唐草図鑑
蛇と女

図像 蛇とリリト

アダムの最初の妻

 以前、図像、図象(ずしょう)愛好家?として、絵画の中の『要注意』美女集合を図ったことがあったが、彼女たちの名は、 リリス サロメそしてべラドンナ,フローラ, マリア, ラプンツェル,マドンナ・・であった。
それは、サロメのささげる聖なる花の絵とともに、土足厳禁個所に置いてあったが、ここで、オータンのサンラザール聖堂のイブ像、また聖樹聖獣関連として、編集復活させておきます。(20190730)

アダムの最初の妻:リリスLilith, Adam's first wife

『新潮世界美術辞典』には項目がない。
「アダムとエバ」の項に、
古代神話、或いはユダヤ・キリスト教の外伝、伝承にもとづく要素がみられる、といった表現があるがあるが、名は挙げられていない。

反ギリシア神話によると

「リリスがアダムAdamの最初の妻ということになったのは、
昔のラビたちがシュメール・バビロニアの女神ベリティリあるいはベリリを ユダヤ人の神話に吸収しようとしたその名残だった。
カナン人にとって、リリスはバーラトBaalatという女神であり、
ウルから出土した紀元前2000年ころの粘土板では、
リリスはリルラケと呼ばれていた。」

 『西洋シンボル事典―キリスト要美術の記号とイメージ―』(ゲルト・ハインツ=モア)では「最初の」という言葉を、「みずからに由来する系列にとって責任がある」という意味でと書いていて、笑ってはいけないちょっと笑えた。それに続く厳粛な表現としては、
Adamアダム=自らに続く者たちのあらゆる帰結を負って、堕罪する最初の人  すなわち原罪の、霊の倒錯の、自由の乱用の、神に対する従順な結びつきの拒否の典型

(Evaエバについては以下)
最初の女であり、同時に最初の妻で、「生命あるものの母」(ヘブライ語chavváh) 人間における女の要素を象徴する

蛇とリリト・エバ

Adam and Eve by Lucas Cranach (I)
1530 Limewood, 81 x 114 cm
Kunsthistorisches Museum, Vienna Cranach
Biblical nudes (Adam and Eve)
by Lucas CRANACH the Elder


The Paradise (部分)

me クラナッハのエデンの園には リンゴを渡している女(女頭蛇身)がいる

リリスとは

(WEB検索)
はてなキーワードによると、リリスは
ユダヤ経典タルムードに登場する、アダムと共に土から作られた最初の女性
ウィキペディア(Wikipedia)
リリスはバビロニア人によって崇拝されていた太母神である。
ギリシャ神話のラミアすなわちメドゥーサの起源となったといわれている。
その他の検索・・・
(詳しいサイトenglish)
https://ccat.sas.upenn.edu/~humm/Topics/Lilith/gilgamesh.html

ギルガメシュ叙事詩の箇所
https://ccat.sas.upenn.edu/~humm/Topics/Lilith/
https://ccat.sas.upenn.edu/~humm/Topics/AdamNeve/index.html#ANE03

聖書 生と死の木
https://ccat.sas.upenn.edu/~humm/Topics/Lilith/modPics1.html
Lilith Pictures, Lilith Art
Lilith John Collier (1892)
John William Waterhouse, Lamia. 1905.
ダンテ・ガブリエル・ロセッティの詩と絵
(lady lilith by dante gabriel rosetti. his poem )
Lady Lilith, Dante Gabriel Rossetti. 1864-73.もあり


他にもダリなどを網羅している
Salvador Dali: Lilith and the Double Victory of Samothrace

リリスの絵

The Lilith Myth

https://www.webcom.com/~gnosis/lillith.html


リリスとイブ(エヴァ)

 
「リリス」 G・マクドナルド 荒俣宏訳 ちくま文庫
イギリスの幻想小説で、ルイス・キャロルやトールキンを始め、
カスタネタにも大きな影響を与えたとされる瞑想的ファンタジー。
(解説by矢川澄子)


先日美術出版社の利倉隆さんの本購入 (2004年)
(絵画のなかの動物たち神話・象徴・寓話 )
旧約聖書の疑問点が一つ解けました。

つまり創世記第1章において
「神はご自分の姿に似せて男と女を作った」とあるのに
その女はどこへいっちゃったの?

