唐草図鑑
聖樹聖獣文様

古代ギリシアの
ケンタウロス

下のテラコッタのケンタウロスだが、岩波の「ギリシア美術」(ナイジェル・スパイヴィ著)のfig.35に出てきます。
エレトリア美術館蔵というのを、初めイタリアのエトルリアEtruriaだと勘違いしていた。エレトリアEretriaは、ギリシアのエウボイア島にある古代都市であるという。・・・


小像

人間の足

BCE 900


Terracotta Centaur from Lefkandi, Eretria (Euboea), c. 900 B.C.
レフカンディ出土前900年頃テラコッタ高さ36㎝
エレトリア考古美術館蔵

紀元前900年!
いままで見てきたものよりずっと古いもの。幾何学文様が描かれている、胸の斜め格子は鎧の描写のようで、肩あてもそれらしく見える。
「獣頭人身の生物はなじみ深いのだが、人頭獣身の生物はまだよく見ていない」と思いましたが、これは先行する古代エジプトや古ヨーロッパの話で、獣頭人身が多く、その後の希臘神話になってから人頭獣身が増えたというσ(^^ゞ思いこみ・・人頭スフィンクスなどはエジプトにもありましたが・・
「環境の中の多様な普通の動物の一種(自然)」⇒ [おのれの動物部分と戦う複合生物(悲喜劇)] ? ケンタウロス(半人半獣ということ ・・・・そういったことは、のちの話で?

小学館世界美術大全集(1997) 西洋編3
・エーゲ海とギリシア・アルカイック
テーマ特集 からの言及

ギリシア神話の空想動物とその図像
前田正明

これについて興味深いのは、前8世紀からアルカイック後期に帰されるほどんどのケンタウロスの図像が、石灰石や大理石の丸彫りの像では同時代のクーロス像のように全裸で直立する男性の姿で表され、腰から後ろの馬の後部が加えられていることである。
したがって男性の性器が像の前面と馬の後部の双方に表されている。

この美術全集の巻に載るケンタウロスは
図84が前にあげた前900年以前のレフカンディのもので、
その他に


図76 のケンタウロスを退治するヘラクレス(復元図)
Reconstruction of Herakles Slying Centaur(aftere K.Fittschen)


前750~700年頃 オリュンピア(?)出土 ブロンズ 高さ11.3cm
ニューヨーク、メトロポリタン美術館
Herakles slaying Centaur. From Olympia(?)
The Metropolitana MUseum of Art, Nes York,Mrogan Gift

同じ彫刻に対して戦闘図と挨拶図というように全く正反対ともいえる解釈が成り立ちうるのも、状況的な描写より、物事それぞれの本質的な姿を描こうとする幾何学様式時代の造形の在り方に由来する。つまり「戦闘」という状況は、短剣とか振り上げた木の枝といった小道具(記号)による説明にとどめ、それよりも人体なり動物なりの門来あるべき形の表現を優先している
(by水田徹解説)


図100 金属装身具の、獲物を手にしたケンタウロス(および動物たちの女王)
前620年頃 ロドス島出土 金 高さ各5.7cm @パリ ルーブル美術館

ロドス島カミロスの墳墓群で出土した金属胸飾り
(同じカミロス出土の類品の紐まで残っている完品は大英博物館にある)
板の下には柘榴をかたどった吊り飾りがついている
典型的なダイダロス形式(髪型、着衣)くい
ケンタウロスも腰にバンドを締めている。
ケンタウロスの場隊は小寸法人も関わらす四肢の動きや筋肉が写実的にとらえられており、幾何学様式時代のケンタウロス像(図76)との制作年代の差が表れている

https://www.namuseum.gr/collections/vases/archaic/archaic05-en.html
図108 「ネッソス画家のアンフォラム」(ネッソスを退治するヘラクレス)(前600ー前590年)

図157 フランソワの壺(B面)→centaurus_greek.html

図175 アテナ神殿エンタブラチュア前540年頃アッソス出土イスタンブール考古博物館
Entablature of the Temple of Athena. From Assos.ARchaeorogical Museum of Istanbul

