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[善悪]の図像

擬人像

 モワサックのサンピエール教会の関連であるが、ここでも「擬人像」という言葉を復習後
→2018k/bijyutu_takahasi.htm(美術のことば)
別テーマページでの「女のイメージ」(14~16世紀)研究を見てから、 プルデンティウスの『プシコマキア(霊魂の戦い)』を ネット検索。以下 「地中海月報」COLLEGIUM MEDITERRANISTARUM 1998|11 より、引用検討したい・・

女性擬人像にみる善悪のイメージ
小池 寿子

象徴とアレゴリーの森

中世は,象徴とアレゴリーの森である。
キリスト教の象徴世界と並んで育まれてきたアレゴリー世界
巧みに絡まりあって織りなされたこの森では,
光と闇,善と悪の大きなふたつの力が絶えざる戦いを展開する。
勝敗はおのずとあきらかではあるものの,
闇と悪あってはじめて至福の輝きをえるのが光明の世界。
「暗黒中世」の光彩は,何より,
両者の陰影に富んだせめぎあいから生まれるのである。

ところでそこに,この善悪ふたつ,いや,ふたりの巨人は,
いかなるいでたちで登場するのであろうか。
女性擬人像に託された善悪のイメージを,
13世紀フランスのアレゴリー文学の白眉である
『薔薇物語』を中心に
たどってみたい。


作者については,
前編はギョーム・ド・ロリス,
後編はジョン・ド・マン。
それぞれ1230年頃と1370年頃に執筆されたとみられ ,作風は大いに異なるものの, アレゴリーの伝統とその成熟を存分に味わうことのできる大作である。
小池寿子(wikipedia)著書(amazon)

 「アトリビュート」

アレゴリーallegory (岩波西洋美術用語辞典)
「たとえを使って話す」という意味のギリシャ語allegoreinに由来。
『 西洋美術のことば案内』(高橋裕子著)では
(用語集

「別のものを語る」という意味のギリシャ語に由来。
抽象的概念を含むメッセージを、擬人層などを用いて比喩的に表現する文学や美術の方法。「寓意(画)」と訳すこともある。


物語は,5月の麗しい愛の季節。
主人公は,夜鳴鴬や雲雀や鸚鵡が大歓びで愛らしい歌を歌うなか,
かぐわしく澄んだ大気に懐かれて,心地よい夢を見る。
「眠りのなかで夜明けを迎えたような気がした」
彼は,いそいそと身繕いをし,陽気に元気に町の外にでかける。
小川のせせらぎに誘われながら,
ずんずんと歩を進める彼の前にあらわれたのは、壁に囲まれた「悦楽」の園という名の庭園。そして,
そこで彼が出会ったのは「ナルシスの泉」に映る美しい「薔薇の蕾」であった。

こうして,「夢物語」という枠組みのなかで,
中世の楽園である「閉ざされし園」で見いだした
「薔薇の蕾」,つまり「愛」の探求がはじまる
のである。

さてまずは,この「悦楽の園」を囲む壁に描かれた10枚の絵を見てみよう。

女性の姿をとった「悪」

それは
「憎悪」「悪意」「下賎」「貪婪」「強欲」「羨望」
「悲哀」「老い」「偽信心」「貧困」という
10人の女の姿で描かれた「悪」
である。
そして女性の姿をとった「悪」は,容貌,動作,身なりに「しるし」として表れている。

たとえば,怒りと不機嫌の塊のような「憎悪」のむっつりとひそめた眉,
つねづね何かを奪い取ろうと企む「貪婪」の鉤形に曲がった手,
「悲哀」のほどけて乱れた髪,
また,ほぼすべての「悪」女に共通した痩せて貧相な容貌。
ついで,「強欲」の玉葱のような緑色,
「悲哀」の黄疸にかかったような顔,
「偽信心」の死んだように蒼白な顔といった身体の色。
そして,うずくまる,やぶにらみをする,かきむしるといった動作。
身体の特徴と身振りと色,衣服の色と装いかたによって,
「悪」が規定される
のである。

一方,「善」はここでは,「悦楽の園」の10人の男女として登場する。
すなわち「歓喜」「悦楽」「愛神」「優しい姿」
「美」「富」「鷹揚」「気高さ」「礼節」「若さ」
である。
彼らは,雪のように白く薔薇色さした肌,
なだらかに弧を描く眉をもった容姿端麗にして繊細優美な人々で,
朗らかにして軽やかである。その詳細は省くとして,
美善一致の思想が貫かれ,
若さと富という価値観が加わっている。

善悪を擬人像の戦いとして描写する伝統

ところで,善悪を擬人像の戦いとして描写する伝統は古く,
キリスト教においては,
古代以来の伝統を色濃く受け継いだ4世紀スペインの文人
プルデンティウスの『プシコマキア(霊魂の戦い)』
にさかのぼる。
これは,人間の魂に潜む善なるものと悪なるものの内的戦いを
女性擬人像の熾烈な戦闘として描きだしたラテン詩である。

中世を通じてこの内的善悪の戦いは,
写本挿し絵や教会堂彫刻として表現されてきたが,
しだいに当初の荒々しい「戦闘」の要素はうすらぎ,
身体的特徴やアトリビュートによって,
そして『薔薇物語』の13世紀以降は,
身振り,衣服,色という新たな「しるし」にとって代わる
ようになる。
それはとくに,説教修道会による身振りの刷新や宗教劇の普及,
また,文化の世俗化によってもたらされた変化であろう。


中世後期の文芸の面白さは,
まさに,この具体的で日常的,ともすれば卑俗な側面にある。
そこには,キリスト教的善の世界から踏みはずし,
悪の世界に転がり落ちる寸前の愉快な人間世界が描かれているのである。


鍵を握る女性が 「閑暇」

ところで『薔薇物語』の鍵を握る女性が
「閑暇」であるのは示唆的
である。
彼女は麗しく「善」でありながら,
人間暇があればろくなことは考えない,と欲望の端緒ともされていたのである。
善悪あわせもつ人間を最後に支配し,導くのはむろん「神」であるが,
この時代,死神もまた,大いなる水先案内人であったことを忘れてはなるまい。

「憎悪」「悪意」「下賎」「貪婪」「強欲」
「羨望」 「悲哀」「老い」「偽信心」「貧困」

 以下途中である。文献(「薔薇物語」など)を再チェック予定(20190801)

「憎悪」

「悪意」

「下賎」

「貪婪」

「強欲」

「羨望」

「悲哀」

「老い」

「偽信心」

「貧困」



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