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黙示録の生き物

ロレンス畢生の論考にして20世紀の名著なる『黙示録論』を読んでいますが、やっぱり面白い!! 

黙示録論 (ちくま学芸文庫)ロレンスの黙示録論(1930年45歳、死去の2カ月前の作)

黙示録論 (ちくま学芸文庫)作者:D・H ロレンス: 2004/12/09

 面白い。特にこういう箇所。

イエスが己の弟子のうちにイスカリオテのユダをもたねばならぬ宿命にあったように、
新訳聖書のうちに黙示録一篇の紛れ込むこともまた不可避の運命であった。
なぜか?それは人間の本性がそれを要求しているからだ。(『黙示録論』p047) 

ユダには同情していた私である・・(笑)

黙示録とは、人間のうちにある不滅の権力意思とその聖化、その決定的勝利の黙示にほかならない。(『黙示録論』p047)

イエスのクリスト教精神は吾々の本性のわずかに一部を満足させるのみである。吾々のうちにはなおそれが適合せぬ広範な領域があるのだ。この領域こそ、黙示録が当てはまるのである。

アポカリプスは、クリスト教の隠れた裏面史というべきであろう。アポカリプスは権力に対して敬意を払おうとしない。それは権力者を虐殺し、権力そのものを己が掌中に収めんと冀(こいねが)っている、それがこの虚弱者の本音なのだ。(p052)

諦念と瞑想と自己認識の宗教はただ個人のためのものである。しかしながら、人は己れの本性のほんの一部においてのみ個人たりうる。他の大きな領域においては、人は集団である。(p050)

純粋なクリスト教精神なるものは、国家、あるいは一般に社会というようなものとは絶対に相容れぬ存在である。(p059)

これ以下は、「馬!」を・・

黙示録写本から:Andreas of Caesarea's Commentary on the Apocalypse

「蒼ざめた馬」

Apocalypse vasnetsov
Four Horsemen of Apocalypse,(1887)
by Viktor Mikhailovich Vasnetsov (1848–1926)

「蒼ざめた馬を見よ」という言葉がありました・・ 昭和の短編小説の意味深なタイトルでしたがあまり関係がない。
D.H.ロレンスは『黙示録論』で、「馬!つねに馬である!」と言っている。

馬!つねに馬である!
馬は太初の諸民族のこころを、殊に地中海沿岸の住民のこころをいかに強く支配したいたことか!
馬を持つものは貴族である。今でも我々の暗い魂の奥深く、遥かそこに馬が跳躍しているのだ。それこそは支配的な象徴である (ちくま学芸文庫 p121)

馬に「蒼ざめた」とつくわけだが、ギリシア語では緑色と (wikipedia)。写本でも多くは、青白い色(pale blue)というわけではないようにみえたが。乗っているのが騎士でなく骸骨が多い。

第四の騎士 

ヨハネ黙示録第6章第8節にあらわれる、死を象徴する馬。
ヨハネの黙示録の四騎士の一

Walters Ms. W917 - Apocalypse by Andrew of Caesarea f.061v The fourth seal, the pale rider
Walters Ms. W917
- Apocalypse by Andrew of Caesarea f.061v
The fourth seal, the pale rider

Apokalipsis trekhtolkoviy (1909) 16 - Fourth seal
Four Horsemen of Apocalypse,(1887)
by Viktor Mikhailovich Vasnetsov (1848–1926)

この絵、封印が4つ落ちている描写が面白いが、
D.H.ロレンスの『黙示録論』をさらに読むと、人間の性質の4分類や、ギリシア語にさかのぼっての「照応」の話などあり、面白い。

昔の分類法に随って人間の四つの性質を考えてみたまえ。
多血質、短汁質、憂鬱質、粘液質の四つを。さてこそ四色の馬が登場してくる。(p122)
白き馬、赤き馬、黒き馬、青ざめたる、あるいは黄ばみたる馬の四頭が・・

White Rider from Tolkovy Apocalyps 17th century
Lifting the First Seal of Apocalypse and the White Rider of war.
Illuminated page (not an icon!) from the 17th century Tolkovy Apocalypse.
Moscow, first half of the 17th century.

白き馬:生命力は白色に爛々と輝いていた、木星を守護神に持つ性質

ナポレオンですら白馬にうち跨っていなかっただろうか。
白き馬に乗るものは冠冕(かんむり)を与えられている。彼こそは至上の王たる我であり、その馬は人間にとって神与のマナである。(p124)

ここでロレンスは何をいっているかというと、そう、不当な自恃。黙示録が、弱者の自尊と権力の宗教であるということ。
黙示録とは、「異様な特権意識と宗教的厚顔の観念とを鼓吹してきた奇怪まる書物」、「人間のうちにある不滅の権力意思とその聖化、その決定的勝利の黙示に他ならない」(p041)
ロレンスの見解で、なるほどと思ったのは、 キリスト教には2種類あるという話。

経験を積むにしたがって、人は世に二つのクリスト教のあることを了解するであろう。一つはイエスに、そして、互いに相愛せよ!という至上命令に中心を置いている―そしてほかの一つはプロでもペテロでもなく、またかのイエス最愛の弟子ヨハネでもなく、じつにアポカリプスに中心を置くものである。(『黙示録論』p042)

Walters Ms. W917 - Apocalypse by Andrew of Caesarea f.054v The first seal, the white riderWalters Ms. W917 - Apocalypse by Andrew of Caesarea f.056v The second seal, the red rider

赤き馬:怒気、情熱、火星を守護神に持つ性質

白き馬に乗るものは出現したかと思うと、たちまちにして姿を消してしまう。だが彼がなんのためにあらわれたかは了解できるのだ。
大いなる人の子は全世界最後の征服の後にその白馬にまたがり、天の軍勢をしたがえて登場するのである。(p125) 

Walters Ms. W917 - Apocalypse by Andrew of Caesarea f.058v The third seal, the black rider

黒き馬:不機嫌、頑固、土星を守護神に持つ性質

青ざめた馬:リンパ液の過剰、水星、他界のヘルメス

horseman


(『イメージ・シンボル事典』p347)

B Valladolid 93
Valcavado Beatus:"Les quatre Cavaliers (Apocalypse VI)
c.970 Valladolid, Biblioteca de la Universidad, Ms 433

Lambeth Apocalypse - f5v

天秤:1.正義を表わし、支配者が手に持つと権力を、ネメシスが手に持つと復讐を象徴する。
2.飢餓や不足を表わし、食料の分配を象徴する。「黙示録」において騎士(horseman)は「飢餓」Starvationを表わし、天秤を持っている。
3.エジプトでは死を表わす。
4.(十二宮)天秤宮(『イメージ・シンボル事典』p43)

Albrecht Dürer - Knight, Death and Devil (NGA 1943.3.3519)
Albrecht Dürer - Knight, Death and Devil (NGA 1943.3.3519)
Albrecht Dürer  (1471–1528)National Gallery of Art
1513 sheet (trimmed to plate mark): 24.8 x 10.1 cm (9 3/4 x 4 in.)


me→ ■ヨハネの『黙示録』を読む 1.2.3.4.5
ロレンスの『黙示録論』と「蒼ざめた馬」
黙示録写本の命の川と植物

馬?
■ Centaure Chiron ケンタウロスのケイローン ⇒chiron.html
■The sagittarius(いて座,人馬宮) , or centaur, with bow and arrow, is one of the signs of the Zodiac.
(英国教会に現された動物と鳥のシンボリズム)BY ARTHUR H. COLLINS, 1913sagittarius.html
■⇒centaurus2.html
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