以上、世界美術大全集(小学館1997) 西洋編3巻の、メインの全224図中で、5図がケンタウロス関係

590-580 BC

Centaure de Vulci

こちらはギリシアでなくイタリアのエトルリア博物館蔵
これは、幾何学文様などがあったのか分かりません・・
時代区分はアルカイック時代になりますが・・

Centaur of Vulci  ブルチのセントール

From Wikipedia The Centaur of Vulci is a statue of the Etruscan Orientalizing period discovered in Vulci in Etruria viterbese and kept in the National Etruscan Museum of Villa Giulia in Rome.
The statue was discovered in a camera tomb in the necropolis of Poggio Maremma in Vulci Archaeological Park.
フリーズ彫刻

432 BC

ケンタウロマキア(希臘語:Kentauromachia)

マキアとはギリシア語で戦いという意味であるという。
ギガントマキア、ケンタウロマキア
・・・

Elgin Marbles London 160.jpg
"Elgin Marbles London 160" by Urban - Own work (Own picture). Licensed under CC BY-SA 2.5 via Commons.

ギリシャ、アテネのパルテノン神殿にあった大理石のレリーフ
パルテノン南側メトープ
エルギン・マーブル[大英博物館蔵]

A History of the World in 100 Objects
27. Parthenon sculpture: Centaur and Lapith

https://www.britishmuseum.org/explore/a_history_of_the_world/objects.aspx#27

『100のモノが語る世界歴史』ニール・マクレガー著(p248)
Neil MacGregor

パルテノンの彫刻は、神々、英雄、教訓譚などから成るアテナ人の世界観を表すために作られており、神話と日常生活から題材を得た複雑な場面に織り込まれている。
アテネ人であることは何を意味するか。精神的にも肉体的にも人間であること。新しい視覚言語の最初で最高の成果。

メトープに描かれているのは戦いばかりだ。オリンポスの神々と巨人との間の戦いや、アテネ人とアマゾン族との戦い、そしてラピテース族━ギリシア人━とケンタウロスの戦い。

メトープで見るケンタウロスとの争いは、アテネの人々にとって、すべての文明国が戦わなければならない果てしない戦いの象徴となっていた。理性的な人間は、凶暴な非理性と戦い続けなければならないのだ

この彫刻を特に選んだのは、短期的には必ずしも理性が勝つわけではないという苦い洞察を与えてくれうからだ。
激しい争いは実に見事なバランスで描かれているので、勝ったのはふんぞり返る半獣ではなく、争いを美にかえられるアテネの芸術家だと言える。

ギリシアのケンタウロスというと、パルテノンフリーズのケンタウロマキア ・・だが。
これについて大英博物館とBBCによる世界史プロジェクト A History of the World in 100 Objects(2010) の27に 挙げられている。このプロジェクトは、大英博物館が詳細なサイトを作っている ほかに、Wikipediaでも、その一々をリストにしているのは驚きだ。
それに下記の見解も、なるほど。

『100のモノが語る世界の歴史』ニール・マクレガー著1-(p251)

古代ギリシャは、紛争、あるいはその勝ち負けといった観点から様々な問題をとらえる世界です。(メアリー・ビアーズ)

紛争の絶えない社会であり、世界の中でアテナが占める位置を考える場合、あるいは彼らが征服した人々や、嫌悪していた民族との関係を考える上でアテネ人がとった方法の一つは、「敵」や「他者」をある意味で、人間ではないという観点から見ることでした。つまり、パルテノンにあるのは、自分たちの敵の「異質性」を理解する方法なんです。

メトープを最もよい意味で解釈すると、英雄たちの紛争は秩序を保つために必要だと考えることになります。

よい意味で解釈しておく・・・ことができない場合であるが・・

パルテノンは神殿と呼ばれているが、実際には宝物庫になっていた、ぺルシャに対するギリシャ防衛費を賄うための金庫だ。だが、やがてアテネがギリシャの都市国家の頂点に立つと、この軍事費はアテネが他の都市国家に要求する見かじめ料となった

アテネの支配下に置かれた人であれば、これが服従させられた立場を明らかにする建物であることが明らか。

パルテノンに関する多くの驚くべきことの一つは、ここが様々な時代に、様々な人々にとって、じつに様々なことを意味していたことだ。

A History of the World in 100 Objectsの27番目のパルテノンの次の  28盤は バス―ユッツのフラゴンだが、なお、27からの話は続いているようだ