第3章で「アダムからイブを作った」ってまた言ってる
・・矛盾です・・

これに対するヘブライ伝承として
イブの前にアダムには配偶者がいてリリトといって
女頭蛇身楽園の蛇なのだという・・・

「リリト失脚(?)の原因は、性的にアダムに従順ではなかったから」 ?というが、

この本には
「リリトはアダムと同等になることを望んだが拒まれ
一人叫びをあげて楽園を去っていった」 ・・・のだそうだ。

その後リリトは真夜中に嬰児をさらうために徘徊する夜の悪魔となり、
ユダヤ人の妊婦に恐れられた。

エヴァの名前はヘブライ語で「生命」を意味するが
アラブ語では「蛇」に通じる
・・・という感じであったかな・・・

従順」という言葉はエヴァに対するキーワードとしてでていた・
エヴァへの罰だろうか……
神のいいつけを聞かなかった……

しかし、 すごい抑圧・・・アンチ・フェミニズム

利倉さんの本は、こちらの本題である動物図像の巻に
たどり着く前にまだ「悪魔の美術と物語」もあるし・・・
そっちの本では聖アウグスチヌスの
キリストは悪魔に対するネズミ捕りである、という言葉があるそうで
キリストをネズミ捕りで象徴する絵をみせられた・・・
あ~~これもびっくりでした~~~

蛇図像の入り口はこちら

 中丸明の『絵画で読む聖書』
(新潮文庫平成11年11月刊)を買いました。
(本の表紙はドイツルネッサンスの画家クラナッハのエデンの園から)

きのうの荒俣宏もコワいが、中丸明もコワい……(^-^;))
この書に、 ゲーテの「ファウスト」(1831)に
リリス(リリト)(アダムの「最初の女房」)が出ているとあったので、
蛇図像を調べているところなので見直しました。

翻訳は
手塚富雄訳(1903-1983)中公文庫1974年刊・・
・・なんとちょうど30年前ですかぁ・・
(読売文学賞はその3年前)
(→時よ止まれお前は美しい)
ちなみに訳書色々・・
相良 守峯 訳 岩波文庫1958
高 橋義孝訳 新潮文庫1968
柴田 翔 訳 講談社1999 S・リシャール氏による挿絵
池内 紀 訳 集英社1999

British Museum Queen of the Night
Known as the "Burney Relief" or
the "Queen of the Night". British Museum

Burney, or the Queen of the Night, relief inside a display case. The British Museum, London

リリスはカナン人(現在のパレスチナ人)の間では、
女神バラートとして尊崇されていた。
ウルから出土した、紀元前二千年頃の粘土板には、
リリスはリラルケと記されている。

リリスは元々、シュメール、バビロニア、アッシリア、カナン、
ペルシャ、ヘブライ、アラブ、チュートンといった、
古代国家神話に登場する淫蕩な女神なのだが、
現代では公式な吸血鬼(サキュバス)として生き残っている。

リリスはまた、ゲーテの『ファウスト』にも
アダムの最初の妻として描かれているが、
同じ悪魔のメフィストフェレスがファウストに、
この美しいが淫蕩な性悪女にだまされないようにと忠告するのには
笑わせられる。 (by中丸明)

ゲーテのリリス

「反・ギリシア神話」では……前述のとおり
https://web.kyoto-inet.or.jp/people/tiakio/antiGM/lilith.html 


