フェミニスト

希臘

「ギリシアへの旅」


クリスタ・ヴォルフ表題から、紀行文と思い、”こういう本”だと思って読んだのではないが、
著者は、声高ではないが「東ドイツ」の「フェミニスト」・・

愛している詩といってあげられていたインゲボルク・バッハマンの詩はよかったが・・

愛よ、説明して、わたしが説明できないことを。
この束の間のおそろしい時を
ひたすら思想とだけつき合うようにというのでしょうか、独りで?
愛らしきことを何ひとつ知らず、愛らしきことを何ひとつせずに?
人は考えなければならない? 居なくて寂しいと思われることもなしに?


訳者あとがきに

一人の神話上の女性、トロイアの王女カッサンドラの人物像を追ってみようとして、神話や歴史、文学、考点学などの本を読んで調べていくうちに、ヴォルフの得た知識は相当の量になる。
彼女がそうした博識をもって、カッサンドラの時代から現代までを見わたしてみると、文化の諸現象と歴史上の女性の立場というものの変遷について、考察せざるをえなくなる。

ある若い自然科学者が、ヴォルフも出席していた会合で発言している。
「過去の女性の運命を嘆くのは、やめてもらいたいものです。女が男に従属して、男の世話をし、男に仕えたという事実―まさにこのことが、男が学間に、あるいは芸術に集中することができ、双方の領域で高い業績をなしとげることができた条件であったわけです。別のようなあり方だったら、今も昔も、進歩はありえないのです。ほかのあらゆる事柄なんて、センチメンタルなたわごとですよ」
ヴォルフは、この男性の言うとおりだと思いながらも、「わたしたちが慣れ親しんできた芸術や学間におけるこの類の進歩は、つまり、並はずれた、最高の業績は、ただそのようにしてしか得られな脱―人間化することでしか得られないのです」と、同僚の女性作家への手紙に書く。

〈人間の文化の進歩のために業績をあげる男性と、彼の偉業を無名で支える女性〉
という構図
が問題なのである、と考える男性もまた、本書のすぐれた読者である。このようにして人類の偉業をなしとげてきた男性的な知が、今日まさに、その最高の所産である核兵器をも生み出したという事実の認識、その知が、核兵器による人類抹末梢の事態をも招来しつつある、という危機感が、ヴォルフの西欧文明見直しの契機となっているのである。

ヴォルフがアイスキュロスの「オレスティア」三部作をたずさえてギリシア
に行き、その地でカッサンドラの足跡をたどるという紀行文の形式をとっている。つまり、カッサンドラの人物像を具体化するために、背景その他の契機を探ることが第一目的であった。

同時にそれは、
ヴォルフ夫妻が、ギリシア語のわからない旅行者として、現地の多くの知人の助けを借りながらとはいえ、基本的には異文化体験をすることにもなるのである。

紀元前7世紀ころのテラコッタ像

白黒で紀元前7世紀ころのテラコッタ像がいろいろ大きく載せられていた・・

泣き女の像 紀元前600年頃 中部ギリシアのボイオティア出土
 p76(ページいっぱい)

タナグラ人形(タナグラニンギョウ)とは? 意味や使い方 – コトバンク

インゲボルク・バッハマン

インゲボルク・バッハマン全詩集

三十歳 (岩波文庫)

作者:インゲボルク・バッハマン岩波書店Amazon

※戦後オーストリアを代表する詩人・作家バッハマン(1926―1973)ja.wikipedia.org

トロイアの王女カッサンドラ

カッサンドラ(Kassandrā)

ギリシャ神話で、トロイアの王女。 アポロンに愛されて予言能力を与えられたが、求愛を拒んだため、その予言をだれも信じないようにされた。 カサンドラ。

ja.wikipedia.org

カッサンドラ (クリスタ・ヴォルフ選集 3) 単行本 – 1997/9/1

クリスタ ヴォルフ (著), Christa Wolf (原名), 中込 啓子 (翻訳)

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"Cassandra and Ajax" depicted on a terracotta amphora, c. 450 BC. Terracotta Nolan neck-amphora (jar), attributed to the Ethiop Painter, Greek, Attic (MET, 56.171.41)