遅まきながら、 「ものと人間の文化史」というシリーズで、矢野憲一さんの「杖」を読了。
1998年法政大学出版刊です。
このシリーズには、吉野裕子さんの蛇の本(※)も
あり、
今アマゾンで見たら、矢野憲一さんの本がまだまだいろいろ、このシリーズにありました・・・「民俗学」という‥
杖とこのサイトのテーマ=唐草との関係は
唐草・聖樹聖獣文様に関わる、蛇の図像に関わりがあること。
※ 蛇のイメージ
平凡社世界大百科事典を見たが、杖の民俗としては、占有権を表すとあり。
境界を限
る牓示(ぼうじ)
としての役割
神が杖を依り代として降臨してくると考えられていたから(大貫良夫)
もう一項
カドゥケス(caduceus(ラテン語)
ギリシア語のカリュクス(karyx=伝令)から派生したと思われ所持者を守る力がある。
ここで WEB検索。
矢野さんの網羅的な著書に比べ、
Wikipediaは全然アサイ ! という感じですが、
杖(wikipedia)(2010-01-30閲覧) からちょっと抜き書き
目次(Wikipedia)
* 1 象徴的な使用
* 2 礼装的な使用
* 3 魔女、魔術的な使用
* 4 奇術師による使用 (ケーン)
* 5 仏教における杖
* 6 キリスト教における杖
* 7 武術としての杖
* 8 刑具としての杖
* 9 登山用の杖
* 10 その他の杖
* 11 その他
ほかのWikipedia項目には3つ、
高位聖職者がその位を象徴する杖として、 権杖(けんじょう)(正教会)、 司教杖(カトリック)= 牧杖あるいはバクルス(パストラルスタッフ)ともいう(聖公会) 杖(その3)へ
鳩杖(はとのつえ)=鳩杖(はとのつえ)は、頭部の握りにハトの飾りがつけられた杖である。高齢者に、その長寿を賀するために、下賜され、あるいは贈呈された。
ヘルメスの杖の 2匹の蛇
大地の治癒力を伝える蛇の絡んだ杖を持っていた。 最もよく知られているカドゥケスは、ヘルメス神の持物で、 ヘルメスはこの杖を印として、冥界・地上界・天界を往復し、 神々の相互の意思や、特にゼウスの命令を伝える伝令の役割を果たした。
|杖(王笏)・・・イギリスの戴冠式の杖、
王笏(Septre)は2本、
エリザベス二世のドレスの文様 リーキ|
|
杖(エジプト)プタハ神の笏|ウアス杖蛇除けの杖(Ouas),|
|アロンの杖(アーモンド、マムシグサ)|ヤコブの杖(巡礼杖)|杖(黙示録/司教杖/権杖/モーセの杖)|テュルソス(バッカスの杖)|
以下「杖の民俗学」目次読書・抜き書きです・・
内容(「MARC」データベースより)
神の依代としての杖や仏教の錫杖に杖と信仰とのかかわりを探り、人類が突きつつ歩んだその歴史と民俗を興味深く語る。多彩な材質と用途を網羅した杖の博物誌。
[BOOKデータベースより]
「杖をつき」、「杖を頼り」に歩んだ人類の歴史を辿り、杖と民俗・信仰のかかわりに「杖の探り」を入れる。
第1章 杖の謎(杖のはじまり;杖とは何ぞや ほか);
第2章 神の杖・仏の杖(杖のいろいろ―古代~中世;神は杖つき伊勢に来たまう ほか);
第3章 杖の民俗学(杖立伝説;卯杖の行事 ほか);
第4章 すてきなステッキ(杖のいろいろ―近世;西洋の杖の象徴するもの ほか);
第5章 とことん杖を(杖のことわざ;杖の迷信 ほか)
矢野憲一さん:1938年三重県生まれ。国学院大学文学部日本史学科卒業。62年伊勢神宮に奉職。現在、伊勢神宮弥宜、神宮司庁文化部長、神宮徴古館農業館長。著書に「魚の民俗」「伊勢神宮の衣食住」など。
杖のはじまり
原始の道具の素朴な融通性のある
木の棒が、多目的な道具として活用されたことに始まる
雨宝童子(伊勢金剛証寺)の棒のような杖(棒との区別難しい)
杖とは何ぞや
クエスチョンマーク「?」・・・
下の点がアトム(地球)、その上の曲がったものは古代のlituus(錫杖)という説あり
疑問が杖で示されている
突く枝が語源ではなかろうか
(オシリス神 p9 図)
胸で交差した両手に
鉤杖と穀竿 (からざお) (王権の象徴) をもち,アテフ冠を頂く。
左手で王権を象徴する牧童の杖「ヘカ」
右手で穀竿( 穀類などを脱穀する道具)「ネケク」
アテフクラウンを冠り、ヘカ(王笏)と三つの殻が下 がっているネクハクハ(殻竿)を持った姿〝ヘカ〟という言葉は〝統治者〟という意味で、その使われ方の多くは魔法に関係している(https://makaula.blogspot.jp/)