Basse Yutz Flagonsで France c. 450 BC
このパルテノンと同じ前5世紀のケルトの遺品。1927年発見

「粗野な北部ヨーロッパは文化的な南部を賛美してやまない」といった画一的な見方、2500年以上もさかのぼるステレオタイプの通説の弊害をいう。
ギリシャ人は野蛮で暴力的という「ケルトイ」のイメージを作り上げた
古代のケルト人を理解するうえでの問題はまた19世紀のイギリスとアイルランドの画一的な見方によっても更にゆがめられている。
難題は、 伝説のでっちあげで事実をゆがめるナショナリズムの靄を抜けて、事物にその立場とそれ自体の遠い過去の世界をできる限り明確に語らせることなのである。(byニール・マクレガーp261-262)

AC marbles.jpg

"AC marbles". Licensed under CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons.
Centaur and lapith in combat, in London

High relief metope from the Classical Greek Elgin Marbles. Some front limbs are actually detached from the background completely, while the centaur's left rear leg is in low relief.

パルテノン神殿には72枚高浮かし彫りメトープ(長方型の彫刻小壁)がある。
この様式は従来、神に捧げる奉納の品を納める建物にのみ用いられていた。
建築記録によると、これらは紀元前446年から440年の間に製作されたとあり、彫刻家のカラミス (Kalamis) がデザインしたと考えられる
メトープは、身体運動を筋肉でなく輪郭で制限している戦士の表情や、ケンタウロスの伝説像において静脈まで忠実に表現した様を分析した結果から、厳格様式(en.Wikipedia)を現在に伝えるものと判断された

ケンタウロマキアの他の神殿のレリーフなどなお出ているので下に追記します

ラピタイ人とケンタウロスとの戦い 
オリュンピアのゼウス神殿西破風
前460年頃 大理石 オリュンピア考古美術館
Temple of Olympian Zeus (図133,134)Olympia Archaeological Museum
https://www.olympia-greece.org/museum.html

20130824_grecia_105b

確実なのはケンタウロスと戦うギリシア人のイメージ━さらに特徴的なのはケンタウロスと戦う重装歩兵━がペルシア戦争中およびそれ以後の様々な表現手段における共通のモティーフとなったことである(p225)


世界美術大事典(小学館):ギリシア美術 図10

展示左のケンタウロスが捕えているラピタイ人の花嫁、文献で見ると・・


「前5世紀最大のゼウス神殿ぺディメント彫刻は、ブロンズ像で表現することになれた美術家の作品と思われる」

陶器画

前8世紀8th-century BC pottery

こちらの陶器画は前10世紀( 幾何学文時代)左右対称で真ん中に※に丸とは・・・・・

Cantharus Stathatou Louvre CA1987
Centaurs holding branches, Attic kantharos, ca. 715BC–700BC (Late Geometric). From Boeotia. by Stathatou Painter(Sub-Dipylon Group)

前6世紀 6th-century BC pottery

Museo archeologico di Firenze, Vaso Fançois 4
The François vase, a greek black figures crater dated around 570 b.C., in the Archaeological museum in Florence.

前5世紀

世界美術大事典(小学館)2-p105 :ギリシア美術 図5


「ケンタウロスを殺すラピタイ人」を表した皿 
アッティカ赤像式 前5世紀 ヴルチ出土 ミュンヘン国立古代収集

『ギリシア美術』(岩波) 図135

「2人のケンタウロスによって大地に叩き込まれるラピタイ人カイネウス」
アテナイの赤像式スタムノス 前440年頃高さ36㎝
ブリュッセル王立歴史美術館蔵

Kaineus centaurs MAR Palermo NI1845
Kaineus fighting the Centaurs.
Attic black-figure lekythos, 520–510 BC.
https://www.theoi.com/Gallery/Z38.4.html

※カイネウスCaeneus(元女性:変身物語)
https://www.hellenicaworld.com/Greece/Mythology/en/Caeneus.html
1.Caeneus battle with Centaurs, red figure Attic vase 5th century BC, Louvre Paris.
2.Vase Number: 213382 Athenian, Red-figure Stamnos, Etruria, Vulci -475 to 425 BC

Mosaic. Centaurs fighting with felines. Villa Hadriana in Tivoli, AD 118-138. Altes Museum, Berlin.

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