詳しいサイト(英語)
https://www.jrbooksonline.com/pob/pob_ch07.html


「ファウスト」には、確かにリリスが出てきたが
メフィストは、最初のところで、エデンの園の蛇を「俺の姪」と言っているのに、
そこではそういってない(髪の美しい女といっている)
つまり、ゲーテはエデンの園の蛇=リリスとはしてないようだ。

ここで、悪魔に関するゲーテのセリフを書いておきます……

主(ゴッド) あれ(ファウスト)が地上に生きている間は、
お前があれをどうしようと、咎めはしない。
人間は努力する限り迷うものだ。

メフィスト(サタン)  この世をおさらばした人間なんざぁ、
わたしはすき好んで相手にしたことはありませんからね。
猫だって死んだ鼠は相手にしませんからね。

主 よろしい。おまえの好きにするがいい。
お前にできるものなら、お前の道を歩かせて奈落に連れて行け。
しかし、いつかおまえは恥じ入って、こう言うぞよ。
「よい人間は、盲目的な内部の促しに動かされているときも、
正しい道を忘れてはいぬものだ」と。

メフィスト いや結構。ただそれが長続きはしない。
ようし、この賭けに負ける心配はないつもりだ。
私の思い通りになったら、ありったけの声で勝鬨(かちどき)を上げさせてください。
あの先生には塵あくたを食わしてやりましょう。大好物といって食うでしょう。
私の姪のあの有名な蛇のようにね。

主 このいたずら者(メフィスト)はわしには一番邪魔にならない。
人間の活動はすぐにたゆみがちになる。
すぐ絶対的な安息を求めたがる。
だからわしは、刺激したり引き込んだりする仲間を人間につけておく。
それを悪魔として働かせておくのだ。


だがおまえら、神のまことの子たちはな、生きたゆたかな美しさをみて
たのしむがいい。
永遠に創りはたらく生成の力が
おまえたちのまわりに愛のやさしい垣根を結いめぐらすがいい。
そして移ろう現象として揺らいでいるものを、
お前たちは持続する思惟によってしっかりと繋ぎとめるのだ。


 なるほど。
ところで、ファウストは何を悩んでいたのか??


初めの夜、ファウストのセリフ

そして知ったのは、
おれたちは何も知ることがができないということだけだ。
ひとかどの事を知っているという自惚れもなく、
人間たちをよくするため、救うために、
何かを教えることができるという自惚れもない。

助手のワーグナーは言う
だいぶ知識は持っておりますが
私は一切を知りたいのでございます
ファウストは言う
よくまぁ、ああいう輩は希望を捨てずにいるものだ

野口悠紀雄も『ファウスト』を無人島に持っていく本といってますが↓
https://www.noguchi.co.jp/NL/bbs/bookdata.php3?id=182

ゲーテは面白い・・



AUTUN ロラン博物館 PhotobyM@20190614
Gislebertus "Eve",orijinally on the lintel above the lateral doorway.
now in the Rolin Museum

 この画像が「いじっているうちにつぶれてしまったほおずきの悲しみ」(大岡信)にならぬように・・ と書く意味は、感動の摩滅を嫌うということだが・・
これは12世紀のオータンのギスルベルトゥス作アダムとイブの片割れであったという。18世紀末にサン・ラザール聖堂のポータルの横入口リンテル(※)から撤去されたようで、アダムは行方不明ということだが、今回
Yuko Nii Foundationの作品で片りんを見ました・・
(感動はしない)

(※ "Autun dates,facts and figures" Daniele Berfin 2015)

前掲のリリト)("Burney Relief")には獅子が関連しているが、 イブには、太古の女神が従える獅子(2頭のライオン)は関係していない。
ただ「蛇」と生命の樹のみが関連する・・
index_hebi.html

関連ページ
2014k/francais_autun.html (オータンのイヴ)
2014k/italy_furudera.html (アダムの動物名づけ)
2019k/june_autan.html


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First update :20190730 Last modified: 20250926

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