バーバラ・ウォーカーの「神話・伝承事典」(大修館書店1988刊 The woman's dictionary of symbols and sacred objects (1983) )では、「キリスト教時代の初期の頃崇拝されていたあらゆる救世主―神の中で、オシリスは、細部において、ほかのどの救世主―神よりもキリストの像を発展させるために貢献した」とオシリスの項が始まる・・
本当にそうである・・オシリス神話
[司教の笏杖はオシリスの持っていた羊飼いの杖](p598)
古代の杖
日本の文献に杖がはじめて出てくるのは『古事記』
イザナギがまず最初に禊払に持っていた投げ捨てる
太古の旅や外出の必需品
杖と書いてミツエと読ませる(尊敬語)
(ミは霊と同根・・岩波古語辞典)
杖の考古学
茶臼山古墳古墳出土・・玉杖・・新石器時代以来、中国では軟玉(ネフライト)を愛好
『万葉集』の杖探し
杖衝きも衝かずもわれは行かめども君が来まさむ道の知らなく
丹生王
(「杖をついてもつかなくても、お迎えに行きたいけれどもあなたのかえっておいでになりそうな道がわからなくて」にふのおほきみ)
この杖はいずこの杖ぞ・・・
神楽
正倉院の杖
杖刀(ジョウトウ=仕込み杖)
呉竹鞘御杖刀 (くれたけのさやのごじょうとう)
(国家珍宝帳・・北斗七星・・聖武天皇の護身用品)
玳瑁(タイマイ=ウミガメ鼈甲)竹形杖
バチルという象牙彫刻、八角形杖
仮斑竹杖(げはんちくのつえ)
白銅錫杖
古代の杖刀人
(大君の側近ガードマン)杖のいろいろ―古代~中世
撞木杖(鐘や鉦を鳴らす) 鹿杖(かせづえ) 空也上人像(六波羅蜜寺) なぜ聖が鹿の角をつけた杖を持つのか・・・ 山中で修行中夜毎に鹿が来ていた。その鹿が 平貞盛に殺されたのを哀れに思い、鹿の皮は身にまとい角は杖頭に挿して鹿を偲んだという伝説 |
補足 WEB検索
鹿杖
■ 執筆者 柳田 国男
■ 論文名 杖の成長した話 https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiCard/2240293.shtml
神は杖つき伊勢に来たまう
二千年昔、垂仁天皇の皇女、倭姫命が天照大神の理想の宮地を選ぶために杖を手にされて長い旅をされた 憑依:物=ヨリシロ(依代)、人=ヨリマシ
モーゼの杖
コーランの原義・・・読まれるべきもの(アル=クルアーン)
20章『われはアッラーなり。われのほかに神はなし。ところでモーゼよ、何時の右手にあるものはそは何ぞや』
『これは杖なり、われこれにもたら、またわが羊のために木の葉をうちおとし、そのほかいろいろと利用いたします。』
『モーゼよ、その杖を投げよ
』
みよ、それは蛇に変じたり。
杖は民を導く道具
錫杖と 拄杖
仏教の錫杖と 禅僧の拄杖(しゅじょう)
次いで、(いよいよ)アスクレピオスの杖です
医学と蛇と杖の関係が認められる最も古い例
もう一つの薬学のシンボル、 ヒギエイアの蛇杯
「毒は毒をもって制す」蛇の毒を蛇の毒で治す?
↑ ヒギエイアの蛇杯 ↑
私が当サイトで自己イメージに使っているこれである
*地中海学会月報 277の表紙説明
https://www.collegium-mediterr.org/geppo/277.html
アスクレピオスと娘のヒュゲイア(ヒュギエイア)に奉納されたレリーフ(前325年頃ベルリン,古代ギリシア・ローマ美術コレクション)/師尾 晶子
*アスクレピオス医神の像
エピダヴロス出土(アテネ国立考古学博物館)
https://lemonodaso.exblog.jp/m2008-07-01/
*アスクレピオスの杖 asklepios.html
*ケリュケイオンの杖 hermes.html
*アロンの杖 アーモンドとアロンの杖almond.html
矢野憲一さんの「杖」の目次読書
杖立伝説
卯杖の行事
正月行事の牛王杖
新嫁のお尻を叩く粥杖
大師の杖
杖の占い
お祝いの杖
宮中杖と殿中杖
鳩の杖
国の栄えを祈る白杖
めでたい延寿杖
祭礼の杖
葬送の杖
杖刑と死杖の祭り
中国の杖の刑罰
杖の遊びー毬杖
杖と舞楽
余情(よせい)杖=使わないアクセサリーとしての杖、というのにおどろきました。そういわれればそういうものがあるはずだった・・
ちなみに「女性がアクセサリーとして杖を持ったのは11世紀で、15世紀に少し流行し18世紀に隆盛した」
「フランスでは、17世紀に紳士の不可欠のアクセサリーとなり、19世紀まで持続した」(p170)
