「7つの封印がある巻物を持つキリスト」549年頃
ラヴェンナ、サン・ヴィターレ大聖堂のアプシス
(小河 陽訳『ヨハネの黙示録』p ix)
黙示録の獣はもう見てきたが、ここでは、全文を見通して、「七眼七角の仔羊」から見たい。
ちなみに(再掲するが、)新訳聖書の最後の「ヨハネの黙示録」は、(福音書記のヨハネではなく、)パドモスのヨハネが西暦96年に書き終えたものという。(諸説紛々というが)
黙示録は「第二流の精神の所産」ともD.H.ロレンスはいう。
(『黙示録論』p045)(1930年45歳、死去の2カ月前の作)
※
ヨハネ文書(wikipedia)も参照
ヨハネの黙示録(文語訳) 『舊新約聖書 』日本聖書協会、1950年https://ja.wikisource.org/
5:6 我また御座および四つの活物と長老たちとの間に、屠られたるが如き羔羊の立てるを見たり、之に七つの角と七つの目とあり、この目は全世界に遣されたる神の七つの靈なり。
ヨハネの黙示録(口語訳)
『口語 新約聖書』日本聖書協会、1954年
https://ja.wikisource.org/
5:6 わたしはまた、御座と四つの生き物との間、長老たちの間に、ほふられたとみえる小羊が立っているのを見た。それに七つの角と七つの目とがあった。これらの目は、全世界につかわされた、神の七つの霊である。
https://biz.trans-suite.jp/23545
「封印を解く」だと重々しいが、「開封する」(シールをオープン、unseal)というと、普通で、軽め・・・
とにかく、口語訳でも重々しく、「封印を解く」であったが、
何の封印かというと、巻物にある7つのシールで、
巻物は一巻であるらしい。(上のラヴェンナのモザイクも参照のこと)
5:1 わたしはまた、御座にいますかたの右の手に、巻物があるのを見た。その内側にも外側にも字が書いてあって、七つの封印で封じてあった。
D.H.ロレンスが『黙示録論 現代人は愛しうるか』で、言っていることがあるが・・・・ そうなのである!
描かれた巻物を見ると、
封印が一つ一つ破られるたびにおのおの一篇ずつが開かれることになっているのだが、どうしてそういうことになるのか、わたしにはほとんど合点がいかぬのである。なぜといって、この書はあきらかにひとまきにされた巻物であって、実際には七つの封印が全部破られてからでなければほどきえないはずだからだ。(ちくま学芸文庫p116 福田恒存訳1951→文庫化2004)
しかし、アポカリプティストにとっても、私にとっても、そのようなことはまったっく取るに足りない些事にすぎぬ。おそらく最後まで巻物を開いてみるつもりはないのであろう。
いやぁ恐れ入りました・・((笑))
→revelation.html
5‐3で唐突に「にがよもぎ」とあるが、この植物名が出てくる理由は?
学名:
Artemisia absinthium L.
和名:
ニガヨモギ
英名:
worm wood
ジョン・ロックの『人間知性論』でも、ニガヨモギが苦さの観念の例示のために用いられている。
新約聖書におけるヨハネの黙示録には、「苦よもぎ」という名の星が空から水源に落ちたために、水の三分の一が苦くなって多くの人が死んだ、という預言が出てくる。
(wikipedia)
『聖書植物園図鑑』(丸善出版2017)の71番目で、
”本種には毒性はないが、強い苦みの成分が含まれるため、しばしば「苦いもの」「不快なもの」の比喩として用いられる”とある。
『聖書の植物よもやま話』にはないが、植物としては、黙示録18章、19章に、アサ・リネン・フラックス、シナモンが出ているようだ。
ユイスマンの『神の植物・神の動物』(八坂書房2003)のp81にある、ヨモギギクとは別物。
そちらは英名タンジーで
学名:Tanacetum vulgare
一般に、ニガヨモギは毒の同義語される。
黙示録に描かれた植物(草本)については、黙示録第22章に描かれた、生命の川でもう少し見たいと思う。(途中です)
上記まとめで、こちらのテーマ関連は、主に、緑字の3つなので、以下に3頁~作成予定です。(20200625)
*(5ページプラス4作成。20200723)
Rose window of Sainte-Chapelle (Paris) - Lamb with 7 horns
15世紀、パリ、サント・シャペル
Original of Seele synbolic mark (Neon Genesis Evangelion).
