モーセ(紀元前13 世紀ころのイスラエルの指導者)
モーセに角がある図であるが・・・Wikipediaに詳しく、尾形希和子さんの説も早速載っていた・・(20150505参照)
=======以下引用=======
中世ヨーロッパ美術においては、ミケランジェロの彫刻やレンブラントの絵画にみられるごとく、モーセはしばしば角のある姿で描かれるが、この理由には二つの説がある。
一つは、ヴルガタ訳の描写をもとにしたためだというものである(『出エジプト記』 34:29-30, 35)。元来、ヘブライ語には母音を表す文字が存在せず、ヘブライ語で「角」を意味する語は「輝く」という意味にも解釈可能であり、現在の『聖書』翻訳では一般に後者の意味で訳出されている。
もう一つの説は、ヴルガータとは関係なく、モーセの顔が光り輝くのを角のような形で表現したというものである。フランスの美術史家のエミール・マールは後者の説をとり、最初典礼劇でそのような表現がなされたものが絵画や彫刻にも影響を与えたと考えている。
一方、日本の尾形希和子は前者の説をとりつつも、12~13世紀のイングランドの教会法学者ティルベリのゲルウァシウス(英語版)の著書中に「モーセの角の生えた顔とは、すなわち彼の顔から輝く光が出ていたから」とあるのを紹介している。他の中世人の著作を見ると、クレルヴォーのベルナール『雅歌講解』にも件の場面でモーセの顔が光り輝いたということを前提としている記述がある。
聖書学者の関根清三は、著書
において上記と異なる見解を述べている。
『「光り輝いている」と訳したヘブライ語はカーランという動詞で、用例が「角のある」という意味であることは確かである。カーランはケレンという名詞の派生語と思われるが、名詞の用例は たくさんあって、その意味が「角」であることははっきりしており、牛との関連で使われている詩篇の動詞形の意味も「角のある」といったあたりに自ずと定まるからである。
そこで 出エジプト記の方のカーランも、旧約のラテン語訳・ヴルガータではこれと呼応して cornutus(角のある)と訳しているのである。それに対し、ギリシア語訳・ セプトゥアギンタ(七十人訳)はdedoxastai(光り輝いた、栄光化された)と意訳した。
近代の翻訳も日本語訳を含め、「顔の肌」から角が生えるというのはそれこそ面妖であるので、 みなセプトゥアギンタの方にしたがっているのである。』
なお、牛や山羊や羊などの角は「豊穣=富と子孫繁栄の象徴」であり、(ギョベクリ・テペの遺跡などから推測されるに、おそらく紀元前10000年の)太古より、ユーラシア大陸の各地に、豊穣神たる「角を生やした(主に牛の)神」への信仰があり、儀式の際に角の被り物をするなど、カーランを「角のある」と解釈することは、むしろ正統な発想である。異形なる角は、その存在が善(神)であれ悪(悪魔)であれ、人を超えた、人ならざる神聖な存在であることを示す、表現方法なのである。
======以上引用byWikipedia======
『教会の怪物たち』「翻訳時の混乱が生む怪物」p119(尾形希和子著)では、「顔から光線を発している」、と「角を生やしている」というのは同じ言葉、であり、「モーセの顔の栄光」・・=角の聖性であるが、その後モーセの頭に角のある図は廃れたという・・
「モーセの角は、 言語上の誤解(翻訳の際の齟齬)が、ゲルマン民族の習俗の中に見られる象徴性と合致した例である」⇒romanesque_ogata3.html
・・ということなのであるが、、関根清三さんの著書『旧約聖書の思想 (講談社学術文庫)』(2005)も読んでみたいと思う・・
"Moses and Korah"
by Brother Maciej and Master of the Lady with Unicorn - Andrzej Kłossowski (1990).
"William de Brailes - The Israelites Worship the Golden Calf and
Moses Breaks the Tablets (Exodus 32 -1-19)
"William de Brailes - The Eighth Plague -
Walters Art Museum: Home page Info about artwork.
https://pixabay.com/、https://matome.naver.jp/
サン ピエトロ イン ヴィンコリ ローマ ミケランジェロ 墓
San Pietro in Vincoli, by Michelangelo Buonarroti
(en.wikipedia )
2017年6月3日
Photo byM.N.
私の写真絵はイメージが違いますね(思慮深そうだが優し気)
Palazzo Farnese (Rome) (photobyM.N.20170602)
こちらはファルネーゼ宮殿で見た「シレノスSilenus」そうだが、角っぽい装飾があった。
これはギリシアのディオニュソスより前の古い素朴なワイン造りの神だそうで、
角に見えるのはブドウの房のようだ。
Drunken Silenus. Parian marble,
Roman artwork of the 2nd century AD.
May be inspired by the Pouring Satyr by Praxiteles.
ルーブル所蔵 H. 1.41 m
『教会の怪物たち』p119
11世紀のイングランドの写本「エルフリックの写本」(角のついた被りもののモーセ)
12世紀のイングランドやザルツブルグの写本(頭から直接生えている)
(Ruth Mellinkoff(1924-2011),The Horned Moses in Mediaval Art and Thought University of California press,1970)
この本はhttps://books.google.co.jp/で読むことができる
ミケランジェロのモーセへの言及の他、『教会の怪物たち』p119 に挙げられたモーセ像
図3-15ヨークのセント・メアリー修道院(St Mary's Abbey)由来のモーセ、
⇒ ヨークシャー美術館Yorkshire Museum 蔵、1280年頃
この修道院は美しい廃墟のようだ
図はRuth Mellinkoffの本の最後の方にあるfig.58でも見られるhttps://books.google.co.jp/
"Moses repeated the commandments to the people (detail)" by a Carolingian book illuminator circa 840
Weltchronik Fulda Aa88 091v detail
2019年6月15日Dijon(仏蘭西) 旧シャルモン修道院にて
photo byM.N.
旧約聖書の 6つの預言者像(2003年修復)
Claus Sluter(1355 - †1406) 作