聖樹聖獣文様
井本英一著
『死と再生―ユーラシアの信仰と習俗 (1982年) 』
大地の臍とクシャ草(吉祥草=犠牲草、両義性を持つ)
「座具を新調するときには、必ず古い布を張らねばならなかった 」(p296)
p298 ペルセポリスのダリウス大王遺跡浮き彫り 右手に権杖、左手に草木の束を象徴した手草(たぐさ)を持つ
大王の後ろのクセルクセス(後継者)は手草のみもつ。
大王の持つ手草は、王権神授を象徴している
p315 釈尊は菩提樹に向かい、左手に持った吉祥草の束を右手に持ち替え、それを菩提樹の根元に投げけけて、吉祥草の座を作った
交換儀礼
通過儀礼に現れる闘争
魔王波旬が釈尊を攻撃させた、恐ろしい鳥獣の容貌をした異形の魔軍。
菩提樹下での釈尊と異形人との闘争は、通過儀礼において、十二あるいは十の獣形を降伏して再生する儀礼が発展したものである。
井本英一さんの前掲書p298[ペルセポリスのダリウス大王遺跡浮き彫り]図であるが、 Wikipediaを検索したところ、この図があった。・・以下は拡大した図
「草」というか?花?・・
エジプト的に、開花した花とつぼみの花束で、それはロータスのように見える・・
この「手草」=クシャ草というような記述は
井本さんの本にもなかったようだが・・
西岡直樹さん訳トリローク・チャンドラ マジュプリア Trilok Chandra Majupuria (原著)の
「ネパール・インドの聖なる植物 」 (アマゾンで見ると「2005/12/31にこの商品を注文しました」と出てきます(~_~;))
植物114種を紹介。その神話・薬効を解説・・とあり、その一つとしてありました。
p175「クシャソウ(クサソウ)━荼毘に付される草」
非常に神聖なものとみなされており、この草なしではどんな供犠祭も完結しない
p178 クシャソウ(クサソウ)
学名:Desmostachya bipinnataデスモスタキヤ・ビピンナータ
イネ科
草丈は高く叢状に茂る多年草 くきはほふくし、つやつやしている
伝統医薬(民間薬)として使われる
ネパールやインドの、熱帯気候の丘陵地域からタライにかけて生育する
非常に神聖なものとみなされており、この草なしではどんな供犠祭も完結しない。
救いを求めて。シヴァ神にクシャソウを捧げるという習慣
結婚の儀が執り行われるヴェーディと呼ばれる土を盛り上げた小さななステージの上にもまかれ、花婿の中指に指ががはめられる。
真実の誓いをたてるときも、クシャソウが手中に握られる。
葬式でじゃ、死者にゴマSesamum indicumが供えられるのだが、ここでもクシャソウと水が登場する。
聖者は腰にクシャソウのひもをまく。
古い時代、人々はすべての宗教儀式にクシャ草の座やマットに座った。
Kusha
英名:Halfa grass, Big cordgrass
ヒンディー名:Kusa,Darbha,Dabh
※キュー王立植物園GrassBase所収
※英名で検索すると、Spartina (cordgrass) の方は絶滅危惧種の逆のList of Invasive Alien Species (IAS) Online Databases
『ネパール・インドの聖なる植物
』のまえがきにあるように、 確かに植物学の方では宗教的な記述はないので、今はここまでとしておきます・・
(古代オリエントの王権神授のシンボルについては別にこちらへ。)
なお、最後に
ハスの項に、
「手に蓮をもつ者」=(※男:パドマ・パーニ、女:パドマ・ハスター)というとありましたことと、
エジプトの図を出しておきます。
井本英一:巳(十二支・聖蛇) 、井本英一:十二支の源流(十二支・蛇・獣帯)、諸橋轍次『十二支物語』(蛇)