズラ」は旧約聖書のあらわれる祭司で、珍しいものに属する。
エズラ=多くのイスラエル人やレビ人が異邦人の女を妻としていたことを責める厳格な祭祀
多くの福音書記者の原形となる絵


妻に辱められるヨブ(デューラー)


Albrecht Dȕrer(1471-1528), Job and His Wife,
c.1504, oil on panel, Städel,
Frankfurt, and Wallraf-Richartz Museum, Cologne
シュテーデル美術館(フランクフルト)
https://geosk.info/.pdf

 著者は、この絵で別に夫を辱めているように見えないと言っている。ヨブの物語、つらすぎるから、これはいいかも。


壁の文字を見るペルシャザル(レンブラント)

Rembrandt - Belshazzar's Feast - WGA19123
ダニエル書第5章25節
書かれた文字「メネ、メネ、テケル、ウバシン」
(ベルシャザル王の時代が終わった、王国は分割される)
Rembrandt (1606–1669) : Belshazzar's Feast
ベルシャザルの酒宴(壁の言葉)」(レンブラント画、ナショナル・ギャラリー)

 う~~ん。これってなんの意味があるのか?と思ったが、数々の芸術作品のモチーフとなり、ハイネも詩に書いた。(wikipedia
「近い将来に発生する可能性のある大変動の兆候に無知」であること・・
「壁に書いてある」という慣用表現の原点であるという。


スザンナと長老たち(ヨルダーンス)

(Susanna and the Elders)
正典(カノン)でなく外典の「スザンナ物語」
ベルギー王立美術館(ブリュッセル)
ヨルダーンス(1593‐1678)

 この絵はこちらで見られます。
http://mementmori-art.com/


エゼキエルの幻想(ラファエㇽロ)

Raffael 099
Raphael (1483–1520) Ezekiel's Vision
”主の日、雲の日、異邦人の滅びの時"
ピッティ美術館(フィレンツェ)

 エゼキエル書:新約の『ヨハネの黙示録』に似た背景


ピッティ宮殿20170611 Photo byM


あまりに高名なる名画が多く、不在の名画に癒された日!?


木陰に憩うヨナ(レリーフ)

65700 Dokuzağaç-Gevaş-Van, Turkey - panoramio (9)
正十字架聖堂(アクタマール/トルコ)
Cathedral of the Holy Cross, Aghtamar


Church on Akhtamar Island (Exterior Wall)
Armenian Cathedral of the Holy Cross on Akhtamar Island
Ricinus communis5
トウゴマ(唐胡麻、学名:Ricinus communis 別名ヒマ)

ヨナ書口語訳(wikipedia) とうごまの木

 この聖堂の外壁のレリーフのユニークさ精緻さには驚きました。トウゴマは夏には2メートル近く成長するようだが、一説ではヒョウタンのことだったという。(wikipedia


目をつぶされるサムソン(レンブラント)

Rembrandt Harmensz. van Rijn 041レンブラント『目をえぐられるサムソン』1636年
レンブラント『目をえぐられるサムソン』1636年
土師記第16章
フランクフルト市立美術館

水浴するバテシバ(メムリンク)

Hans Memling 009
Bathseba im Bade 1480年頃
ハンス・メムリンク (1433年頃 –1494)
シュツットガルト州立美術館

ダビデが家臣ウリアの妻バテシバの水浴を見て懸想し、夫のウリアを危険な前線に出動させ戦死させてバテシバを妻にしてしまう。神は二人の間に生まれた最初の子の命を奪う。しかし二番目の子は史上に名高いソロモンであった。(旧約聖書の『列王記』に登場する古代イスラエルの第3代の王。古代イスラエルの最盛期を築いたとされる)

 ソロモンの母であったとは!・・しらなかった・・・



 以下更に、章別に見ていきたい‥
『聖書が生んだ名画』

→Ⅱ キリスト教の誕生と美術の広がり  20200818
→Ⅲ 聖書から見たルネサンス
→Ⅳ 聖書と近代絵画・そして現代

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