西洋の杖の象徴するもの
ヨーロッパのおとぎ話、魔法使いのおばあさんの魔法の杖
シンデレラの庭のカボチャ・・妖精が杖を当てると四輪馬車に
ケルト神話・・魔法の杖に接触すると白鳥やブタにされる話が多い
杖は
stick
staff
cane
rod
crook
club
wand
crosier
caduceis
thyrsus・・・→テュルソス(バッカス関連の杖)
ギリシア語(※1)ではsceptron
のちsceptre(笏)ともなり、頼る(lean on)の意にもなる
魔法の杖:超人的な力の印
ギリシア神話のアスクレピオスやヘルメスの杖。
ユダヤ教のモーゼの杖(※2)、アーロンの杖(※3)・・
杖はものを生み出すもの
大地の祖霊や冥界の支配者を呼び起こし、
豊作を祈る呪具や、棍棒と同じように王者の武器とされた
豊穣、復活、再生、太陽、生命力、男根とさまざまな象徴とされてきた
魔法の杖・・・錬金術師や医者の杖
牧者の杖(古代の羊飼いが牧草地に羊の群れを追う指揮棒)・・・司教杖
神に導かれる巡礼の杖・・・聖人のシンボル、世界軸・宇宙軸
王の武器、軍の指揮者の杖・・・力と権力と慈眼
のシンボル
・・・古代ローマでは自分の歌が絶賛されたら嫉妬深い神にねたまれぬため
テュルソスという杖にジキタリス(※3)という植物を巻かねばならなかったという
・・その名残で今もツタや葡萄の葉やリボンを巻くデザインが多いという(?)
古代ギリシャの杖の先端に松笠のデザインがつくのがしばしば見られる
松は樹木の精霊(フレイザー「金枝篇」)
松の緑永遠と生命保持のシンボル
南欧末の松笠の種子は食用
酒も醸造されツタやイチジクと同様、豊穣多産の象徴だった
ジギタリスを巻くというのが不明・・他の文献で見た覚えがない(20180302現在)
日本人とステッキ
杖の効用
現代の杖と杖の使い方
盲人の白い杖
同行二人の遍路杖・巡礼杖
富士登山の金剛杖
ステッキ材のいろいろ
スポーツの杖と古武道の杖道
竹杖いろいろ
変わったステッキあれこれ
牛蒡の杖
麻の杖
松葉杖
警棒と警杖
仕込み杖とアイデア杖
ステッキの楽器
ガラスのステッキ
さまざまな杖
杖のことわざ
杖の迷信
杖の方言
三重県と杖
杖にかかわる地名
杖の名字と名前
杖の名の書物
杖の川柳
杖でない杖と杖にかかわる言葉
イタドリ(虎杖)Wikipedia杖のエピソード・アラカルト
ベートーベンの杖、夏目漱石の杖、志賀直哉の杖、水戸黄門の杖、御木本幸吉の杖 * ステッキ(杖)の専門店「『転ばぬ先の杖』」のお店
https://www.rakuten.ne.jp/gold/shop-zen/
<杖の種類と呼び方>
・鹿杖(かせづえ)・撞木杖(しゅもくづえ)
・鳩杖・錫杖(しゃくじょう)
・金剛杖(こんごうづえ)
・息杖(いきづえ)
・桑杖
・粥杖
「やや長めのテープを巻いたような縞模様の飾りのあるステッキ」 (矢野憲一)
p171の図)Wikipediaにもパブリックドメインで画像があります
外国奉行池田長発筑後守(1863年12月パリ滞在中撮影)
下の
【縞模様のツタンカーメンのステッキ】に似ている
こちら、杖というより腰につける飾りのようなもののようですが・・
漢代の官吏が邪気を避けるために佩びた呪飾。 四字押韻の文を刻する。 〔漢書、王 伝中〕夫(そ)れ劉(漢の姓)の字爲(た)る、卯・金・刀なり。 正 剛卯、金刀の利(銘の語)皆行ふを得ず。(コトバンク)
漢の王莽が始めたとされる風俗で、卯の日に悪魔を追う目的で腰にさす、モモの木や白玉・象牙などの四角・六角・八角の棒に呪文を刻んだ杖を指す。(weblio)20221031閲覧
卜文に蛇形のものを杖でうち、血の滴る形に記すものがあり、犠牲をうつことによって、自己が被ろうとしている禍を他に移し変更することを求める呪的行為を意味した。
のち呪文を記した呪飾を身につけることが行われた。
我が国の卯杖の源流を成すものであろう。(「字統」より)
卯杖(うづえ)コトバンク
中古、正月初の卯の日に悪鬼を払う意味で地面をたたくために、大舎人寮(おおとねりりょう)、諸衛府から天皇、皇后、東宮などへ献上した杖。年木(としき)の信仰に中国の剛卯杖(ごううづえ)の風習が重なってできたものと思われる。梅、桃、柳その他諸種の木を長さ五尺三寸(約一・六メートル)に切り、一本ないし三本ずつに束ねて奉る。
剛卯と違い、卯杖はしっかり、杖でよいようです。(20221031追記)