かなり前に、黙示録を代表する「黙示録の獣」をみたのですが、初めから逐語で読むことにして、まず七眼七角の仔羊をみてきた。
ついで、ここで、七つ頭の竜、人面イナゴなどをみて、それから竜つながりで、また黙示録の獣へと考えます。
ヨハネの黙示録(文語訳) 『舊新約聖書 』日本聖書協会、1950年https://ja.wikisource.org/
ヨハネの黙示録(口語訳)
『口語 新約聖書』日本聖書協会、1954年
https://ja.wikisource.org/
以下のwikipediaのまとめも再掲しておきます。
その6がこのページの課題。
『快楽の園』 (ホルトゥス・デリキアルム)に基づく17世紀の模写
小河 陽訳『ヨハネの黙示録』p68
太陽を衣とし、月を踏み台にした女は12の星の冠を被り、巨大な鷲の翼を与えられる。左上には天使が子供を神の玉座まで連れていく場面。右下には水を白竜がいる。またこの女性は中世では聖母マリヤと同一視される。(p68)
この写本は好きだが、上の図を見ても何も考えなかった。それを下のメムリンクの絵を見て、驚いた。これはあれである。「無原罪のマリア」の形象ではないか。
別テーマ(女性論)頁:(immaculate)
メムリンク 「女と子供と竜の幻」ヨハネ祭壇画(部分)
小河 陽訳『ヨハネの黙示録』p69
竜は赤い色で7つの頭と10本の角を持ち、頭には7つの王冠を被っている。メムリンクはこの場面に十分幻想的な要素を与えている(小河 陽p69)
この部分は、ヨハネ祭壇画では、右翼の上端に位置し、(wikimedia)Commonsデーテルの図には出ていない・・
参考
Diego Velázquez (1599–1660):
The Immaculate Conception National Gallery
この「無原罪のマリア」と称される図像を見た時、どうしてこんな形があるのかわからなかったのが、こういう始まりであったのか、と納得した。
グアダルーペのマリア[Guadalupeformica](メキシコ)も、全身からの光をアーモンド形に表わしているのだと考えられるが、この、黙示録の「太陽を衣にする女」というものとのつながりが思われた。
また「太陽を掲げる女」という中世のエンブレマータとのつながりも感じられた。
アーモンド形の光背、三日月を踏む
(グアダルーペのマリア) Virgin of Guadalupe. 16世紀
太陽をもち、球体を踏む
太陽を持つ女=真理のエンブレム: リーパ1603年
怪空想生物イメージから離れたが、ともあれ、Memlingは見に行きたいものである・・・
https://www.aoitori.be/tourism/bruges/
ロレンスはこの部分について、アポカリプスの第一部(前半)が終わって次に続いたこの小神話は、異教の岩床まじかに迫るもので、「孤立し、他の部分との調和に欠けている」といっている。(p154)
大いなる日の女神から大いなる日の神の誕生する場面と、その女神が大いなる赤い龍によって追放される説話からなる。(ロレンスp155)
この大いなる母が竜に追われて荒野に逃げたのち、アポカリプスの調子はすっかり変わってしまう。
突如として大天使ミカエルが導きいられる(・・)大飛躍
※大いなる母:=不当の迫害にゆがめられコスモスの大母性、無数の聖母マリアの像を暗示した女神、女王を必要とする力と光輝に満ちた全構成によって欠くべからざる存在
※アポカリプス=挫かれたる権力渇仰の書 (p157)
(こちらは巻頭の図) pⅹ‐ⅺ
「太陽をまとう女性をねらう竜」
『ベアトゥース注釈書』レオン、1047年、マドリード国立図書館
下記の Beatus of Silos(wikipedia)は、中世初期、1109年完成のスペインの写本で、
1840~ British Library蔵とある。
この絵柄は他の文献でも、しばしば引用される。
39,5 × 24,5 cmとのこと。
La dame enveloppée dans le soleil et le dragon, f.147v-148
Picture of the Morgan Beatus. 10th Century.
ここでは10世紀とある?
