ここで、2019年6月16・17日に訪れたヴェズレーの写真をまとめる前に、六田知弘さんの『ロマネスク 光の聖堂』(の柱頭写真)を丁寧に見たいと思います。
六田知弘写真(2007年7月淡交社)
目次読書
序文 青柳正規
Ⅰ ヴェズレー、サントマドレーヌ修道院聖堂(p10~
Ⅱ ノアン・ヴィック、サン・マルタン教会
(p38~
Ⅲ ル・トロネ修道院(p56~
Ⅳ モレイヤス・ラス・イヤス、サン・マルタン・ド・フノヤール教会(p72~
Ⅴ サント・ドミンゴ・デ・シロス修道院(p84~104)
「ロマネスク美術と中世社会」池上俊一(p106~112)
「ロマネスクの旅へ」
(テキスト・図版キャプション)ダーリング常田益代(p114~146)
あとがき 六田知弘 (p147~148)
「祈りの中世―ロマネスク美術写真展」
会期:2007年6月12日~8月26日
会場:国立西洋美術館
中世の建築と彫刻と壁画は分けて考えることができない。
ロマネスク彫刻は、彫刻であると同時に建築部材の一部となって構造を支える。
となれば、私たちの方からロマネスクの旅に出向いていかねばならない。
丘(ヴェズレー)に上り、村(ヴィック)にで、森(ル・トロネ)に入り、ピレネー山地の寒村(フノヤール)に着き、そして国境を越えて谷間(シロス)に降りるといった旅になる。(p114ダーリング常田益代)
ヴェズレーのサント・マドレーヌ修道院のナルテクス扉口の「最後の審判」であるが、
「1859年のヴィオレ・ル・デュックの修復工事の一環として制作されたが、この図像の下敷きとなったのは現在南外壁に放置されているロマネスクのティンパヌムである。」とあるので、驚いた。
ネット✳では、不通にロマネスクのタンパンとして紹介されていることが多いので、そんなものと思っていたし、
2019年6月現在で、ナルテクスは修復中なので、そちらしか見なかったような気がするからである。
(wikipedia)「今に残る正面扉上の美しいティンパヌムが彫られたのもこの頃のことである(1125年 - 1130年)」、( ✳)
→(あれがそうだったのか要検討)photo
以下六田さんの本の写真の柱頭写真を、ここではwikimediaのものを見ながらながら、じっくり拝見しよう。
「旧約聖書から新約聖書への移行を比喩的に表している」
(位置番号とsubjectは メインの柱頭として90載せる聖堂のガイドパンフより)
(解説は六田さん著書にあるダーリング常田益代さんのもの)
柱頭の右端に7つの大罪の一つである「淫乱」の擬人像に
一匹の蛇が足から腹部に這い上がり、
もう一匹が左乳房を咬む。「淫乱」は自分の左乳房をひっぱる。
柱頭の左端は「絶望」:悪魔の姿であらわされた「絶望」は
髪を逆立て叫びをあげ、剣を胸に突き刺す。
「金持ちとラザロ」✳38.The Death of Poor Lazarus and also of the Rich-man
(「ルカ」16:19-23)貧しいラザロの魂を御使が天国のアブラハムの懐へ運ぶ。
(この画像はwikimediaになかったので、Gallery of detailed images
https://digital.library.pitt.edu/のhttps://digital.library.pitt.edu/islandora/object/を参照)
森の中で大きな鳥(柱頭右手)を見つけたケンタルロスは獲物を狙う。
その背後に立つアキレス。
「モーセと黄金の子羊」✳11.Moses and the Golde Calf
(「出エジプト記」2:19)シナイ山でイスラエルの民が黄金の子牛を作り、 祈り、踊るのを見たモーセは怒り、立法の二枚の石板を振りかざす。
「ガニュメデスの誘惑」✳47. The abduction of Ganymede the shepherdboy byJupiter
鷲に変身したゼウスが美少年のガニュメデスを嘴にくわえ誘拐する。
笛を吹く辻芸人、女をなぶる悪魔、髪の逆立った悪魔の両耳と両足に邪淫な蛇が絡みつく。
「悪魔の戦い」
✳10. A combat between DemonsMatt.(c.12 v.26)
有翼の獅子のように見えるが長い龍の尾をもつ。またがる悪魔。
「不思議な戦い」✳48. An apocalyptic comvat
冠を被り牛の胴体をした女が、玉を大蛇の尾をもつ有翼怪物に差し出す。
怪物の背に跨った少年は、背後に隠した玉を投げつけようとする。
「ファラオの息子を殺す天使」✳12. The Angel of Death kills Pharaph's son
(http://www.bourgogneromane.com/edifices/vezelay/VEZELAYkapbnfilsP.jpgを参照。)
(「出エジプト記」12:29)柱頭の左半分は修復工事の時 に「天使と双子座」✳42.Signs of Zodiac―Libra and Cemini. the twins
「聖アントニウスの幻想」✳17.The vision of St.antony of Egypt
柱頭の左手で隠修士アントニウスが腰をかがめ両手を合わせて幻視するのは、
塔のてっぺんで仰向けに宙づりで拷問にあう場面。髪をひっぱる悪魔に手足を掴む悪魔。
隠修士の頭上にもう一人の悪魔が飛ぶ。
「吝嗇の懲罰と誹謗」
✳3.Chastisement of Avarice and Calummy by Generosity and Truth
(
https://digital.library.pitt.edu/islandora/object/from_search/-28や
http://www.bourgogneromane.com/edifices/vezelay/VEZELAYkapbnChatiment.jpgを参照。)
このテーマはブルゴーニュ地方の柱頭に時々現れる。
葉飾りの中の鳥(✳北のポータル)
(http://www.bourgogneromane.com/edifices/vezelay/VEZELAYgevnpor1.jpg
を参照)
(http://www.bourgogneromane.com/edifices/vezelay/VEZELAYzpkap5.jpgを参照。)
ナルテクス、南扉口の柱頭。メダイヨンの中で山羊の尾をしたファウヌスは悪魔を見つけ弓を射る。
「イサクによるヤコブの祝福」 ✳29.Isaac gives his benediction to Jacob
(「創世記」27)の左側面。シカ狩りから戻る兄エサウ。
(http://www.bourgogneromane.com/edifices/vezelay/VEZELAYkapbnbassaut.jpgを参照。)
左に鶏の頭と蛇の尾をもつ空想動物バシリスク、その右に魚の尾と、昆虫の足、髯を生やした怪獣。
バシリスクに対峙する怪獣の背後から、少年がバシリスクに器を差し出す。
北側廊の外壁。軒下蛇腹のバラ文装飾が見える
六田さんが取り上げなかった下の円柱であるが、
唐草研究としては、このような写真も貴重ではあるが・・
同じ被写体を撮ったものを眺めていると、やっぱり写真家の写真とは、違いがある事がわかる。写真は切り取りの芸術であるとも・・
「光」についてはそうかと思うばかり‥
下半身が獣は多く見られる、獣頭人身は見たところなかったようだ・・
しかし、柱頭でなく、タンパンの彫刻においては、獣頭人身の像があらわれる。それについてはまた→ヴェズレーのタンパン
(Wikimedia photo)
ヴェズレーの寺院のガイドブックによれば、風・・
最後に、同様なものを探したが見つからなからず残念に思った写真も以下に挙げておきます‥
鹿の目のやさしさ・・
この後、自分の写真でヴェズレーの丘を振り返ります‥。
(その前にシロスの柱頭も 次々回行きたい場所として、少々・・→romanesque_muda2.html)