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薬師寺の唐草

忍冬唐草文

 西ノ京の薬師寺の葡萄唐草をみました・・
しかし、 土門拳はそちらではなく、忍冬唐草文を見ていた・・

忍冬唐草文については、用語ページでは、忍冬=ハニーサックル(植物名)の項とアンテミオンの項とに挙げたが、それ自体としては、いまいち明快でなく、「唐草風文様の総称」としているのだが、・・どうだろうか。

Sho Kannon Yakushiji
薬師寺の聖観音菩薩像 【国宝】 像高. 188cm
飛鳥時代後期(白鳳期)または奈良時代(7 - 8世紀)

舟形光背

薬師寺の聖観音像、土門拳は髷の唐草を大きく写していたが、

 見ると、 聖観音の光背の唐草は、
本尊の薬師三尊と違っている。 よりギリシア的だ
両方「唐草光背」と呼ぶのだろうか?→光背については別に。
土門拳が「ぼくの古寺巡礼」で書いているのは、
まず、金堂の薬師三尊像は白鳳仏とは全く異質の造形志向を語るという。上瞼のふくらみから眼頭の先端をよぎって、下瞼のいわゆる目袋まで、くっきりと半円を描いて陰刻線をいれた眼窩 (がんか)のこなしが、それまでと全く異質なものに変わったと言っている。: 『大和 (土門拳の古寺巡礼) 』 第一巻大和(一)(小学館 1989)

眉と鼻のこなし、その二点を限っても、東院堂聖観音は、金堂薬師三尊よりも明らかに古様な手法を保っている。
制作された実年代の差は案外に近接していると思われるが、金堂薬師三尊がより天平初期的で、東院堂聖観音はより白鳳末期的である (p129)

宝髻(ほうけい)のヘヤーバンド用の髪飾り、胸に垂れるネックレス用の首飾り、腹の前後のバックル用の帯飾り、そして手首の腕輪など、すべて忍冬唐草文をライト・モチーフとする金銅透かし彫り装身具を浮き彫りしている。

左右相称ながら、必ずしもそれにとらわれない自由な意匠である。
遥かギリシャからシルクロードを東漸してきた飛鳥以来の忍冬唐草文がいわゆる屈輪屈輪(ぐりぐり)といわれる退化形ながら、ここに聖観音の作者によって、いわば最後の光芒を放っているのである。

これ以後、忍冬唐草文は宝草華唐草文にとってかわる。

おそらくその造顕の実年代が聖観音より十年とは遅れていないと思われる金堂薬師三尊の日光・月光両菩薩には、もはや忍冬唐草文は見られない

Yakushiji-1999-2
薬師寺本尊

 もうちょとみてみると、
聖観音の光背の唐草は聖観音の体の方から出ているが、
薬師三尊の唐草は天からぶら下がるように降り、
相変わらず唐草線は巻いているが四角張って、延びていかない。

また、聖観音の光背の小仏(化仏 けぶつ)は、
例のごとく唐草に絡まっているように見えるが、
薬師三尊では全体が雲に包まれてぶら下がっているように見える。

 文章だけではどうしても簡明につかみにくいので、 東京美術の「すぐわかる日本の仏教美術 」(2010 守屋 正彦)を参照すると、巻末見返しにこんな顔が

 同書にあった日本における初期の仏像の様式三区分

止利様式(飛鳥時代)

特徴(大陸にはない独特の様式)
1.正面性の重視→扁平な表現
2.三次元的な工夫→立体感や遠近感を意図
3.顔の表示用→杏仁形の目、アルカイックスマイル
4.肩に垂れた髪の形→蕨手
(上記:「すぐわかる日本に美術」p20)

初唐様式(白鳳時代)

特徴
一般に白鳳期のものには初唐の文化の影響が濃い。盛唐文化が成熟する前で、国際色豊かな表現がまだ十分に唐風に消化されていない。 (上記:「すぐわかる日本の仏教美術」p28)

唐風文化(奈良時代)

7世紀後半に中国で密教が盛んに→異形の仏像が生まれる

奈良時代前期…顕教の美術:薬師寺・興福寺
奈良時代中期以降…雑部密教の美術:東大寺・唐招提寺
(雑部密教=総密は、純密=平安時代の最長・空海が持ち帰った密教に対するもの。如来・菩薩・天は存在するが、明王がいない。)

飛鳥・白鳳時代→顕教の美術
奈良時代→雑部密教の美術
平安時代→密教の美術、浄土教(顕教+密教)の美術
鎌倉時代→浄土の美術と釈迦の美術

ガンダーラから日本へ・・
飛鳥寺、法隆寺、薬師寺の建立年代確認?
飛鳥寺(法興寺):6世紀末頃(蘇我馬子)
薬師寺:元薬師寺(680年天武天皇)平城遷都後の8世紀初め西ノ京に移転
法隆寺:7世紀(670年炎上)

 東京美術の「すぐわかる」シリーズ、コンパクトなまとめでよろしいですね。改訂もされている。もう一冊「すぐわかる東洋の美術―絵画・仏像・やきもの&アジアの暮らしと美術」(竹内順一)も見ると、世界に広まったペルシア文化という項に、唐草文のいろいろが出てきます。(改定前のもののページp131)
パルメット、パルメット唐草、蓮唐草、忍冬唐草、牡丹唐草。そしてアラベスク文様・・・・♪

忍冬文とは:新潮世界美術辞典


忍冬の一種(20160227 大阪府立花の文化園にて撮影)

植物系の文様の一種。忍冬はスイカズラ科の植物(honeysuckle 英。ただし、忍冬文はスイカズラの花を文様化したものではなく、ギリシア風のパルメットまたは半パルメットを波状に連続させた唐草文の一種で、忍冬唐草とも呼ばれる。またパルメットを円形に囲んだ単位文を帯状に並べる場合もある。パルメットはエジプトのロータス文から出、ギリシアの赤んとす(アカンサス)文様がこれに代わった。忍冬門は、とくにコリント式の柱頭に見られるアカンサス文様の流れを汲むもので、ヘレ二ズム文化に多くみられる。
ペルシア、アフガニスタン、シリアなどから西アジアを経て、中国、日本へ伝わった、中国では、雲岡(うんこう)をはじめ六朝時代の石窟寺院に好例がある。日本では古墳時代後期の馬具をはじめ、飛鳥━奈良前期に盛行した。法隆寺の「玉虫厨子」「夢殿観音像」の光背、「金銅潅頂幡」(かんじょうばん)、「四天王寺文錦」、軒瓦などにみられる。


すぐわかる東洋の美術―絵画・仏像・やきもの&アジアの暮らしと美術
(竹内順一)

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