[エル・マーノ全ヒスパニア皇帝が生涯愛蔵したベアトゥス写本
「ベアトゥス黙示録注解」ファクンドゥス写本 ファクシミリ版 総革装 注釈巻付] 売ってますね~~
Beatus Liébanensis – Facundus Codex: Commentarius in Apocalypsin.: Biblioteca Nacional de España, Madrid. Ms. Vit. 14-2. (León, 1047)
赤い巨大な竜は七つの頭と十本の角をもち、その頭には七つの王冠を被っている。竜の尻尾は天のもろもろの星の三分の一を吐き寄せて、それらを地上に投げ落とした。それから竜は。今まさに子を産み落とそうとしている女の前に立った、女が子を産み落とすや否や、その子を呑み込んでしまうためであった。(p67)
小河 陽訳『ヨハネの黙示録』p70
子供を天使に渡す、天使から鷲の翼をもらう、荒野に逃げ込む。ミカエルと竜の闘いの場面が同一画面に描かれている。竜はメムリンクのものとよく似ている。
小河 陽訳『ヨハネの黙示録』p71
天使ミカエルは、黙示的伝統を通してよく知られている。彼はイスラエルの守護天使である。このテーマは黙示録連作から独立し、独自な展開を遂げる。(小河 陽p71)
St.Michael fights the Dragon
Bamberger Apokalypse Folio 30 verso, Bamberg,
Staatsbibliothek, MS A. II. 42
「ミカエルと竜の天上での戦い」
『ベリー公のいとも華麗なる時祷書』
ランブ―ル兄弟、1409‐15 コンデ美術館
Folio 195r - The Mass of Saint Michael
w21 ㎝×h29 ㎝; コンデ美術館
ミカエルと闘う竜は、もう多頭ではない・・
山の上で戦う大天使ミカエル、もはや黙示録の内容を伝える事は二次的なものとなり、風景描写に重点が置かれている。(p72)
写真はシチリア。大天使ミカエルの絵が強そうなトラック。 pic.twitter.com/34hwWhM5wd
— @momokanazawaJuly 5, 2020
現代でも人気なのですね‥(当然か)
そのミカエルの登場は4つの活物のあとに、唐突だと、ロレンスは言うわけだが・・
wikipediaでは、
「聖書でミカエルがあらわれるのは、旧約『ダニエル書』10章13-21、同12章1、新約『ユダの手紙』1章9、『ヨハネの黙示録』12章7である。」
https://world-note.com/archangel-michael/
An eleventh century Saxon carving,
probably a door lintel in the north transept of Southwell Minster
Nottinghamshire, England. (de.wikipedia)
見てきて、また一つ行きたい聖堂が増えた・・この11世紀の聖堂は、柱頭の葉っぱ(葡萄)が特徴的のようだ。(Londonからtrain3時間程度)
黙示録の空想動物ということで、「七眼七角の仔羊」をみた後、「太陽を衣にする女と竜」を見ましたが、この二つの間に第五のラッパで現れる空想動物がいる・・。
「第五のラッパ、深遠の穴から現れたイナゴが人を刺す」
小河 陽訳『ヨハネの黙示録』p50
『ベアトゥス注釈書』スぺイン北部、12/13世紀、パリ国立図書館
イナゴの姿は軍馬、金の冠を被り、顔は人間、歯はライオンのようで鉄製の胸当てをしている。蠍のような刺のある尾で、神の刻印がない人間を刺す。
イナゴは人の生命にかかわる程ではないが大変な苦痛をあたえる。9章5節に「五カ月」とあるのはイナゴの生存期間に由来する。
小河 陽訳『ヨハネの黙示録』p53
イギリスの黙示録写本、1250年ごろ、ニュ-ヨーク、ピアマント・モーガン図書館
幻の騎手は胸当てをつけ、馬たちの頭はライオンのようで、口からは火と硫黄を吐く。馬の尾には蛇に似た頭があり、噛みついて危害を加える。馬と騎手は悪量的存在の特徴をなす、というのは硫黄は地獄から立ちのぼる(14:10,19:20,21:8)ものだからである。(p53)
「第六のラッパ、馬の蛇の尾が人々を襲う」
小河 陽訳『ヨハネの黙示録』p54
『ベアトゥース注釈書』サン・スヴェール、11世紀中頃、パリ国立図書館
馬の蛇の尾が人々に噛みつく場面、殺された人間は画面の下に裸で放り出されている。(p54)
この後、「黙示録の獣」が登場する・・それについて逐語的に読むと、非常に味わい深い・・
小河 陽訳『ヨハネの黙示録』p71
小河 陽訳『ヨハネの黙示録』p76
アレキサンダー注釈書、13世紀後半、ケンブリッジ大学図書館
10本の角と7つの頭をもった獣が海から上がってくる。獣の頭の一つは傷を受けて死にかけているように見えたが、その致命的な傷が治ってしまう。獣の角には冠があり、それに神を冒涜する言葉が書かれている。 (p76)
小河 陽訳『ヨハネの黙示録』p77
イギリスの黙示録写本、1245‐55年頃、パリ国立図書館
礼拝は、神と子羊でなく獣と竜に捧げられる。獣の前にすべてのものが跪き、だれも抵抗できない。(p77)
「第二の獣の礼拝」アレキサンダー注釈書、13世紀後半、ケンブリッジ大学図書館
第二の獣は子羊のような2本の角をもち、かの第一の獣を礼拝するように仕向ける。この獣は多くの徴を行ない人々を惑わせる。偽予言者の象徴で皇帝礼拝を広める宣伝者を表わしていると考えられる。(p78)
「第二の獣の礼拝」ネーデルラントの黙示録写本、1400年ごろ、パリ国立図書館
画面下では、第二の獣が修道士の服を着て、偽りの刻印を王や子細に施している。その横では祭壇の中の獣を礼拝するように人々を強要している。しかし十字架の旗を持つキリスト者だけは惑わされない。
これまで、
表記「ベアトゥス写本」で、見てきたページ
2014k/St-Genis_des_Fontainesi.html
2014k/italy_furudera.html 2015k/romanesque_em_1.html
bookshelf.karakusamon.com/2015/legoff.html
bookshelf.karakusamon.com/2015/legoff2.html
越宏一さんの「ヨーロッパ中世美術講義」
2019k/tyuusei_horikosi_1.html
「ベアトゥス写本: ベアトゥスは8世紀の北部スペインの修道僧、神学者で、776年に黙示録の注釈を書いた。 ベアトゥスの注釈を元に書かれた写本が現在も30近く(正確な数には諸説ある)存在している 写本には黙示録の場面を描写する挿絵が入っている。」http://www.ryuss2.pvsa.mmrs.jp/ryu-iware/
ニューヨーク,ピアポント・モーガン図書館,MS644,ff.240-241)
http://www.collegium-mediterr.org/
次ページにも、「黙示録の獣」あり、ついで、大淫夫と獣に続く・・
「ヨハネの黙示録を読む」に戻る(七眼七角の仔羊)
怪物(まとめ)
「《驚異》の文化史」(オトラント大聖堂のモザイク他)
『ロマネスクの図像学 (教会の怪物)』、
『イタリア古寺巡礼』(アダムと動物)、
『怪物ーイメージの解読 』、
『奇想図譜』
LastModified: 2020年 …