Cropped from photo of Romanesque fresco
スペインのタウイのサン・クリメン教会のフレスコ画
(現在はバルセロナのカタルニア美術館収蔵)
The Lamb with the Book with Seven Seals
Date circa 1000
Bamberger Apokalypse Folio 13 verso,
Bamberg, Staatsbibliothek, MS A. II. 42
※「天上のエルサレムを示す天使」小河 陽訳『ヨハネの黙示録』xiii
7つの目と7つの角のある仔羊というのは、WEB上でこれ以外に見当たらなかった。(20200623閲覧)
→間違い!
※追記:その後、Comonnsで大量に発見!(20200701)
※バンベルグ黙示録に詳しいページもありました。
http://holzweg.web.fc2.com/sh/0201/Pyr020195.html
「バンベルクの黙示録」写本は11世紀初め1020年頃に作られたもので、挿絵は全部で50場面ある。金色の地が特徴である
。
https://www.oriens.or.jp/st/st_hyoshi/2019/st190512.html
wikipediaはこちら
(de.wikipedia/Bamberger_Apokalypse)
ベアトゥス写本について→beatus.html
以下は、文献で仔羊を見ることにしたい。
エジプトの創造神クヌムは、牡羊の頭をした男の姿
仔羊と牡羊は、古来オリエントと地中海沿岸諸国では、最も頻繁に生贄にされる犠牲獣
聖書では、羊の従順と羊飼いへの信頼は、人間の神に対する関係の一象徴
アラム語で、「僕」(しもべ)と仔羊とを意味する語が同じ
仔羊は身代わりの犠牲
イエス・キリストは、苦難を担った神の僕であり、真の過ぎ越しの仔羊
ヨハネの黙示録の栄光の玉座の仔羊も犠牲の傷(聖痕)を負うている
Ghent Altarpiece D - Adoration of the Lamb
Uh, so apparently they restored the Ghent Altarpiece and pic.twitter.com/JljwfEZlzu
— Fʀ. A. Sᴄʜʀᴇɴᴋ (@frajds) January 20, 2020
復元の話がありました。 https://www.cnn.co.jp/
ゲントの祭壇画の羊も、2019年に「復元したら目が怖くなった」というが、7つの目があるわけではなかった。
以下、別の文献も参照
羊:純真で従順な性格を持つ神への捧げもの
羊の犠牲的な役割に重ねられた「神の子羊・イエス」
9世紀ごろには「受難」や「死」を表わすようになる
十字架を足で抱える子羊
(イーゼンハイム祭壇画 部分)
マティアス・グリューネヴァルト(Matthias Grünewald, 1470/1475 頃 - 1528)
羊とイエス(p83)
『最後の審判』では善人を象徴
羊と山羊を分かつキリスト
羊=善人、山羊=悪人
「七眼七角の羊」の画像は、小河 陽訳『ヨハネの黙示録』(岩波書店 1996)には、5つ程載っていた。
以下で見てみたい。出典検索では「ネーデルラントの黙示録」、「ネーデルラントの黙示録写本」をみても、ほぼデューラーばかりという感じだが。
『トリーアの黙示録』、『ベアトゥスの黙示録註解』
、『バンベルクの黙示録』、『ランベスの黙示録』、『ドゥースの黙示録』がデューラー以前の黙示録図像という。
*Albrecht Dürer(1471 - 1528)
※黙示録写本まとめは→mokusiroku5.html
小河 陽訳『ヨハネの黙示録』p23
ネーデルラントの黙示録写本、1400年ごろ、パリ国立図書館
