越宏一さんの「ヨーロッパ中世美術講義」
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口絵4 聖エセルウォルドの祝別要式書 Benedictional of Saint Aethelwold キリストの墓を訪れる聖女たち ウィンチェスターWinchester,971-98頃 ロンドン, 大英図書館 British Library,Add.Ms.49598,fol.51v
アングロサクソン写本の傑作の一つ
登場人物たちが立つ地面が全く表されず、彼らは枠取られたパネルに収まっていない。縁取りは場面の区切りとはなっていない。 画面中央の墓に座る天使の左右に配された人物らは縁取りと重なっていて、彼らはあたかもl縁取りの四隅のロセット(放射状の葉飾り)のように、縁取りから生成したかのようである。(p83)
確かにアカンサスのゴージャスな枠が特徴的・・
The Benedictional of St. Æthelwold (London, don, British Library, Additional MS 49598) is a 10th-century illuminated benedictional, the most important surviving work of the Anglo-Saxon Winchester School of illumination. It contains the various pontifical blessings used during Mass on the differing days of the ecclesiastical year along with a form for blessing the candles used during the Feast of the Purification.
The style of the miniatures is characterized by brilliant colour, exuberant acanthus ornament, and figures who often overflow the space within the elaborate border and are shown overlapping it.
北方に人間像を中心とする形象美術が導入された時、初期中世の芸術家たちは、彼らが装飾モチィーフを取り扱う場合とまったく同じように人物像を処理した。
すなわち、装飾的な枠取り内の充填パターンとして人物像を扱った。(p82)
この考え方はカロリング朝及びオットー朝の『ルネサンス』を通じて、「再現 」と「装飾」の美的機能の違いを学んだ後でさえ、中世の写本画を統べる力を失わなかった。
■https://circle.ubc.ca///The framing of the miniatures of the benedictional of St. Aethelwold : meaning and function
図53 ケルズの書 ルカ伝福音書
ダブリン,トリニティ・カレッジ図書館,Ms.58,fol,285r.
source:https://www.medievalscript.com/gallery/main.php
24章第1節のテキスト Una autem subbati ualde de lu(culo) (そして週の初めの日、夜明け前に 〔女達は用意しておいた香料を携えて墓に行った〕)が枠組みの中に三行で記され、四人の天使が最初の語UNAを取り囲んでいる。彼らは文字に腰掛けていて、人物はいわばテキストという家の住人である。(p82)
この主題はすべての福音書に述べられているが、彼女たちが誰であったかについては一致していない〔p83〕
口絵ではわからなかったのですが、こちらのソースで見ると、金ピカなんですね・・
中世写本の彩飾ページは薄い重力の無いシート
写本ページの理想的なポジションは水平におかれた時。
人物たちは無重力
中世の終わりごろ、写本画の人物たちは地球の引力に従うようになり、彩飾ページの平面的構成はバランスを失い、縮小されたパネル画と変わらなくなり、台無しになった(p84)
とても幅の広い枠取りの上に、花や昆虫が写実的に描かれている。オットー・ぺヒトが指摘したように、枠取りが写本ページの実際の平面としてとらえられ、そこに「美しきもの」がばらまかれている。(p85)〔p85〕
Otto Pacht,Buchmalerei des Mittelalters,Munchen 1984
枠取られた画面内に表された場面は、写本ページの背後にある空間での出来事のようであり、こうして写本ページそのもの我々がいる現実の空間と、場面として三次元的に描かれた仮想の空間との境目に位置することになった。
二次元の写本ページに、三次元の異物が侵入したようなものである。
この矛盾を和らげるため、「ブルゴーニュのマリアの画家」は幅の広い「トロンプ・ルイユの縁取・によって、平面としての写本ページを強調し、バランスを取ろうと試みたのである。(p85)
彼は小型パネル画ではない、ミニアチュールをめざした最後の偉大な写本画家の一人であった
https://www.wga.hu/html_m/m/master/mary/nassau1.htmlより
==以下引用===========
In this tiny but lavish book, the illuminator devised new trompe-l'oeil techniques by manipulating the immediate foreground that establishes the presence of the page as well as the framed distant view that annihilates it. The marginal decorations are no longer filled with flat, decorative ivy scrolls, but instead become floors strewn with realistic objects, such as storage shelves that display relics, skulls, jugs, and other still-life objects, rendered illusionistically with cast shadows as if they actually existed on our side of the page.
非常に面白い♪→続く・・