このあたり美術史家の権利!
「文様の美術的位置を、できるだけ正しく表現するために、その文様を『側面形ロータス』と命名する権利は疑う余地がない」(p218)なんて、確信的でかっこいいですよね
「美術様式論」p214
エジプトのツートメス朝時代以来知られている植物模様の最古の結合法、連孤帯フリーズは、ギリシア美術でも引き続き用いられていた。それは装飾美術が常に立ちかえらねばならない、根本形式のひとつである。
図89 キレネ式陶鉢
鉢の真ん中に把手から把手へと連孤フリーズがある。エジプト風に交互にお荒れた文様は三つ叉の花冠をもった梨型の花と蕾である。
エジプトの太い茎は細い弾力のある唐草線に代わっている。これは躊躇なしに、ギリシア装飾精神のあらわれと認めうるものである。
「美術様式論」p216
ロータス花文様
エジプト人は、そのロータス側面形の描写に、三つ葉萼(多弁の花冠を抱く)を用いた最初の民族であった。
地中海民族がロータスの意味をその文様の描写とどの点まで結びつけていたか、ほぼ6世紀頃のギリシア人にとっては、僧官相関的シムボルではなく、唯の装飾文様であった。
エジプトの諸例(37図)「では上で再び朝顔形に開いている。これに対しキレネ型の花文様は、(梨形のように)細くくびれて、しかるのち、はじめて放射状に三つの弁に分かれる
「美術様式論」p218
ドュムラ―が三叉形花文様の一変種に「ばら」を推定しようとするのは、一応正しい。しかし、文様の美術的位置を、できるだけ正しく表現するために、その文様を「側面形ロータス」と命名する権利は疑う余地がない
※愛知県陶器美術館:ギリシア陶器「古典」の誕生の展示チラシ(PDFの、黒像式頸部アンフォラ《ヘラクレスとケルベロス図》「ブーローニュ441の画家」アッティカ、ギリシア、520-510B.C. 高35.2cm 石橋財団ブリヂストン美術館の下部が同様の文様「美術様式論」p
図90
アッシリアやキプロスで、二つの連孤フリーズを相互に食い違わせて作る活気ある一形式があった。
ギリシア精神による副産物で、
単純蕾形フリーズ において、蕾の尖端をつなぐ連孤、均衡を保つ連孤文様
「美術様式論」p216
図91
植物性モチーフの帯状結合の第二例。
このデザインは既に、92図のクラゾメネ陶棺にある
絡縄文による。
「美術様式論」p
図92
絡縄文が主文様をなし、パルメット扇形は、単なる副次的文様として充填されている。
これに対し91図は絡縄文が極度に縮小されており、花文様が手をなしている。つまり絡縄文帯の外側の地間ではなく、第二(大きな)の連孤内を花紋が充填する。
「美術様式論」p217
図93
植物文様をフリーズ状に並列する第三の媒介者は単純直線であり、いわば、「葉の枝」である。 より古い時代では、ふつう「常春藤の葉」であり、のちの自然主義の時代となっては、月桂樹の葉を用いて枝につける。
「美術様式論」p
図94
第四の手法は、波状唐草によるものであって、ことに黒絵時代にはS字状(間断的)波状唐草による。
この場合。接合点にある額は、しばしば消失して、文様が唐草の茎にじかにはっきりとつく。
花形が縮小する例は火牛出土の象牙室らに見られる。
「美術様式論」p
図95
文様の中間に用いられた花は、はっきりと三つ又の側面形の特徴を表す。
「美術様式論」p219
図96
赤絵式時代の花唐草フリーズの発展について。赤絵式時代といってもまだ自然主義的傾向が明確とならなかった範囲の時代。
この自然主義の傾向は、前450年ー430年間に推定されるアカンサス葉の出現によって、もっとも強く特徴づけられる。
だが一般的には、なお、かたい様式化形態が保続されていて、ことに自由処理がやりにくい笹縁(ポルヂュ―レ)装飾ではずっと保続された。
赤絵式壺(主としてアッチカ地方の製品で判断する)には、伝習的な単独文様のみならず、その結合法にも遊戯的な処理が増えてくる。その際文様のタイプは少数に限られている。連続波状唐草はより広範に用いられた。
その唐草曲線は極めてエレガントとなり、そこにはめ込まれたパルメットは、斜めの図形をとる。
「美術様式論」p219
図97
この躍動的な動きの傾向は、なお、S字形(間断的)唐草にも見られる。
パルメットは第53図のメロスの例のごときフリーズに垂直に硬く表されることはなく、ミケネに一例を見る(52図)ように斜めに描かれる。
「美術様式論」p220
図98
これに並んで、複合形式もあらわれるが、全体的には、伝習的形式を自由に複合したものにすぎない。第98図はロータス・パルメットの片側描写に帰着できる。
ただ連孤フリーズが絡み形萼文様とパルメット変種文様と遊戯的に結び付けられている。
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