7つの封印のついた書物を持つ7つの角、7つの目をもつ仔羊が、4匹の生き物に囲まれる。その後ろでは金の冠を被った24人の長老が竪琴、ヴァイオリン、リュートを奏でる。 画面の上部には7つの燭台がある。(p23)
「巻物」といわず、「書物」といっている。以下も本型。ちなみに巻物から本に変わったのは5世紀。
小河 陽訳『ヨハネの黙示録』p28
「子羊が巻物を受け取る」
イングランド東部の黙示録写本、1300年頃、
ダブリン、トリニティ・カレッジ
小河 陽訳『ヨハネの黙示録』p29
「子羊礼拝」
アナグニ聖堂壁画(中央内陣左側)13世紀中頃
イタリア、ラツィオ南部https://www.cattedraledianagni.it/
7本の角と7つの目のつき方が特徴的である。子羊というよりも胴体は馬のようである。
※Museo e Cripta della Cattedrale di Anagn行きたいと思って、地図で見ると、
イタリア、ラツィオにあり、ローマより南に位置していた・・
※「ベネディクト会(ラテン語: Ordo Sancti Benedicti, 英語: Benedictine Order)は、現代も活動するカトリック教会最古の修道会。」(wikipedia)
*公式サイト(osb.org)
小河 陽訳『ヨハネの黙示録』p35
「第五の封印を解く、ヨハネは祭壇の下に殺された者の魂を見る」
ドゥ―ス黙示録、1270‐74年頃、オックスフォード図書館
小河 陽訳『ヨハネの黙示録』p36
「第六の封印を解く、天空が揺り動かされる」
ドゥ―ス黙示録、1270‐74年頃、オックスフォード図書館
Douce Apocalypse - Bodleian Ms180 - p.018 Sixth seal - earthquake.
「白い衣を着た天使が地の四方の風を押し止める。風は息を吐く人間の顔(時には悪魔)になっており、天使はその頬を押さえている。玉座の神と子羊は4匹の生き物に囲まれたマンドルラの中におり、それをなつめ椰子の枝を持った人々が礼拝している。
画面の下では男が乞食に食べ物を与えているが、これは7章14節から116節の場面を表したものか。(p40)
以上、七つの目と七つの角のある羊を見てきたのだが、角の話は特に書かれていない。??
また、目の並び方の図はそれぞれだった・・
普通の2つの他に額に5つあったり、3つずつ2列で、もう一つ上にあったり・・
先のwikipediaまとめ 4の、七眼七角の子羊のあと、5で、7人の天使(トランぺッター)がでてくるが、これはワープし、「太陽を踏む女と赤い竜」のあたりを、ページを変えて、みることにしたい。
ここに、太陽を衣にして月を踏む女というのが出てきたのには驚いたのだった。それは、無原罪のマリアではないか‥。そのマリア図像を見ていた時に、もう見ていたのかもしれないが、読んだと思うと出ていていの無駄知識だった(スルーした)のか、記憶にない・・ →続く
※「黙示録の美術(ヨーロッパ中世美術論集2)」 田中久美子[編]
も見たいですが
これは高くて買えません(^-^;
以下に目次が出ています。
http://www.chikurinsha.com/
黙示録2→続く
(女と子供と竜の幻・七つ頭の龍)
→ ■ヨハネの『黙示録』を読む 1.2.3.4.5
■ロレンスの『黙示録論』と「蒼ざめた馬」
■黙示録写本の命の川と植物(途中)
■黙示録の言葉「アルファオメガ」(途中)
○ベアトゥス『黙示録註解』写本について
怪物(まとめ)
「《驚異》の文化史」(オトラント大聖堂のモザイク他)
『ロマネスクの図像学 (教会の怪物)』、
『イタリア古寺巡礼』(アダムと動物)、
『怪物ーイメージの解読 』、
『奇想図譜』
LastModified: 2020年 …